久しぶりの凛華との登校

朝が来てしまった。


今日は誰一人待ちに待っていない体育祭当日。

確か桐乃さんは代表者ということで早く学校に行かなくちゃいけないから今日は久しぶりのボッチ登校。


洗面所に行き、顔と髪を洗う。

髪を洗うのは、寝癖がついていると風の影響で足が遅くなってしまうかもしれないという情報を聞いたことがあるためだ。


「おはようさーん...え?」


リビングにはいつも通り歩歌と風珠葉がいるのだが、どういうわけか今日は凛華もいる。


てっきり凛華は一年Aクラスの代表者でもうとっくに登校していると思ったのに。


「...なんだ清人。今日は体育祭本番だというのにずいぶんやる気のなさそうな顔をしているな」


「いや、俺たち三年生にとって体育祭なんてある種妨害だからな」


「ほう?ではお前は受験勉強を人一倍頑張っていると?その割には、私はお前が集中して勉強に取り掛かっているところを見たことがないが」


まぁ、確かに受験勉強 (小論文だけ)は自室や塾で勉強しているが、集中しているか?と言われればそうではないのかもしれない。


俺は昔から勉強すると途端に性欲が湧いてくる体質をしているからな...

俺の中では、性欲>集中だ。


「えーっと、それで、凛華は今日早く行かなくてもいいのか?」


「体育祭当日に朝練はない」


「そうじゃなくて、代表者じゃないのか...?」


「代表者?それなら別の者が務めているぞ」


ほえー、一年Aクラスには凛華を出し抜いて、リーダー体質なやつがいるのか。


「それに、私もこの体育祭は少しの息抜きとして楽しむつもりだ。そんな全身全霊をかけて臨むほどじゃない」


...少し意外だ。

あの凛華があまり学校の...しかも体育の行事にここまで無関心だったとは。


「そうは言っても...手を抜くつもりは一切ないがな」


あ、やっぱり手加減はしてくれないんですね。


うん、それでこそ凛華。


勉学も、運動も、夜の営みも一切手加減しないのが真のクール系女子です。


「とは言え、お前たち三年生にとってはこれが人生最後の体育祭になるのかもしれないのだろう?なら、気を引き締めて挑まなければな。ほら、さっさと食べろ」


凛華にせかされ、目の前にある料理に向き直る。


すると、ちょうど真正面に座っている歩歌の動作が目に映った。


「ん?」


歩歌は何やらカメラらしきものをこそこそといじっている。

かなり大きな本格的なカメラだ。


まさかあれか?

どこぞのK島さんみたいに俺と桐乃さんの様子を撮影するつもりか?


だとしたらやめとけ。

桐乃さんは盗撮NGだから。

どこぞのK島さんみたいに、ただただ暴力で調教されてしまうぞ。

もちろん歩歌が俺体質なら何も問題ないとは思うが。


てか歩歌と風珠葉は今日学校あるよね?

平日だし。


ならあのカメラは授業か何かで使うのだろう。


「あ、あたし、もうそろそろ行くから」


歩歌俺の視線に気づいたのか、慌てて席を立ち玄関に向かう。


「待て歩歌。まだ食べ終わってないだろう」


「うるさい!今日はちょっと急いでいるから...それじゃあね」


...あれは絶対何かあるね。


まぁ俺と桐乃さんのことを盗撮するわけじゃないにしても、あのカメラは何かしら想像のつかないことに使うつもりなのだろう。


...もしかして、俺のペニスエクササイズを盗撮するつもりなのか!?

あれか、見られながらするある種の監視プレイか。


...と、自惚れるのはここまでにして、さっきから凛華が目で早く食べろと訴えている気がするから早く食事を口に詰め込む。


「あー、ごちそうさん」


お腹がぱんぱんに膨れるわけもなく、少なすぎるというわけでもない。

本当に体育祭当日の朝にちょうどいいぐらいの寮だった。


まさか、ここまで計算していたのか


「行ってきます」


俺が食べ終わったのと同時に、風珠葉がリビングから出て行った。


「ほら、今日のお弁当だ」


凛華からお弁当を手渡しされる。


そういえば何気に二学期が始まってから最初のお弁当な気がする。


凛華の作ったお弁当...

あんまりいい思い出がないな。


桐乃さんと凛華のいがみ合いもこのお弁当の一件から発生した気がする。

それが火種となって今では二人以外にも飛び火している。


...て、これ結構まずくね?

だって絶対桐乃さんもいつも通りお弁当作ってきてるやん。

しかも何なら体育祭だからという理由でいつもより量が多そうやん。

で、俺は必然的に二人分のお弁当を食べることになるやん。

で、午後には俺が出場する選抜リレーが控えてるやん。

お腹が苦しい状態で走ることにおなるやん。

走った振動で口にしたものが一気に逆流してきそうやん。

もう実質嘔吐プレイやん。


あれだな...選抜リレーが始まる前にトイレに駆け込んでおこ。


「さっさと準備して来い。私は玄関で待っている」


どうやら俺と凛華が一緒に登校することは確定事項らしい。


俺はいつもよりずいぶん軽いバッグを持って一家に降りる。


「よし、それじゃあ行くぞ」


今日はいつもより気温が寒い。


「寒くなったらいつでも言え。私の体温を分けてやる」


ぜひそうさせてもらいたいのはやまやまなんですけど、どこで桐乃さんに伝わるか分かりませんし遠慮しておきます。

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