夏休み明け初日
「いい加減起きないと...その爪、剥がすよ」
「っ!?」
なんか今やけに桐乃さんと同じような声で物騒なことを言われたと思い、起き上がると、もう朝だった。
九月一日。
二学期初日も俺はヤンデレボイスで目を覚ました。
洗面所で顔を洗い、制服に着替える。
「なんか俺...痩せた?」
制服を着てみると、前よりも少しぶかぶかになった感覚がする。
まぁあの激動の夏休みを過ごしたら誰だって痩せるか。
一回に降り、リビングに入ると、それぞれが制服姿で朝食をとっていた。
皆の制服姿もなんだか新鮮だな。
「ほら清人、立ってないでさっさと座って食べろ」
凛華にそう急かされ、朝食を食べながら、皆の"成長した部分"を観察してみる。
制服は普通はきつきつなため、成長した部分が直に目立つようになっている。
お!風珠葉と歩歌の胸が少し夏休み前と比べて少し膨らんでいる気がする。
そして歩歌は身長も少し伸びたな。
これでまた一段とモデル体型と思われるようになる。
さて、凛華は...
「......」
「なんだ?」
なんか胸が縮んでね...?
元からまな板と言われるほど平らだったが、夏休みが終わってから余計に平べったくなったな。
あ、あれね?
前にも言ったと思うけど、俺別に胸を特別重視しているわけじゃないからね!?
どちらかというと、俺はスタイルを重視しているからね!?
そして肝心な凛華のスタイルはというと...
......
うん、特に変わっていないな。
まぁ元から身長が高くてモデル体型だったというのもあるから、もしかして成長はしているけど、それがよく表れていないっていうだけかもしれへんからな。
あれ?でも髪の毛伸びてない?
前までは短髪でいかにも中性系女子という感じだったのに、もう背骨ら辺まで髪が伸びている。
ホントだったら真っ先に気づかなければいけないところだったと思うが、あれだ、夏休み中は確か後ろでとめていたから気づかなかったんだ。
「...この長い髪の毛が気になるのか?」
「え?」
「お前がさっきから妙に私に見惚れていると思ってな...」
...凛華の短髪姿はかっこいい味方というイメージだが、長髪だと闇落ちした元味方感がするな。
クールだけどしっかりとヒロイン風の雰囲気を醸し出している強敵。
「ちょっと見惚れてるって...アンタ自意識過剰過ぎない?」
「なんだ、うらやましいのか?ならお前もその後ろに結んであるのをほどいたらどうだ?」
「そういう問題じゃなくて...ああ、もういい!」
歩歌は自分から切り出したのに、そうそうに話を切り上げ、玄関の方に向かった。
「それで、どうだ清人?私の長髪は?」
ツンデレムーブをかまさず、まっすぐに俺の目を見ながら感想を訊いてくる。
「...ちょ、長髪姿もよく似合っていて...かっこいいよ」
「かっこいい、か...お前が言うなら間違いないだろう」
...凛華は可愛くなるように髪を伸ばしたのか、それともかっこよくなるように髪を伸ばしたのか...どっちなんだ?
「...私は朝練があるためもう行く」
二学期初日から朝練があるのか...
っていうか朝練があるならむしろ俺が起きる前にもう行っているはずじゃ...
まさか、俺に長髪の感想を訊きだすためだけに!?
「では、朝練委向かう前に一汗かくとしよう」
そう言うと凛華は荷物を持って玄関に向かった。
「「......」」
リビングに残されたのは俺と風珠葉の二人。
風珠葉は何か言いたげな顔をしているが、それを言うべきがどうか迷っているかのような仕草を見せる。
そして、しばらくすると
「わたしもそろそろ行くね」
風珠葉も凛華に続き玄関に向かった。
...少し自惚れた話になるかもしれないが、風珠葉は本当は俺と一緒に登校しようと言いたかったのかもしれない。
だが、夏休み明け初日に、俺が彼女である桐乃さんと一緒に登校しないわけがない。
そこに、もし風珠葉も混ざったら、また何か俺に害が及ぶとして風珠葉は言い出せなかったのではないか。
だとしたら、凄く賢明な判断だし、多分そう言われていたら俺は断れずに、また修羅場に発展していたかもしれない。
「さて、俺も行きますか」
朝食を食べ終えた俺は、重い腰を上げ、バッグを持って玄関をでる。
「...暑」
まだ完全に秋に入っていないということもあり、制服を着て外出すると体中から汗が出てくる。
でも、桐乃さんは汗をかかないんだろうなー。
不公平だ!俺にも異性の汗をかがせてくれ!
「あ、清人君!」
いつも通り集合場所には桐乃さんがすでに待っていた。
「久しぶり。夏祭り以来...ねぇ、その絆創膏どうしたの?誰かに怪我でもさせられたの?見せて」
はい、やっぱり夏休み初日とか関係なく桐乃さんなら訊いてくると思いました。
っていうか、何これデジャブ?
確か前にもこれと似たようなことがあった気が...
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