意外と誰も引っかからない大繩

「3!4!5!」


二回戦目が始まり、各クラスが汗水たらしながら大繩に励む。

といっても桐乃さんの汗だくな姿は見れないが。


ほとんどのクラスメイトは数を声に出して数えているが、俺は一切口を開かない。

俺と桐乃さんとじゃかなり距離があるため、別に声を出していなくてもバレないしな。


「6!7!8!」


いや―それにしても早く誰か引っかかってくれないかな。


大繩の常識として、大体一回目に飛んだ数をそれ以降が超えることはない。

となると、二回戦目は二桁ぐらいで引っかかるというのが理にかなっていると思うが。


「9!10!11!12!」


あれ?てっきり12でもう終わると思っていたが。


「15!16!17!」


ん?もう17過ぎましたけど。

えーっと、確か一回目って19だったよな


「18!19!20!」


「...ダル」


おっと、ついつい口に出してしまった。


それにしてもまさか20回まで行くとは思わなかった。

よし、もういいから。

元同志たちの性欲を解放したあとの力には恐れ入ったから、もう終わらせていいよ。


「21!22!23!」


おいおい、こいつら20回超えたっていうのに全然声に衰えを出さないやん。

もうええって。

桐乃さんもここまできて引っかかっても怒らない...可能性が高いから。

だからもう終わろう。


「24!25!26!」


だからもう無理するなよ。

赤沙汰、本当はもう吐きそうなぐらい辛いんだよな。

お前の汚い声がさっきからめっちゃ響いているけど、もういいて。

多分俺以外にもお前が一刻でも早く引っかかってほしいと願っている奴いっぱいいるぞ。


赤沙汰以外の元同志たちも辛かったら自分から終わらせてもいいんだぞ。

多分ここで引っかかったら女子に引かれるとか思っているかもしれないが、俺以外の男子なんて元から好感度Aカップ状態なんだから今更マイナスになることなんかないって。

言うなれば今のお前たちは無敵な人だって。


「27!28!29!」


ちょ、ちょっとそろそろ俺の体力がなくなってきた。

俺ってこんな体力少なかったっけ?


見た目的には別に太っているとか言うわけじゃないし、むしろチビなんだからここにいる誰よりもジャンプが得意なんだという偏見が自分の中にあったのだが。


「30!31!32!」


や、やばい...もう息も上がってきて体もなんだか熱い。

そろそろ限界かもしれん。

頼む!頼む赤沙汰!俺よりも先に引っかかって


...って、よくよく考えたらなんで俺自分が引っかかることにこんなに恐怖しているんだ?

むしろ俺が引っかかれば被害が最小限で済むし、なにより桐乃さんから何かご褒美//が与えられるかもしれんやん。


「33!34...」


「あ」


そんなことを考え、興奮していたら本当に俺が真っ先に引っかかてしまった。


「誰かなー!!!」


縄が来なくなったのを確認すると、すぐに桐乃さんが大声で戦犯 (俺)に語り掛ける。

てかもう怒鳴ってますやん。


「早く出てきてほしいなぁ!!!!」


列から外れ、一人一人の顔を見ながら怒鳴る桐乃さん。


まぁ無駄な時間を過ごす必要はない。

ここは潔く俺が自己申告して


と、俺が挙手をしようとする前に、赤沙汰が一歩前に出る。


「桐乃さん」


「ん?どうしたのかな赤沙汰君。まさか、きみが」


「いえ、僕は誰が最初に引っかかったのかを目撃しました」


「へぇ、それは誰かな」


「彼です!」


と、しっかりと腕を伸ばして俺を指さす赤沙汰。


...なんだろう、別に自己申告するつもりだったのだから俺が引っかかったと桐乃さんにバレたことについては何とも思わない。

ただ、それを自己申告ではなく他人 (よりにもよって赤沙汰)にチクられるというのは、なんだかムカつく。


「...それは本当かな清人君?」


「う、うん...ごめん。俺が引っかかっちゃった」


桐乃さんがなんとも言えない表情で俺を見つめる。


さて、ここからどうなるか。

俺としてはみんなの前で躾けられても全然OKですけどね//


「まぁ、清人君が引っかかっちゃうのは仕方ないかもね。夏休み中ずっと勉強してたし」


嘘つけ、とクラスメイト全員の心の声が伝わる。


「じゃあこうしようか。三回戦目は清人君はわたしの隣で飛んでね。わたしがしっかりときみをサポートしてあげるから」


そう言うと桐乃さんは俺を強く抱き寄せ、真ん中の方に連れて行く。


...お、こんなに抱き寄せられたら桐乃さんの汗を直に感じられる...って、やっぱり全く湿ってないし特有の匂いもしない。


クラスメイトが真ん中に連れてこられた俺を痛々しい表情で見つめる中、三回戦目が始まった。


今度こそ10回ほどで終わると思っていたが、そんなに甘くはなかった。

二回戦目の34回を超え、57回となった。


もちろん30回を越したとき、先ほどと同様体力の限界が来たが、それを察した桐乃さんが俺の方を持ち、彼女の跳躍力を分けてくれた。

もう俺が想像していたのとは違った方法でメス堕ちさせられちまったよ//


ちなみに、我がクラスは三年生の中ではぶっちぎりの一位だったが、一二年を含めると別に上位というわけではなかった。

特に一位の一年Aクラスには遠く及ばない成績であったため、桐乃さんの機嫌が悪くなったのは言うまでもない。


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