力配分のおかしい綱引き
「次は綱引きだね」
二人三脚の次は綱引きだ。
この綱引きはトーナメント式だから勝ち続けた場合相当だるいぞ。
かと言って初戦敗退したらそれはそれで桐乃さんからの制裁が待っているし、まぁ桐乃さんがいれば初戦敗退はないだろう。
「おい清人、お前何か反則行為しろよ」
でました。
こうやってする勇気がないのにそれっぽい会話をし始めるやつ。
「やらないし、綱引きに置いての反則ってなんだ?縄を切るとか?」
「あ、それだったらお前の彼女がいるから大丈夫だな、あの剛力なら気づかぬうちに縄がちぎれて失格に」
「何かな?赤沙汰君?」
剛力という言葉に反応したのか、前でいろいろと話していた桐乃さんがこちらに顔をのぞかせる。
「剛力...みたいな言葉が聞こえてきたんだけど...どういう意味かな?」
「い、いや、剛力というのはですね...き、清人が桐乃さんのことを剛力と言って褒めていたんで」
俺に擦り付けるだけかと思ったら、その後にしっかりと悪口を言っていたわけではないとフォローする赤沙汰。
さすがプロの媚売りは違う。
だが、もし俺だったら、土下座したり足を舐めたりしてもうひとアクション起こす。
「そっかぁ~清人君がそう褒めてくれたんだね。なら、本当に縄がちぎれるぐらいの力出しちゃおっかなぁー」
それやったら俺たち負けるのわかります?
各クラスグラウンドに集まる様アナウンスが流れ、また俺たちは行進用の列を作り、そのまま歩く。
確か最初の対戦クラスは、あの何事も影が薄い三年Fクラスだった。
そして、影が薄いのにも関わらず、六組の中で一番平均学力が低い。
まぁでも気にすんな。
俺も一年生のときそんなクラスに入れられたから。
いやーあれはなかなか地獄だった。
ほら、大体入学式初日に隣の奴と自己紹介して何とか打ち解けようとするやん。
俺もなかなかのコミュ障だったけど、勇気を振り絞って隣の奴に話しかけようとしたんですわ。
そしたらめっちゃ迷惑顔してきたんですわ。
これが可愛い女子とかだったらツンデレなのかな?//とか思ってあきらめないんやけど相手ゴリゴリのヒョロガリ眼鏡男子だったからもうそれ以上話かける気が失せたんだわ。
そこから俺若干人間不信になって、もう昼休みになったらトイレに籠るって言うまさに"それ"的な生活を送っていた。
だけどよくよく考えたら俺以外も全員そんな感じだったから別にトイレに逃げる意味なかったのかも。
ちなみにそれから数日間昼休み中トイレに籠りっぱなしだったから当然トイレ特有の匂いも制服からして、凛華が俺がいじめられていると勘違いして学校に乗り込もうとしたこともあったな。
「ほら清人、何ぼーっとしてんだよ」
「ん?あ、わりー」
過去の回想を止めると、もう目の前にはド陰キャ軍団 (俺たちも人のこと言えない)Fクラスが並んでいた。
あいつらは普通に背の順でならんでいるな。
「早く後ろ行ってやんな。おまえの愛しのごうり...じゃなくて天使な彼女が待っているからよ」
こいつあぶなっかしいな。
もしもう一回言ったら今度こそ誤魔化されないぞ。
ていうかそうか、俺確か一番後ろだったっけ。
桐乃さんとペアだったんだよな。
「はい、清人君は前の方持ってね」
ペアと言っても全く同じ部分を持つのではなく、二人がそれぞれ前の方を持つか後ろの方を持つか決める。
縄を持つと、その震えからみんなんがどれだけ緊張しているかがよくわかる。
「あのね清人君、ここだけの話なんだけどさ、もちろん全力で縄を引っ張ってもらいたいんだけど、あんまし力を入れすぎないでね」
「え、なんで?」
「だっで、あのEクラスの子たち見た感じわたしが少し強めに引っ張っただけですぐ転びそうだから」
「......」
でました、腹黒桐乃さん。
いいねいいね、こうやって周りを見下しながら観察する姿勢、俺は嫌いじゃないぜ//
何なら俺のことも見下しちゃっていいっすよ。
そしてストレスがたまったらそれを口に出すのも全然OKっすよ。
俺の栄養にもなってお互いwin-winですから。
綱引きはまた"パン"という俺がメス落ちするときの効果音で全クラス一斉に始める。
「それでは、よーい」
パンとなった瞬間、縄が思いっきり引っ張られる。
ちょっと!?こういうのって普通掛け声とかしてそれから始めるんじゃないんですか!?
そう思っていたのは俺だけではないらしく、クラスメイトのほとんどが前に引っ張られる。
さすが、姑息な手使ってきますね。
と、そのとき
「うーん、これはちょっと卑怯かなー」
心底背中がゾクっとする"効果音"が後ろで響いた。
「じゃあ、ちょっとわたしも力入れちゃおっかな」
桐乃さんがそう言った瞬間
「うぉ!?」
体が思いっきり後ろに引っ張られ、倒れそうになったところを足で踏ん張る。
ただ、それが成功したのは俺だけで、それ以外は我がクラスメイトもFクラス含めてもほとんどがとっさのことに転んでいた。
そして、赤いテープで巻かれている縄の境目は圧倒的Eクラスよりとなっていた。
桐乃さん、前に妹たちに心が寝取られたとか言ってごめんなさい。
僕は今改めて桐乃さんからは絶対逃げられないということを思い知りました。
ですから、僕のペニスを思いっきり握ることで勘弁してください。
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