凛華無双の騎馬戦
「おい、凛華ちゃんまた帽子取ったぞ」
全員参加の百メートル走が終わり、今は一年生の騎馬戦を観戦している。
騎馬戦は男女に分かれており、一度に全クラスが戦うため、少し危ない。
現にさきほどまでの男子の部では帽子を取られた反動で頭から落ちて担架に運ばれていった生徒もいる。
女子の部ではそれほどまでのことは起きていないが、容赦のなさがうかがえる。
ちなみに凛華はもう四つもの帽子を奪っている。
さすがクール系女子と言ったところか、奪う動作もただがむしゃらにごり押しするのではなく、まさに剣道で一本を取るみたいに一瞬のスキを見て相手の帽子をとる。
てかよくよく考えたら凛華の身長でなんで上の騎手ポジションなんだよ。
あまり女子にこういうこと言うのはよろしくないのかもしれないが、結構体重とかの関係で支えている人は辛いんじゃない?
あ、俺変わりましょうか?
俺の頭を支えにしてもらって構いませんよ?
「で、お前の彼女である桐乃さんはなんであんな近くで観戦してるんだ?」
そう、赤沙汰の言う通り、桐乃さんは相変わらずすぐ近くで凛華のことを凝視しており、凛華の騎馬戦が移動するとしっかりそれに合わせて桐乃さんも移動する。
...そこまでして凛華が何か失態を犯すの見たいですかね?
「お、また帽子取った!」
もうこれAクラスの勝ち確じゃないですか。
もし一年Aクラスの女子と我がクラスの男子が騎馬戦をやったら、果たして俺たちはどれぐらい耐えることができるのだろうか?
こっちにはマゾ心が身に染みている奴もいるから、わざと負けたりもしそうだし。
もし我がクラスの女子だったらこれは結構勝負論がある。
桐乃さんと凛華、実質この二人の一騎打ちになる。
と、ここで
「あ、お、おい!危ないぞ!」
また凛華が帽子を取ったのだが、その反動で取られた使途が落ちそうになる。
もちろん、凛華がそんなことを見逃すわけなく、帽子を掴んでいる反対の腕を、落ちそうになった女子生徒の背中に回す。
この凛華のイケメンすぎる行動に、より一層グラウンドは歓声に包まれる。
「...あれ、本当にお前の実の妹なのか」
いや、俺もそれが最近よくわからなくなってきた。
顔も身長も性格も喋り方も地頭も何一つ俺と似ていない。
もしかして本当は義理の関係なのか?
"妹が兄と本当は義兄妹と知った瞬間に結婚を迫ってくる"みたいな展開になるのか?
だとしたら...ちょっと俺もマジで桐乃さんと凛華をえら
いや、よく考えたらそんな設定あるわけがないな。
お互いが高校生になってもまだ義理の関係を知らずに過ごしているって言うのもちょっと無理あるし。
というかちょっとあの絵図百合っぽくない?
多分今凛華は"大丈夫か?"とか声かけているのだろうが、ここから見ると王子様系女子がファンクラブの子を口説いているようにしか見えない。
もしかしてこのままあの子をお持ち帰りするつもりか?
...そういうのも少し見てみたい気もちもある。
まだこの目で現実の百合を見たことないからな。
桐乃さんと菊島さんは...うん、あれはノーカンだな。
と、そこからも凛華の無双は止まらず、結局凛華一人でほぼすべての騎馬戦を壊滅させた。
司会もまさかこんなに早く終わるとは思っていなかったのか、ちょっと焦ってるし。
「は、はい。えーっと、予定よりも早く一年生の騎馬戦が終了したため、少し速いですが、あと十分後には全学年参加の玉入れを開始します。生徒の皆さんは準備しておいてください」
あ、そうだった。
次は俺も出なくちゃいけなかったんだっけ。
というか高校生の体育祭に玉入れなんていらないだろう。
しかも全学年参加だから無駄にスケールでかいし。
「は~い、みんな聞いて~」
と、いつの間にか陣地に戻ってきた桐乃さんが会議を始める。
「玉入れは練習してこなかった作戦を伝え忘れていたね」
え?玉入れに作戦とかあるの?
「玉入れは皆が一斉にボールを入れようとすると、ボール同士がぶつかったりして不都合だから、今からペアを作って、その二人の仲で球技が得意な方がずっと投げて、もう一人は転がっている玉を投げる櫃に渡すっていう役割に分けた方がいいと思うの」
それは得策ですな。
俺なんて球技全くダメだから絶対後者の方だし。
「それじゃあわたしは今から濡髪清人君とペアになるけど、皆もだれか仲の良い子とペアになってね」
まぁもう最初から俺と桐乃さんがぺになると子が決まっていたということには何も触れるつもりはない。
皆も別にいつものこと過ぎて不満を呈すなんてしてないしな。
「お、もうグループできたの?みんな仲良くて嬉しいな」
ここまで全く心がこもっていない"嬉しいな"を聞いたことがあるだろうか。
「よし、じゃあいったん今作ったグループの人とは離れて出席番号順に列を乱さずに並んでね」
...結局どの種目の入場時にも行進はするのね。
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