放課後練習③
「はい、じゃあ今日は二人三脚と綱引きの練習をしていくよ」
二人三脚はまだしも、綱引きに練習とかあるの?
いや、あるか。
「二人三脚に出場する人は、クラスの中に同じぐらいのタイムの人がいるかいないかで決めました」
うーん、俺の場合結構微妙だな。
真ん中よりちょっと速いぐらいだから...いるともいないともどちらとも言えないな。
「じゃあ、今から出場するペアを発表していくね」
桐乃さんがそれぞれクラスメイト二名づつの名前を言っていく。
この名前順からすると、足の遅いペア
から発表しているな。
「で、最後が濡髪清人君と、わたし、絹井桐乃ね」
そうか、俺と桐乃さんか...
うん、なんで?
まず俺がメンバーに選ばれたということ自体が驚きだが、なんで俺と桐乃さん?
タイム全然違うやん。
これに関しては俺以外にも違和感を抱いているクラスメイトは多いようだが、
「どうしたの?なにか文句でもあるのかな?」
今の桐乃さんの恐怖政治の前では意見することすらできない。
「じゃあまず今言ったメンバーは各自二人で練習しといて。本当だったらわたしが昨日みたいに教えてあげたいけど、わたし自身二人三脚は不慣れだから練習しなくちゃいけないんだ。それと、残りの人は昨日の百メートル走の復習でもしといて。じゃあ清人君、行こうか」
俺と桐乃さんはクラスの陣地からあまり離れていないところで練習することにした。
「清人君は左足出してね」
俺の左足と桐乃さんの右足をひもで結ぶ。
...肌と肌がぶつかって微妙に興奮材料になるなこれ//
「じゃあまずは清人君が主導で動いてみて。わたしがそれに合わせてみるから」
「う、うん」
あ、二人三脚の主導権を握るのはいいですけど、夜の主導権を握るのは桐乃さんでお願いします//
俺は少しでも桐乃さんに負担をかけないように、いつもよりだいぶ早いペースで走る。
ってあれ?
なんかやけにぐいぐい前に進めるな。
こういうのって普通足同士を結んでいるのだから走りにくくなるのが当たり前なんじゃないのかな。
気になり、足の方を見ると、なんと桐乃さんが完璧に俺の足の動きをコピーしていた。
一心同体かのように同じペースで走っている。
やはり、俺と桐乃さんの体は"直接つながっている"のかもしれない。
「わたしたち、息ぴったりだね!」
桐乃さんは純粋に喜んでいるが、完全に彼女が必死に自分の力を抑えて俺と同じペースで走ってくれたのは分かっている。
「じゃあ当日も、特に何もなければ清人君主導でいいかな?」
「い、いいよ」
まぁもし桐乃さん主導だったら、完全に俺が引きずられ状態になるのが目に見えている。
ここは俺主導でいくのが妥当か。
俺と桐乃さんは二人三脚の練習を早々に切り上げ、クラスの陣地に戻ってきた。
そこからしばらくすると続々と二人三脚のメンバーも陣地に戻ってきた。
「はい、全員戻ってきたね。それじゃ今から綱引きの練習しようか」
さっきから気になっていたが、綱引きの練習ってどうやるの?
「じゃあ手始めに、まずは男女で別れて戦ってみようか?」
...果たしてそれは意味あるのか?
いや、俺や元同志たちは日々男が女に負ける何もかもが逆転した世界に転移することを夢見ているが、現実的に考えて、男子と女子に分かれて綱引きをするとなると、さすがにすぐ終わる気が...
いや待て。
あちらには力関係とかをすべて無視できるジョーカー、桐乃さんがいる。
もしかしたら桐乃さんvsクラスメイトでも余裕で負ける気がする。
「おい清人、お前の彼女何考えているんだ?男子vs女子でやっても差がありすぎてなんも意味ないだろ」
この赤沙汰みたいに負けフラグを立てるやつがいるもんだから、結果は誰にも分らない。
で、その結果はというと
「お、俺たちってそんなに女々しくなった?」
「部活に入ってないだけどこんなにもやしになるのか?」
「もしかして俺貞操逆転世界に転移した」
「喜べお前ら、俺たちはとうとう念願の男女逆転世界にクラス転移したぞ!」
そう、聞いての通り、俺たち男子が普通に負けた。
いや、途中までは圧倒的に俺たちが優勢だったんだよ?
でも、あと一歩で勝てるということで
「なるほど、皆の力の差は大体把握できていたかな」
と、桐乃さんの観察タイム終了の合図が出て、そこから秒で負けた。
てかこれ身長が低い順に前から並んでいたから、もう死に物狂いの菊島さんの表情が見れて面白かった。
綱引きが終わった後、俺が笑いをこらえているのに気づいたのか、菊島さんが俺の目玉をくり抜くぐらい鋭い目で睨みつけていたが、桐乃さんの前では行動に移せない。
「はい、皆注目。今皆は身長が低い順で並んでいたと思うんだけど、やっぱり綱引きも力が強い、弱い人が二人でそれぞれ隣に並んだ方がいいと思うんだよね。さっきのみんなの表情や手の震えから大体誰がどのぐらいの力があるのか把握したから均等に並んでもらうね」
すごいな。
あんな短いうちの個々の力がだいたい分かったというのか。
「-------」
桐乃さんがまた次々とクラスメイトの名前を呼んでいき、その順に並んでいく。
「で、一番後ろが濡髪清人君と、わたし、絹井桐乃」
うん、だからなんで?
あとなんで俺たちだけフルネーム?
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