女王の帰還
「あら、久しぶりね凛華」
「...お帰りなさい、姉様」
インターホンが聞こえてきた瞬間、凛華が真っ先に玄関のドアを開けに行った。
もう完全に召使と化してるやん。
「みんなリビングにいるのかしら?」
「はい、全員揃ってます...」
成人向けボイスに出てくるお嬢様と同じ声が玄関の方から聞こえてくる。
「「......」」
颯那の足音が近づいてきて、全員の顔がこわばる。
そして、リビングのドアが緩やかに開けられた。
黒タイツを履いている長い脚、全身が黒紫のいかにも女子高と呼べる制服、長くの伸ばされた銀色とも呼べる白い髪の毛。
凛華と同じぐらいの身長に、平均より少し大きな胸。
そして、なんといっても清楚系と言われても誰もが納得してしまうような顔立ち。
そんな容姿をしている
「お久しぶりね。歩歌と風珠葉。そして...」
颯那が俺の方へと顔を向け、とびっきりの笑顔を作る。
なんだろう...颯那の笑顔は完全に美しい悪女として完成してしまっていて、俺のムスコが制御できなくなる。
「ただいま戻りましたわ、兄様」
...相変わらず俺に話しかけるときだけ、あからさまにお嬢様口調になるのは変わってないのね。
別に嫌だとは言わないけど。
「おかえり颯那ねぇ」
「...颯那姉さん、お帰り...」
二人とも立ち上がり、挨拶をする。
あの歩歌でさえ嫌な顔一つせずに。
「風珠葉、電話でも感じていたけど少し声変わりしたのね。身長も伸びたみたいだし」
「でも、クラスではまだまだ幼女って言われてるよ」
お、そういうところには気づくのか。
「歩歌は...少しメイクをするようになったのかしら」
「べ、別に。ちょっとよちょっと」
え?歩歌メイクしてたの?
こんだけ長く一緒に過ごしていた俺が気づかなかったのを颯那は一瞬で気づく。
完敗です。
「そして兄様は...ふふ、何も変わっていないようですわね。いや、それどころか前より小さくなりまして?」
ふん、もう身長いじりは慣れたもんねー。
どんだけ煽っても痛くもかゆくもないどころか、全部俺の"栄養素"になるんだから意味ないもんねー。
「あら、身長だけじゃなくて顔もなんだか前よりも情けなく...いや、思えば以前も十分情けなかったのですからプラマイゼロですわ」
...ちょっと効いたかも。
顔が情けないって具体的にどういうことなんだ?
もし、幼く見えるとかだったらまた俺の養分に分泌されるけど、もし老けたや単純にブサイクになったとかだったら、俺のムスコが栄養失調になりかねん。
「それで姉様。今日はどういった件で...」
あとから入ってきた凛華が口を挟む。
「そうだったわ。兄様との戯れはまた後にやるとして、今日はいろいろと話すべきことがあって帰ってきたの」
颯那が辺りを見渡す。
その様子に気づいた凛華がとっさにちょうど中央に位置するところに椅子を置く。
だから完全に召使と化してるやん。
あれか?調教済みってやつか?
颯那が置かれた椅子に腰かけ、足を組む。
でました。俺 (俺たち)を興奮させる座り方。
颯那が腰を掛けたところで、全員がそれぞれの席に座る
「昨日の夕方ごろに、寮に風珠葉からの電話がかかってきたの。なんでも、最近あなたたちの関係がぎくしゃくしているから仲介してほしいってね」
明らかに仲介する奴の態度じゃないな。
「いったいどういうことなのかしら凛華?たしか、今のこの家の実権はあなたが握っているし、わたくしもそのように言っておいたはずだけど」
言っておいた、つまり命令したってことか。
颯那に問い詰められ、凛華の額に若干の汗がにじむ。
あんなに暑い中激しい運動をしても汗一つかかなかった凛華に。
「...何も言い訳はできません。風珠葉がそのように思うということは完全に私の心掛けが足りなかったということです」
「わたくしは風珠葉じゃなくて、あなたが今の兄妹仲、姉妹仲を見てどう感じているのかを訊いているのだけれども」
トーンこそ変わっていないが、さっきよりも少し圧が含まれているのは凛華も感じ取っているはずだ。
「私も風珠葉と同じ気持ちで、最近の兄妹仲に亀裂が走っていることを認め、それは私の責任にあると自覚しています」
「そう。自覚しているのね。だったら具体的にあなたがどう責任があるのか説明してごらんなさい」
どんどん圧が大きくなっていってるな。
凛華だからよかったものの、問いただされているのが俺だったら、その場で失禁するか、俺のムスコがズボンを突き破るのかどっちかだ。
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