女王の到着予告
「あ!お兄ちゃんと凛華ねぇ、お帰りなさい」
リビングに入ってきた俺たちを満面な笑みで迎える風珠葉。
「あ、た、ただいま~...歩歌は今日もないのか?」
「うん!今日も友達と一緒に夕食に行ったんだって」
...風珠葉が笑顔過ぎて怖い。
これは凛華や桐乃さんの狂気的な笑みとは違い、純粋に心底何かに安堵したかのような笑みだ。
「そういえばもう二人の分の夕食も買って来たよ!」
食卓の上には、俺と凛華の分のコンビニ弁当も置かれている。
「あ、ありがとう」
「......」
凛華はただ黙ってコンビニ弁当と風珠葉を交互に見つめる。
「風珠葉」
至って真剣な凛華の声が響く。
「ん?どうしたの凛華ねぇ」
「単刀直入に訊く。何があった」
やっぱり凛華も風珠葉の異変に気づいていたのか。
最近、ことあるごとに、イケメンヤンデレムーブをかましながらしっかりと妹の様子も観察していた。
さすがは将来の...て、いかんいかん。
こんなこと心の中で吐くだけで桐乃さんにいろいろと勘づかれる。
「何があったて...別に何もないよ」
「誤魔化さなくていい。私が何年お前の姉を務めてきたと思っている?お前の少しの異変も見逃すようじゃ、私は今、濡髪凛華としてここに存在していない」
最近そのちょっとクールな言い回しにはまってきた?
「本当に凛華ねぇが心配するようなことは何もないんだけど...強いて言えば、もうすぐ
「「...は?」」
珍しく、俺と凛華の声が重なる。
いや、珍しいどころか初めてかもしれない。
「えーっと、ふ、風珠葉?それは冗談かな...?」
「さっき颯那ねぇが電話でそう言っていたからほんとなんじゃないかな?颯那ねぇが冗談とか言わないタイプだってことはよく知っているでしょ?」
あの...颯那が帰ってくる。
あの女王様気質な長女である颯那が...
俺をドMに調教した颯那が。
え?女王様気質ってことはお前のタイプじゃないの?
って思われるかもしれないが、ちょっと颯那に関してはトラウマの方が強すぎる。
まぁ大半は俺に快感を与えることをしてくれるが、中には冗談抜きで俺が苦しみを味わうことも遠慮なくしてくる。
ああ...思い出してきただけど俺のムスコが勃って来たのと同時に震えてきた。
「姉様が、自分でそう言っていたのか?」
ほら、凛華が姉様なんて呼ぶぐらいだからそのやばさが伝わるでしょ。
「うん、具体的には、明日の夜に帰ってくるんだって」
なるほどお盆に…って明日!?
こういうのって普通お盆中に帰省するんじゃないの?
「...それで、お前は姉様が帰ってくることでなんでそんなに安堵したかのような顔をしている。...まさかお前!!!」
「...やっぱり気づいちゃったか。わたしが颯那ねぇに家に帰るようにお願いしたって」
は!?
お前マジか!?
なんで自らマグマに飛び込むようなことを?
「...一応聞いておこう。なぜ姉様を呼びだした...」
凛華が感情をむき出しにしながら風珠葉に問う。
「...だって、最近みんなおかしいじゃん」
風珠葉の声と体が震えだす。
「以前はみんなの面倒をしっかりと見てくれていた凛華ねぇが、お兄ちゃんに暴力を振るって警察まで家に来て、そこからなぜかお兄ちゃんにだけ甘々になって歩歌ねぇのことを他人かのように扱うようになった」
俺に対しては甘々という表現であっているのか?
「で、歩歌ねぇもなんだか最近冷たいし家にいないことも多い」
確かに以前は歩歌もちょくちょく風珠葉のことを気にかけてはいたが、最近はあまり風珠葉と歩歌が会話している様子すら見かけない。
「で、お兄ちゃんはあの桐乃とかいう女にばっかりかまって、この間なんか勝手に家に連れてきた」
いや、あれは俺も知らされていなかったからね?
「わたしはただ...ただ昔みたいに仲の良かった兄妹に戻りたい。戻りたいだけなの」
涙を浮かべてそう語る風珠葉を無言で見つめる凛華。
その表情からは今の感情を読み取れない。
ただ、少なくとも、感情をむき出しにわけでも、逆に冷め切った表情をしているわけでもない。
「...その関係を姉様なら修復してくれると?」
「それは...わからない」
まぁな。
あの颯那が善意でこの家族の仲を修復してくれるとは思えない。
いや、でも違った意味ではまとめ上げることができるか。
「...そうか」
凛華は風珠葉の返答を聞くと、静かに椅子に座りコンビニ弁当を手に取る。
買う語はできたって言うことか。
...それにしてもなんかいきなりシリアスになったな。
ほら、シリアスだとムスコが萎えるやん?
だから俺はあまりシリアス展開が好きではない。
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