変わってしまった桐乃さん
「...いたたたた」
まだ首に痛みが走っている。
今朝、俺の首に噛み跡がついているのを桐乃さんに見られ、颯那にやられたと知られると、怒りで震えながら俺の首に彼女の指が食い込んだ。
その跡もくっきりと残ってしまい、始業式の途中で我慢できなくなり保健室に駆け込み、今は包帯を巻き終えたところだ。
「お、清人。お前、始業式抜け出してどこ行ってたんだよ」
教室に戻ると、最初に赤沙汰に声をかけられた。
てか、俺に声をかけるのは赤沙汰ぐらいしかいないからそれも当然か。
「いや、ちょーっと首に痛みが走ってな...」
「首に痛み?おい、それってまさか桐乃さんの」
「清人君!」
と、赤沙汰の言葉を遮り、桐乃さんが割り込んできた。
「首大丈夫だった!?」
「う、うん、ただ包帯を巻くだけで済んだからさ」
「そっかー。...ごめんね清人君、ついカッとなって指に力入れて」
...正直颯那の噛み跡よりも桐乃さんの指の食い込み跡の方がはっきりと残っていた。
「あ、そういえばさー」
と、ここで桐乃さんが隣に立っている菊島さんに目を向ける。
「まだ清人君、佳林ちゃんにあのこと謝罪してもらってないよね?」
あの事...?
あ、あれか。
桐乃さんの家でくつろいでいるところを盗撮してきたやつ。
そしてその写真を颯那に売ったことか。
「ほら、佳林ちゃん、ごめんなさい、は…?」
「......」
菊島さんは桐乃さんに俺に謝るよう命令されているのに、ただ顔を引きつらせるだけで何も言おうとしない。
「聞こえなかったのかなぁー、ほら、ごめんなさいは?」
「くっ!?」
と、ここで一気に菊島さんの顔が苦痛に歪む。
「おい、菊島、どうした」
「赤沙汰君は黙っててもらえるかな。今はわたしたち三人の問題なんだから首を突っ込まないでもらえると嬉しいな」
ただただ菊島さんを心配しただけなのにこの言われよう。
赤沙汰、ドンマイ。
でも、なぜ菊島さんがこんなに痛そうにしているのか...
嫌な予感がし、足元の方を見てみる。
oh...完全に桐乃さんに足踏まれているやん。
しかも結構体重をかけられてるっぽいし。
桐乃さん...菊島さんの足を踏むのはやめていただけませんか?
代わりに、僕の頭を踏んでいいですから。
「ご、ごめんな」
「なにー?それじゃ清人君に聞こえないよー?」
「っ!?」
あ、多分まだ一段と踏んでいる足に体重をかけたな。
おそらく菊島さんがしっかりと俺に謝れないのは、彼女自身のプライドも関わっているかもしれないが、痛みでうまく声を上げられないっていうのが主な原因だと思う。
あと桐乃さん、周りが若干引いてますよ...?
「ご、ごめんなさい!」
菊島さんがまるで親にお尻ぺんぺんされている子供のように必死に謝る。
おい、勘違いするなよ、別に俺が謝らせているわけじゃないからな!?
「うん、佳林ちゃんもこう言っているわけだしさ...許してもらえないかな清人君...?」
いや、だから別に俺が謝れなんて言ったわけじゃないからね!?
「い、いや...そんなに謝らなくていいよ...足、大丈夫...?」
「...平気よ...大体、あんたに私の足を心配されるいわ...ぐっ」
「...ねぇ佳林ちゃん、清人君がわざわざ心配してくれているのに、それを無下にするってどういうことなのかな?」
今度は桐乃さんが菊島さんの肩を強く握る。
「...あ、足の心配してくれてありがとう...」
完全に感謝を伝えるような表情ではない。
こういうとき、俺はどうやって返事を
「あれ?清人君が何も言わない...ということは、どうやらまだ許していないようだね。じゃあ佳林ちゃん、清人君が許すと言うまで」
「あー桐乃さんストップストップ!俺はもうとっくに許しているから」
「...本当に?佳林ちゃんに同情して無理して許しているわけじゃないよね...?」
「本心から許してますから!だから菊島さんのことは離してあげて」
「分かった。清人君がそういうのなら離してあげるね...ほら、佳林ちゃん。清人君が許してくれたよ。ありがとうございます、は?」
「いや言わなくていいです!」
もうこれ以上やったら本当に菊島さんが再起不能に陥ってしまう。
今だって家にまで忍び込んで俺と桐乃さんを別れさせるぐらい桐乃さんのことが好きなのに、その本人にこうやって脅迫されて精神状態だってまいっているんだから。
「...なぁ、あれって本当に絹井さん...?」
「天使が...僕たちの天使が堕天使に堕ちてしまった...!」
「かわいそうに...多分あのドM男に調教されちゃったんだよね...」
「でも、乱暴になった絹井さんもエロイよな...」
ほら桐乃さん、外野がいろいろと言ってますよ。
てか俺が桐乃さんのことを調教するわけないやろ!
逆に俺が調教されたわ!
桐乃さん以外の女子に徹底的に調教されて危うく寝取られそうだったわ。
何だったら"そう"じゃなくて実際に寝取られたわ!
「あ、先生が来たみたいだね。ほら、清人君隣の席でしょ?早く座ろ」
周りからの引いた視線や小言に一切耳を貸さず、俺を連れて席に座る。
...出だしがこんなんで本当にこの二学期大丈夫なんだろうか...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます