爆弾投下の代償
「「...は?」」
凛華と桐乃さんの声が重なった。
「どんな気分?あれだけ他人扱いしていた妹に最愛な兄さんのファーストキスを奪われた気持ちは?」
ねぇどんな気持ち?と満面の笑みを浮かべ、凛華を煽る。
「ねぇ、どういうことなのかな歩歌ちゃん?彼女であるわたしよりも先に清人君の唇を奪ったってことかな?」
「だからそう言ってるでしょ?あと一つ訂正させて。アンタは兄さんの彼女じゃなくてセフレだから。そこんところ間違わないようにね」
「...清人君。このこむす...歩歌ちゃんが言っていることはホント?」
「え、えーっと」
...ねぇ、これってどうすればいいの?
本当のこと言ったら今度こそ殺し合いに発展しそうな空気だし、もし嘘を言ったら歩歌が完全に壊れかねない。
ま、まぁとりあえず何が起こってもいいように脱出経路を確保
「清人君、逃げないでちゃんと答えてほしいな」
どさくさに紛れてゆっくりと席を立ち、扉に近づこうとしたのを、桐乃さんに腕を掴まれ止められる。
「い、痛い...!?き、桐乃さん、もう少し力を弱めてはくれませんかね」
「ごめんね清人君。きみが本当のこと言ってくれないとどんどん力強めていっちゃうかも」
「あ、は、はい、昨日の夜人目につかない路地で歩歌にキスされました!!」
「ふーん。歩歌ちゃんが言っていたことは本当だったんだ」
あまりの痛さについ白状してしまった。
「それにしてもアンタ体だけの関係なのにまだキスすらさせてもらっていないとか、もはやセフレ未満じゃないの?」
「...ちょっとお口チャックしとこうか」
桐乃さんが俺の腕を放したのと同時に、歩歌の後ろに回り込み、そのまま首を絞め落とす。
...反射神経えぐいな。
ってそんなこと言っている場合じゃなくて。
「き、桐乃さん!?なに」
「歩歌ねぇから手を放せぇぇぇ!!!」
俺よりも早く、風珠葉が桐乃さんの手を掴み、必死に引きはがそうとする。
だが当然桐乃さんの腕はびくともしない。
「清人君も風珠葉ちゃんもそんな慌てなくて大丈夫だよ。ちょっと歩歌ちゃんにはお口チャックしてもらうだけだから」
その可愛らしい言い方が余計に怖い。
だが、首を絞められている等の本人は酸欠で顔を赤くしながらも、表情は苦しそうじゃなかった。
それどころか一切あの邪悪な笑みを崩してない。
「り、凛華姉さんと、お、同じぐらいの馬鹿力ね...ふふ、セフレ未満のメスゴリラとかホントに救いようが、ないわね」
それだけを言うと、歩歌は完全に意識を失ったかのように目をつむりうなだれる。
...なに今の綺麗な気絶の仕方。
もっと泡を吹いたりしてから気絶するもんじゃないの?
…本当に気絶しているか?
気絶している?歩歌を桐乃さんは優しく抱え、床に降ろす。
「さて、歩歌ちゃんもようやく黙らせることができたし...清人君。次はきみの番だね」
もう一度俺に向き直る。
その顔は、いつもみたいにみんなの天使と言われる優しい表情は一切なく、ただただ冷え切った表情と瞳をしている。
...俺、殺されるんじゃね?
助けを求めるように我が愛しの妹たちの方を向く。
風珠葉は横たわっている歩歌もじーっと見つめており、こういうときに頼りになる凛華は、歩歌に暴露されたときの態勢のまま動かない。
まるで石化されたかのように。
「ほら、清人君、座って」
「...はい」
抵抗することなく、二者面談かのように向かい合った椅子に座らされる。
「それじゃ、昨日の夜何かあったのかを聞かせてくれる?」
なに、今から尋問されるの俺?
桐乃さんはすでに死刑判決を下すことを決めている裁判官のような顔をしてるし。
「き、昨日の夜は」
「...少し待ってもらえるか?」
と、ここでようやくずっと固まっていた凛華が声を出す。
お、まさか俺を助けてくれるのか?
「何かな凛華ちゃん?まさか、わたしの邪魔をする気?」
もう言葉一つ一つに殺気がはらんでいる。
ただ、そんな言葉に負けずに抗うんだ凛華!
「いや、昨日の夜ということは、私にも何か気がかりなことがある。だから、一緒に清人の尋問に参加させてくれ」
「そういうことならいいよ」
...まぁ何となくこうなるだろうとは思っていました。
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