不法侵入
「え?...」
人間、ありえない場面に遭遇したら体が硬直するというのは本当みたいだ。
ベランダの手すりを掴んでいる手を見てから、俺の体は完全に硬直してしまっている。
「?清人君、どうしたの?」
横から桐乃さんが俺の心配をし、さらに体を密着してくる。
...どうやら硬直とは言っても俺の下半身は例外だったようです。
「い、いやあそこに」
俺は震えながらも、ベランダの手すりを指さす。
てかさっきよりも手が上がってきてない!?
「ん~~~~?誰かベランダにいるのかな?」
俺とは真逆で、桐乃さんは全く動揺している様子はない。
「ちょっと見てくるから待っててね」
ベランダに出るために、桐乃さんがベッドから起き上がる。
「お、俺も一緒に行くよ」
一緒にベランダに出るよりも、一人寝室に残る方が怖い。
俺は完全に桐乃さんの後ろに身を隠しながら、ベランダへと出る。
もう手はすぐそこなのに、桐乃さんは全く臆さずずかずかとベランダに進み、そのまま
「人の敷地で何してるのかな~」
手を思いっきり掴み、こちら側に引っ張る。
手を伸ばしている存在もまさか掴まれるとは思っていなかったのだろうか、必死に暴れようともがくが、多分桐乃さんの握る力が強すぎて、びくともしてない。
「わぁっ!?」
そしてとうとう手を伸ばしていた人物がベランダに無理やり上がらされ、地面に倒れこむ。
「え...菊島さん!?」
この小柄、この童顔、間違いなく、クラスのロリコンが使用するオカズ素材ランキング一位の菊島佳林だ。
菊島さんは俺の声には反応せず、痛そうに自分の腕を見ている。
うわ~くっきり手の跡がついてるやん。
これが百合マーキングか?
「......」
桐乃さんは何も言わない。
ただただその菊島さんを見下ろす瞳が、まるでAIが生きる人間を選別しているかのようなものだ。
「あ、あんた...っ」
え、なんかいきなり俺のことを睨みつけてきたんですけど。
しかも目は完全に充血している。
ん?今度は立ち上がったぞ。
...やっぱりロりだな。
立ち上がっても俺と全然視線が合わないし。
でもごめんな。
俺のタイプはロりじゃないねん。
だから君からのその想い告白は受け取れ
「この下半身お化け野郎がぁぁぁぁぁ!!!」
その小さなか体のから出ているとは思えないほどの跳躍力を見せ、俺に飛びかかる菊島さん。
あー、これは俺死んだな。
多分次のコマでは、このベランダが崩れて真下に血まみれの俺が倒れているで。
そう観念していたのだが。
「ぎゃあぁっ!?」
どうやら次のコマで変り果てることになるのは菊島さんらしい。
俺に飛びかかろうとしたとたんに、桐乃さんも同じぐらい跳躍し、後ろから背中を掴んでそのまま寝室の中へ投げた。
結構な音がしたため、もしかしたら俺と同じく気を失っているかとも思ったが、菊島さんの体は思ったより丈夫らしく気を失っていないどころか深い傷も見当たらない。
桐乃さんはいつものテンポで、寝室に足を進め、またもや菊島島さんを真上から見下ろす。
「佳林ちゃん。いったいどういうつもりかな?どうして佳林ちゃんが三階の寝室のベランダに上ろうとしてたのかな」
...相変わらず思わず失禁してしまうほどに不気味な声。
ただ、まぁ桐乃さんの怒りも当然だな。
だってこれ普通に不法侵入だぞ?
ベランダの真下は庭なんだから、ここまで上がってきたってことは庭に入ったのは事実なのだから。
「ち、違うの桐乃ちゃん」
必死に弁解しようと涙目で桐乃さんを見上げる菊島さん。
「何が違うのかな?」
「私偶然あの性欲ゾンビが桐乃ちゃんの家に入っていくのを見てそれでっん!?!?」
と、そこまで言って菊島さんの言葉は途切れた。
桐乃さんがのどの部分を踏みつけたのだから。
「...もう一回言って。誰が"性欲ゾンビ"なの?」
「き...かぁ...」
いや、さすがにやりすぎですぞ桐乃さん!?
確かに性欲ゾンビなんて俺にちっとも合っていない名前を付けられたのは不名誉極まりないけど、さすがに足で喉を踏むのは普通に障害ですぞ!?
それにほら、菊島さんもだんだん息ができなくて顔が真っ白になっていくし。
ただ、それは桐乃さんもよくわかっているようで、意識が飛ぶ戦前のところで足を話す。
「...さっきの言葉、撤回してくれるよね?」
今度は真上から出はなく桐乃さんも顔を近づけながら言う。
俺はこれまで以上にDV彼女な桐乃さんを見て、早くこの場を切り抜け、爆発しそうなこの快感を解き放ちたいと思った。
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