尋問
「それじゃあまず昨日のことから聞かせてくれるかな?」
椅子に座らされ、目の前には二人の拷問官が座っている。
拷問官は二人とも女で、俺よりも体格がいい。
そして俺はこれから彼女たちからたっぷりと厳しい尋問を受け、調教されていき、最終的にはペットとして飼われる。
みたいなエロASMRを思い出す。
「確かお前は昨日夕食の途中でお腹の調子が悪いとか言って風珠葉に抱えられながら抜け出したよな?そこから何をどうしたら歩歌に唇を奪われるなどという展開に発展する?」
「そ、それはですね」
「一応言っておくけどね清人君。なにか嘘をついたり、質問に答えなかったりしたらお仕置きだからね?」
き、桐乃さんからのお仕置き//
も、もちろん大歓迎です!でも、できれば気持ちいことでお願いします//
「じ、じつはあのお腹が痛いのは演技でして...」
「演技、だと...?」
俺がそう口にすると一気に凛華の怒気が周囲に放たれる。
「落ち着いて凛華ちゃん。そう怒りに身を任せると清人君が何も言い出せなくなるよ」
「...そうだな」
おお、すげー。
桐乃さん、凛華に対して助言をし、凛華がその助言を聞き入れた。
いつもいがみ合っていた二人が。
でもその助言って桐乃さんにも言えることじゃないかな...?
「清人君。続きを話して」
「そのあと、俺は歩歌の跡を追うべく、家を抜け出した」
「待て、昨日お前が部屋で休むのを風珠葉が見届けるという約束だったはずだ。つまり、風珠葉とも口裏を合わせていたのか?」
気絶している?歩歌を心配そうに見つめている風珠葉に凛華が視線を向ける。
あかん、さすがに風珠葉を巻き込むわけにはいかない。
「いや、風珠葉は確かに俺が目をつむるまで傍にいてくれた。風珠葉が部屋を出て行った後に俺がこっそり家を抜け出したんだ」
「「......」」
二人は注意深く俺を凝視する。
少し無理があるのは百も承知だが、それでも一応理論上不可能ではないだろう?
それともこのままお仕置きタイムか?
まぁそれでもいいと思っている自分がいるのは確かだ。
「まぁいい。そこを追求するのは意味がない。それよりも私が訊きたいのは、その後の展開だ」
もうここからは誤魔化すのは無理だろう。
俺は二人にありのままを伝えた。
歩歌と一緒に食事をし、家に帰らせるようわざと挑発し、逃げて夜道を走っていたらあっさり捕まってしまって、そのままキスされたことを。
ちなみに舌を入れられたところまでは話していない。
「...なるほど。多少はお前にも非があるとは言えなくはないが、それでも二割程度だ」
ま、まぁそうですよね!
結果的に妹を売るみたいなかたちになっちゃったけど俺だって被害者なんですから!
「なんで抵抗しなかったの?って言いたいけど、まぁ、抵抗するほどの力がないっていうところも清人君の可愛いところではあるよね」
よかった。どうやら桐乃さんもこれで納得してくれたようだ。
「でも、他の女に体を許したんだから、上書きはしっかりしないとね」
「待て、その上書きと言うのは、いったいどこまでする気でいる」
凛華が待ったをかける。
「うーんと、まずは今日一緒にお風呂に入って互いに体の隅々を洗いっこするでしょ。そして一緒のベッドで寝て肌を重ね合わせ合うところまでかな」
「すまないが、それは許可できない。今回は妹が貴女に迷惑をかけたのだから多少のことは許可を出すつもりだが、それでもせいぜい唇を重ね合うところまでだ。一緒にお風呂に入ったり、それ以上のことはさすがに将来清人を預かる身としては看過できん」
「...別にきみの許可なんていらないと思うけど」
「ここは我が濡髪家の家だ。客という立場以上、ルールには従ってもらう。本当だったらすぐに追い出していたのだ。それを我慢し、料理まで作ったことに感謝するんだな」
さっきまでは協力関係にあったのに...
こうも簡単に絆というものはちぎれやすいのか...
「...きみにも教育が全く行き届いてないんだね」
心底失望したかのような口調になったが、一定の理解を示したのか、暴力に走ろうとはしない。
「まだ食事の続きだったな。ほら、全員席に着け、食事再開するぞ」
いや、まだ歩歌気絶?したまんまですけど。
「風珠葉、歩歌を部屋まで運んでやれ。ついでに、歩歌分の食事もな」
お、さすがに今日はこのまま夕食抜きにはしないのか。
風珠葉が無言で立ち上がり、歩歌を自分の背中に乗せる。
...そろそろ風珠葉の精神状態が危うい気がするのは僕だけでしょうか?
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