ペアがチートな二人三脚

今俺たちの目の前では一二年生が二人三脚を繰り広げている。


というかほとんどのペアが同性でペアを組んでいる。

ったく、やる気は合ってもヤル気はないんだなこいつらは。


それとも、まさか最近流行りの同性愛を意識しているのか?

ならもし俺が一年生まれるのが遅かったら...本格的にBL系同人誌でヌいていたのか...


...需要なしやな。


「清人君、ちょっとあの前で走っている女の子のペア見過ぎじゃない?」


おっと危ない危ない。


今俺は位置的に完全に桐乃さんの監視下にあるんだった。


「い、いやーちょっとやる気のある一二年からいろいろと学ぼうと観察をですね」


「清人君が見てたのって一年Aクラスの子たちだよね」


え?た、確かに、ジャージの背中にデカくAクラスと書かれている。


「あ、もしかしてわたしと同じで"転べ"って思いながら見てる?」


もうやっていること小学生やん。


「本当に早く転んで大けがして病院に運ばれてくれないかなー。ついてに凛華ちゃんの腕も折れて一生剣道できない体になってくれないかなー」


凛華どっから出てきた!?

しかもここからどんな展開になったら凛華の腕が折れるなんてことになる?

そしてそれを実の兄である俺の前で平然と口にする倫理観のなさ。


乾杯です!桐乃さん。

僕の身体は完全に貴女に屈服しました!!//


「あ、もうそろそろわたしたちの番だね」


二年生の最後のグループがゴールし、いよいよ三年生の番となった。


まぁ、この三年生の番になった瞬間のこの盛り上がりのなさからして、"いよいよ"なんて思っているのは我がクラスだけだな。

しかもそれは気分がワクワクするとかではなく、絶対に負けられない戦い、負けたら島流しにされるといった恐怖心からくるいよいよだった。


リレー形式なため、それぞれのペアがバラバラになる。


たが、俺たちはアンカーであるため、つい先ほどの百メートル走と同じ位置に立っている。


てか今更だけど二人三脚で百メートルって長くね?

普通に二人の体力が持つとは思わないんだが。


俺の場合はペアがチートだから問題ないが...ほら、あそこのどこのクラスか分からない夜中勉強しているときに、勉強しようと思ったらついつい食欲と性欲が溢れてしまい、ポテチを食べながら成人向けの同人誌読んで自慰行為しまくったようなデブコンビとかしっかり百メートル走り切れるのか?


改めて二人三脚で百メートルを走り切る大変さを認識したところで、レースが始まった。


お、我がクラスの第一走ペアは出だしは完璧だ。

二人三脚で出だしが良すぎると、転ぶなんて頃があるが、今回は起こらなかった。


そのまま中盤までは調子が良かったのだが、そこからペアの一人の速度が落ち、必然的にもう一人も速度を落とさなければならない。


こういったときに、やっぱり同性同士のペアだと励ましとかが弱いよな。


俺だってもし体力に限界が来たときに、真横で赤沙汰に応援なんてされても一向に体力回復しないし、なんなら消耗に拍車をかけることになる。


あ、今他クラスに抜かされました。


恐る恐る横を見てみる。


「...ん?どうしたの?」


さっきよりはかは若干表情が硬くなっていると言えるが、それでもまだまだ桐乃さんの機嫌は下がっていないようだ。


そのまま二位の状態で、第二走ペアにタスクが渡される。


次は女子ペアだ。


走っている絵図らは需要あるが、タスクを渡されてからすぐにスピードの減速が見られた。


そしてペアの一人が思わず倒れそうになるが、相方が走るのをやめて体を支える。


そのタイムロスで、また一組に抜かされたが、互いが互いを励まし合いながら、なんとか走りを続行する。


ほら、見ましたか桐乃さん。

何も勝利だけじゃないんです。

こうやって体育祭には、新たな友情が生まれて


「......」


あ、これは完全に勝利のことだけしか考えていない人の顔や。

でも、言われてみれば、一二年ならまだしも、三年生のこの時期に新たな友情が生まれたとしても時期的にそんな意味ないか。


そしてそのまま次のペアにタスクが渡される。


こうして我がクラスは出だしはよかったものの、ペアが変わるごとに、どんどん抜かされ


「「......」」


俺たちアンカーにタスクが渡されるときは定番である最下位だった。


一つ前のペアの女子が泣きそうになりながら桐乃さんにタスクを渡すと、桐乃さんは大繩の時と同じよう、俺の肩を掴み俺を引き寄せる。


「お//」


「ごめんね清人君。本当だったら練習のときみたいにわたしがきみを導くようにして走りたかったけど」


あれ?練習のときってそんな走り方だったっけ?


「今回は、わたしの速度に無理やり合わせてもらうよ」


俺の返答を待たずに、桐乃さんは駆け出した。


そうは言っても、俺を引き寄せながら走っているのだから若干、速度は落ちていると俺は思ったのだが


「――――――――」


ちょいと早すぎひん?

もう息つく暇もなく、次々と目の前に広がる映像が変わる。

本当は桐乃さんのフォームや走っているフォームを見てみたいが、そんなことする暇すら与えない。


一応俺も足を動かしているのだが、ただもう地面に足がつかない。


そして桐乃さんの走り方はまさに風を切っている、そんな感じだった。

こんなに早く走っているというのに、桐乃さんからは全く息が上がる音が聞こえず、本当に無言で走っているのではと思わせるほどだ。(というか、無言だった)


桐乃さんのこの超人とも呼べる速さにグラウンドは歓声に包まれた。


そして俺が一度も自分の足で走ることなく桐乃さんはゴールテープを切っていた。


「やったね清人君!一位だぁ~」


桐乃さんが自身の胸に俺の顔を押し当てる。


うん、やっぱり汗全然かいてない。


そういえば走っている途中に、さすがに桐乃さんの胸が動いていた感触は伝わった//


後ろを見てみると、いまようやく二位のペアがゴールしていた。


まぁ二人三脚なんだし、それだけ差が開くのも納得できる。


けど、まさか最下位から前にいるペア全員を抜いてこんなに差をつけてゴールするとは...もう俺監禁されても絶対に逃げらんないじゃん//



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