昼休憩

「さてと、凛華の作った弁当は...」


昼休憩に入り、こっそりと今朝凛華に渡された弁当を開ける。

なぜこっそりなのかというと、今はいないが、いつダークホース桐乃さんが現れるか分からない。


もし俺が自分以外が作った弁当を開けているところを見られたら、今度は容器ごと破壊されるだろう。

そして容器ごと破壊されれば、凛華に対する言い訳も何もできなくなる。


「...量多いな」


弁当箱の中には、サンドイッチ、スパゲッティー、卵、なんかよく分からない物体を包んでいる肉、その多野菜等々が設置されていた。

...これちゃんと午後のことも考えて作ったのか?


多分桐乃さんの弁当もこれぐらいの量だろう。


...さすがにこれは誰かに協力してもらわなくちゃいけないな...


だというのに、こういうときに限って赤沙汰が近くにいない。

きっと今頃はトイレで体力をつけているのだろう。


ってかEクラス俺以外全然人いなくね?

え?まさかこれ皆どこかで集まって食べてる?

まさか俺だけ仲間外れ?そういうプレイですか?


いや、でももしそうだとしたら桐乃さんが俺がいないことに気づいて黙っているわけないしな。

もしかして俺と桐乃さんだけ仲間外れとか?

だとしたらだいぶ命知らずな連中だ。


「...兄さん」


「え?」


と、いろいろと俺と桐乃さんだけが取り残されたという事実に憤りを感じていたたり快感を得たりしていると、後ろから声がした。


「あ、歩歌?」


「なに、私がここにいちゃ何か不服なわけ」


不服というかアンタ普通に今日学校でしょ?

今だって中学校の制服着てるし。


「学校ならサボったわよ」


でしょうね。

というか、制服姿なのによく中に入れたな。

警備員とか不思議に思わなかったのか?


「あーちなみに、もしこのことを姉さんいでも話したりでもしたら、今度兄さんをこの高校の放送室に連れ込んでドロドロに犯してその音声全校生徒に聞かせるからね」


聞きました?

これが中学三年生の女子の発言ですよ。

最近の女子中学生もヤンデレSSを読むようになったのか。


いや、今言ったシチュエーションはヤンデレSSというよりかはエロASMRにありそうな展開だな。


生徒会長命令で放送室に連れ込まれてそこで公開逆レイプされるという。


もし本当にする気なら、ついでに桐乃さんも凛華も読んで三人で僕をメスに調教してください。


「ほら、このカメラの中に今日の兄さんの姿がバッチリと記録されているわ」


盗撮ですやん。


男に盗撮されるのは殺意が湧いてくるか、実の妹に盗撮されるのは全然大歓迎。

俺がトイレで一人でしているところを写真にとられてそれをネタにおどして体の関係を迫ってくるとか理想的な展開を期待している。


「ちなみにその写真は何に使うおつもりで?」


つい訊いてしまう。


「は?そんなの何に使おうがあたしの勝手でしょ?なに、既成事実作られたいの?」


まぁそれは全然構わないが...//


「兄さんが持っているそのやけに寮の多い弁当って今朝姉さんが作ったやつ?それとも...あの雌ゴリセフレ女が作ったやつ?」


あ、これ多分桐乃さんのって答えた瞬間弁当箱ごと粉々に破壊されて俺の男としての尊厳も粉々に...//


「凛華のだよ。凛華が渡してくれた弁当」


「フーン、ま、あの脳筋姉さんが思いつきそうなメニューね」


脳筋がスパゲッティーとか入れ...るか。


「で、あのセフレ雌ゴリ女からはもらってないの?」


「まだもらってないけど...おそらくこれからもらう予定かな」


「ふーん...」


あ、まずい。

これからもらうってことは結局桐乃さんからの弁当も食べるってことやん。

...これは既成事実ENDか..?


「要するに、あとからあの雌ゴリセフレからも弁当をもらうから、全部食べ切れるか分からないってことね」


「ごめんなさい、実の妹と既成事実だけは世間が許してくれなさそうなので代わりの僕のアナ...へ?」


「だから、二つの弁当を食べきれる自信がないからあたしに少し食べてほしいってことでしょ?」


いや、そこまでは言っていないが...


「なら、ちょっとその姉さんの弁当を渡しなさい。あたしが食べてあげるから」


「あっ」


俺の返事を待たずに歩歌が凛華の弁当を奪う。

するとそのままなぜか事前に用意していたお箸で食べていく。


特に早食いというわけではないのだが、箸を決して休めることなく動かす。


そして気づけばもう食べ終わっていた。

食べ方も俺とは違い綺麗で、残飯が一切こびりついていない。


「ほら、これは兄さんが持っていた方がいいでしょ」


歩歌が容器を俺に渡す。


「あ、ありがとう」


「別に、あたしもただお腹が空いていただけだだし」


おいおい、なんかどんどん歩歌がイケメンになって行ってないか?

このまま行くと凛華の立場が奪われるかもしれないな。


「あ、そういえば最後に一つ訊きたいことがあるんだけど」


背を向けて歩き出したかと思えば、もう一度こちらを振り返る。


「さっき、百メートル走を走る前、グラウンドにいなかったみたいだけど、どこで何してたの?」


口調こそさっきと変わっていないが、目が完全にツンデレからヤンデレに変わる瞬間のような微妙に黒く染まった色をしている。

たしか百メートル走の前って桐乃さんとアップしてたよな...


「あ、ええーっと、ちょっと周りに人がいたから教室でアップを」


「......」


いや、教室でアップって無理あるな。

教室でできるアップと言えばペニスエクササイズぐらいだし。


「...まぁそういうことならいいわ。あたしはまた観客席で兄さんの写真撮っておくから。それじゃあね」


最後まで目の色がもとに戻ることなく歩歌は戻っていった。


一体何だったんだ...?


もしかして、さっきの桐乃さんとアップしているところを写真で取られたりとかはないよな...

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