殴打プレイ

「清人君、やっぱりもう我慢できないや。この子の口塞いじゃってもいい?」


あかん。

今まであかん展開は何度もあったが、これは本当にあかんやつや。


「口をふさぐですって?まさか男だけだと思っていましのに、同性にも体を売るんですの?」


殺気を放つ桐乃さんが近づいてきているのにも関わらず、颯那は煽り続ける。


…これはさすがに止めなあかんな...

ご主人様を守るのもペットの役目って言うし。

ただ、今俺が桐乃さんの体を抑えたとしても、あっさり振りほどかれるのがオチだし、今更颯那を黙らしても、桐乃さんは足を止めないだろう。


こうなったら...


覚悟を決め、タイミングを見計らう。


「いい加減にお口チャックしようね!」


よし、今だ!

俺は瞬時に立ち上がり、顔を颯那の前に出す。


そして桐乃さんの手が俺の顔をがっちり掴む。

…ちっ、手汗かいてないのかよ。


「くっ...」


顔を掴まれるってこんなにも痛いのか。

いつもDVボイスを聞いてムスコに栄養を与えていたが、あの世界の主人公はこんなにも痛い思いをしていたのか。


「え!?なんで清人君!?」


俺の顔を掴んだことに桐乃さんが気づく。


だが、時すでに遅し。


一度つけられた勢いが消されることなく


「ぐぁっっ!!!!」


俺の頭は思いっきり机に叩きつけられた。



「ああ..ぁぁ」


なんだ...これは?

痛すぎるし...気持ち良すぎる。


この痛みが、桐乃さんからのDVだと思うと痛いはずなのに快感が全身を駆け巡る。


「ぁぁ...ん?な、なんだこれ...?」


と、そこで気づく。


なんだかおでこが温かい。


「ま、まさか...」


これはそういうことなのか?

この生暖かいのはそういうことでいいよな!?

 

でも、彼女の”それ”で興奮するのは彼氏として...全然ありだよな。

てかましてやそれが顔に命中するって、今ズボンが破けても仕方ないよな。


さて、あとはそれを飲み込めば念願のプレイ...って、あれ?なんか赤くね?


おでこに付着した"そういう液体"を指でふき取り、見てみるとなんだか赤黒いことが分かった。

しかもそういう匂いじゃなくてなんだか鉄の匂いがするし...


「はぁ、はぁ、はぁ、わ、わたし」


桐乃さんがなんだか怯える目で俺の方を見る。


大丈夫だよ桐乃さん。

いくら完璧系女子であろうとそういう日もある。

そしてそれを恥ずかしがっているようだけど、今どきの男子は全員誰も気にしないって。

むしろ一部からはご褒美と呼ばれるくらいだ。


「わ、わたし...そんなつもりじゃ」


あれ?でもなんか桐乃さん焦り過ぎじゃね?

それに、別に顔も赤くなっていないし。


「あら、あら、これはこれは」


そしてあの颯那でさえ、俺の方を目を丸くして見つめている。


...てっきり颯那ぐらいのドSだと、同じ寮生にそれぐらいのことをさせていると思っていたんだが...

まぁ、でもそうか。

ドSと、ただの変態じゃ全然意味が違うしな。


それにしても様子がおかしいのは颯那


でも、それも普通なのかもしれない。

なんせ、自分の体液が赤黒く変色してしまっているのだから。


それにしても赤黒、か。


赤黒、赤黒、赤黒、...おでこ?

ふと、自分の頭をぶつけた机を見てみる。

そこにも、赤黒い液体は広がっており、今でも、上からぽたぽたと垂れている。


赤黒、生温かい、おでこから垂れている...


「ってこれ血やないかい!!!!!」


叫んだことで、脳が今おでこから出血していると強く認識してしまい、なんだか視界がぼやけてきた。


「き、清人君、大丈夫!?」


慌てて駆けつける桐乃さんの声も、ぐぐもって聞こえる。


「...自分から兄様に出血させておいて慌てて駆け寄るとは、やはりあなたのようなサイコ援交女は兄様の彼女にふさわしくないですわね」


「...今はふざけている場合じゃないよね?」


「ふざけているも何も事実じゃありませんの。それと、兄様には近づかないでくださいまし。もう一度殴打されたらたまったもんじゃありませんわ」


「...っ」


二人の言い合いもうまく聞き取れない。

俺はただ机に突っ伏しながら寝ようとしているだけだ。


「わたくしも大事にしたくないですし、それは兄様だって同じなはずですわ。だからここはわたくしに任せて、絹井さんは帰りなさいな」


「......」


「聞こえなかったんですの?今、あなたがこの場にいたとしても邪魔なだけですわ。分かったのならさっさとお帰りになりなさい」


教室から一つの足音が出て行ったのはかろうじて聞こえた。

だが、それが最後で、俺の意識は上映前のシアターのようにゆっくりと暗くなっていき、まだ全身に感じ取っている快感と共に消えていった。

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