美人集団とペット
「おい、見ろよあれ」
「なんだあの美人集団!?」
「浴衣可愛すぎだろ」
「あのドレスの子とかやばくね?」
「あれ?てかなんか前に男いない?」
「ホントだ!他の子と違ってボロボロな浴衣?を着させられてるよ」
「よく見たら首輪ついててドレスの子にリードでつながれていない?」
「なに?あの男ペットなの?」
「うらやましい!!!!!!」
「おい、そこ場所変われ」
「「「「......」」」」
神社まで歩いている途中、人とすれ違うたびに小言が聞こえてくる。
これらの声は俺だけではなく、妹たち全員の耳にしっかりと入っている。
「お、お兄ちゃん、大丈夫?」
「アンタ、いろいろと言われてるわよ」
「清人が姉様のペットだと...?今の発言は見過ごせんな」
君たちまでそんなこと言わなくていいから。
「兄様、しっかりと他の方にもわたくしのペットだと認知されて嬉しいですわね?」
そ、そりゃ悪い気はしないけど...//
颯那は俺を先頭に歩かせ、まるで見せ物かのように後ろからリードで引っ張ってくる。
もし俺もこの姿を同級生に何て見られたら、赤沙汰でさえ引いて俺のことを無視してくるだろう。
あと、これは関係ないですけど、リードを引っ張る力強すぎません?
四つん這いではなく立ちながらリードを引っ張られているのだから、首が余計に苦しい。
「あ、神社見えてきたね」
前を向くと、光に包まれている神社が見えてきた。
「あれが夏祭り...ですか」
颯那は夏祭りに行ったことがないのだろうか?
少なくとも俺と一緒に行ったことはない。
「ちょっと人多すぎない?」
歩歌の言う通り、ここからでも人混みに溢れていることが分かる。
...絶対に同級生おるやん。
で、でもまぁ俺いつもクラスで影薄いし大丈夫だろ。
...いや、桐乃さんと付き合い始めてから謎に注目を集めているんだった。
階段を降り、神社の中に入ると、もう完全に波のような人混みができていた。
人混みができながらも、やっぱり颯那と俺はとても目立っていると言える。
なにせ夏祭りで赤いドレスを着てきた女子に、首輪をつけられてリードを握られている俺。
「ねぇ、ここからは自由行動にしない?」
比較的大きな声で歩歌がそう提案したのは、周りに屋台がたくさん並んでいるからだ。
「あら、それじゃあ全員で来た意味がないでしょう?安心しなさい。何か欲しいものややりたい遊びがあればわたくしがいくらでも金を出すわ」
周りの声がうるさすぎてよく聞き取れない...と思ったが、なぜか颯那の声は透き通るようにはっきり聞こえた。
「でも、この人混みじゃはぐれちゃいそうね。みんなで手をつなぎましょうか」
もちろん颯那に歯向かえるものなどおらず、渋々みんなで手をつなぐこととなった。
今の位置からするに、必然的に風珠葉、歩歌、凛華、俺という順番に手をつなぐはずだったが、俺と凛華が手をつなごうとすると、颯那がそれを妨害した。
「兄様はわたくしがリードでつないでおくから手をつなぐ必要はないわ」
ま、当然だわな。
「......」
だが、凛華は納得していないかのように颯那の目を見つめる。
「...凛華、何その目は」
「...いいえ、何も」
ちょっとちょっと。
ここで冷戦状態はやめてくださいよ...
もしこの場で凛華と颯那がドンパチを始めたら損害賠償が発生するぐらい夏祭り自体が悲惨なことになるだろう。
「そ、そうだ。まずは全員で綿あめ食べない?」
さすが風珠葉、話題を変える能力が高い!
「...そうね。わたくしも、風珠葉の言う綿あめというものを食べてみたいもの」
今の口ぶりからして本当に颯那は夏祭りに来たことがないのか?
そんなに箱入り娘だったのこの子!?
全員でこの場から移動する。
「ぐっ」
やはりこんなぎゅうぎゅうな中で五人が一緒に移動するのは困難を極める。
もう俺なんか人混みで潰されそうだ。
てかさっきからわざと密着してきているのかと思わせるほど周りの人が密着してくる。
...まぁそれが女性だったら嫌な気はしないが。
夏祭り系のドMホイホイ展開だと、この人混みに紛れて俺の"ムスコ"を握ってくる痴女がいて、その痴女が無理やり俺のムスコを握る。
握られたことで俺がその痴女の背中に発射してしまい、このことをばらされたくなかったらついてきてと脅されて、神社から離れ、茂みの中で襲われるというものだ。
俺は今それを待っている状態なのだが、さすがにこんなボロボロな浴衣を着て、赤いドレスを着ているはたから見ればやばい女子に首輪をはめられ、リードでつながれている男なんて狙われないか...
「兄様、もう少し早く歩いてくださいませ、三人の姿が見えなくなってしまいますわ」
「...はい」
まぁ、今の俺の状態も十分幸せ者だと言えるだろう。
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