二人だけの自室

「え?前に言わなかったっけ?一日清人君の家にお邪魔するって」


え、俺そんなこと許可したの?

許可したとしたらマジで大戦犯過ぎない?


「え~と、そのお邪魔になる日は今日なのかな?」


「?そうだよ。そのために着替えとか持ってきたんだから」


つまりずっと気になっていたあのスーツケースの中には桐乃さんの着替えが入っているってことか...

桐乃さんの着替え…//


いや、今は妄想している場合じゃない。


「えーっと、その、今日は...」


困る。無性に困る!

昨日歩歌とあんなことをした翌日に彼女が止まりに来るとか、ギャルゲーの王道修羅場展開すぎる。


「え、何か予定でもあるの?」


「ありません」


「なら決まりだね!」


クソ、俺はなんで予定があると嘘をつけないんだ。

"まぁ、嘘をつけないそんな可愛い清人君も過ぎだよ"っと、桐乃さんの顔が言ってそうだからよしとするか。


「とりあえず清人君の部屋に泊まるってことでいいよね?」


こうなってしまった以上それは当然だ。


「一緒のベットで寝ようね」


「!?//」


いきなり耳元でそう囁かれ、全身が奮い立つ。


「ほら、清人君の部屋に行こ」


手を握られ、自室へと連れていかれる。

一気に桐乃さんにからめとられ、もう気づけば俺の家なのに完全に彼女に主導権を握られていた。


できれば俺の体の主導権も握ってほしい。


「さっきも言ったけど、清人君の部屋って本当に広いよね」


自室に入ると、またそんなお世辞を言ってきた。


「でも、桐乃さんの家も見た感じ大きそうだから、一つ一つの部屋もここより広いでしょ?」


「んー、あまりわたしの部屋と比べるのは不適切かな。だってあたしの場合はほぼすべての部屋が自室みたいなものだから」


あれか。

よくアニメの強さ議論とかで世界観が違い過ぎる作品のキャラ同士を比べても意味がない的なやつか。


「これが清人君のクローゼットの中かー」


中に入るや否や、桐乃さんはすぐに部屋のクローゼットを開けた。


「服は結構少なめなんだね」


「ああ、俺自身ファッションにあんま興味がないからね」


強がりで言っているのではなく、本当にファッションに関しては流行とか興味ない。

流行りに乗った服装にしても、歩歌辺りに馬鹿にされるのがおちだし、それになんといったってお金がかかる。


「でも、清人君は流行を意識したらもっとかっこよく...いや、やっぱり今の話は忘れて。清人君が今以上にかっこよくて可愛くなったら他のメス...女の子たちが寄ってたかってくるからね」


今若干キャラ崩壊なセリフが出てきた気がしたが、聞こえなかったふりをしておこう。


「テレビも大きいよねー。いつもこのテレビであのゲームをやってるの?」


「うん、いつもゲームするときは大体このテレビでプレイしてるよ」


「そうなんだ。それじゃああの日風珠葉ちゃんがわたしと清人君のマルチプレイを妨害したとき、あの子は清人君の部屋に入ってきたんだね」


桐乃さん?なんでそんな過去のことを掘り下げるの?


「そ、そういえば桐乃さん、今日って夏期講習の日じゃ」


咄嗟に話題を変えるが、これも何気に気になっていたことだ。


「もちろん清人君が来ていないってわかった瞬間帰ったよ」


「そこから俺の家に...?」


「うん、心配だったから家に様子を見に行こうとして、だったらついでに泊まりに行くの今日にしたらいいじゃんって思ったんだ」


そんな大胆な行動をとるのか...


「それで...歩歌とは会わなかった?」


「歩歌ちゃん?塾の窓から清人君が来ないか監視していたときに見たけど、清人君が一緒じゃないってわかって、すれ違うような形で下まで降りたから会わなかったよ」


「そ、そうか。ならいいんだ」


一番危惧していたのは、今日塾で歩歌と桐乃さんがばったり会って、歩歌が昨日のことを喋ってマウントをとり、ブチ切れた桐乃さんが俺を問い詰めるために家まで来たということたが、今の様子からして桐乃さんは本当に何のことか分かっていない様子だ。


「あ、今日はこうして同じ部屋にいるんだからさ、オンライン通信じゃなくて、二人で一緒の画面でプレイしない?」


一応この死にゲーは、オンラインマルチプレイだけではなく、今手元にローラーが複数あれば、二人一緒の画面で協力プレイができる。


「えーっと、確か前回のボスを倒したところだったよね」

「あ、清人君待って、その先は崖だよ」

「ボス戦に行く前に、大量アイテムは大量に買っていこうね」

「あ、清人君危ない!!!!」

「やった!清人君のおかげでノーダメージでボス討伐できたよ」


...いや、俺いらんくね?

ここまで無双プレイされると、一応一緒に協力プレイしている俺が虚しくなってくる。


まぁともあれ、そんな感じで俺と桐乃さんはゲームに夢中になった。

途中、一階で誰かが帰ってきた音がしたがそんなこと気にも留めないほどゲームにのめりこんでいた。


その結果


「お兄ちゃん?なんか騒がしいけどまた一人であのゲームをして発狂して...る...の」


こうして無事に不意を突かれる形で、風珠葉が俺と桐乃さんが部屋で仲良くゲームに熱中している最中に乱入してきた。

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