一匹狼系妹のプライド

「いるとしたらここらへんだと思うんだけど」


家を抜け出してから、駅の方に向かった。


自宅周辺にも、飲食店舗あるが、どれも夜に女子中学生が一人で食事をとるような場所ではないため、おしゃれな店のある駅方面に向かった。


「どこだどこだ...?」


どの店も窓越しに店内が見えるため、俺は注意深く目を細めて店内を見渡す。

そのうち職質受けどうだな。


「ん、あれは...?」


そんな中、派手なカフェの店内に一人で座っている、若干黒紫っぽい薄着を着ている金髪の女の子が目に入った。


「...歩歌,だな...//」


俺が少し顔を赤くしているのは、薄着を着ていることで浮き彫りになっているちょうどいいぐらいの大きさの胸が目に入ったからだ。

決して大きいとは言えないが、凛華と比べるとマシなぐらいだ。

てかあの大きさなら凛華のことをまな板とか言って煽っている場合じゃないと思うのだが。


というかやっぱりあいつ一人だな。


「あんな格好してたら男に声とかかけられるんじゃねぇの?」


そう危惧した俺は、店の中に入る。


「ご来店ありがとうござます。おひとりさまですか?」


「あ、え、えーっとそういうわけではなくてですね」


ウェイトレスさんに話しかけられ、しどろもどろになってしまう。


「は?兄さん?」


俺のイケボ (自称)過ぎる声に気づいたのか、近くに座っていた歩歌が俺に気づく。


「なんで兄さんがここにいるの?夕食は?」


「それなんだが...今日はお前と一緒に食べようと思ってな」


「...なにそれ」


一応拒絶されなかったことに安堵し、歩歌と同じ席に座る。


「...そういえば友人はどうしたんだ?」


「...アンタ、あたしを怒らせたいの?こうして一人で食事しているんだから大方予想はついてるんでしょ」


歩歌が俺を睨む。

...こうして歩歌に睨まれると凛華とは全く別の意味での迫力を感じるな。

普段からきつい瞳をしているせいか、睨まれるとどうしても目をそらしたくなってしまう。

だが、そんな瞳も俺からしてみればご褒美であります!!!


「何か頼んだら?」


歩歌の前にはいくつかのパンとコーヒーが置かれている。


「そのパンは食べ放題なのか?」


「そう。一回注文するだけで後は食べ放題になる」


それを聞いた俺はすぐにボタンを押し、ウェイトレスさんに注文した。


「ここのパン種類多いなぁー」


ある程度のパンをとってきて、歩歌のテーブルに戻る。


「...それで、なんで今日兄さんはあたしの跡を追ってきたわけ?」


「...一言で言うと、心配してたから、かな」


「...心配?」


ああ、と頷き、話を続ける。


「いきなり失礼なことを言うけど、歩歌、あんま友達いないだろ?」


「...兄さんほどではない」


睨みつつも否定はしない。

俺ほどではないと言ったが、正直ドングリの背比べと解釈していいだろう。


「そんな歩歌がいつも友人と外食をしてくるなんておかしい。かなり前から本当は歩歌は一人寂しくどこかの飲食店で食事しているのではないかと」


「......」


黙っているということは、やはり今日たまたまというわけではなく、これまでも友人と一緒に外食などしていなかったと結論付けることができる。


「もし、歩歌が一人で食事をしているとなると、それはそれで寂しいのではないかと思ってな」


「寂しい?」


歩歌があざ笑うかのように鼻で笑う。


「寂しいなんてことあるわけないでしょ。確かに兄さんの言う通り、あたしは学校に友達と呼べるような人間は一人もいなくて、なんなら避けられることだってある」


一人もいないのかよ。

なら、俺の方がまだ多いんじゃね...?


「でも、だから何だというの?別にあたしは友達が欲しいわけでもないし。ただ一人でいることに寂しさなんて覚えていない」


ただの強がり…というわけでもなさそうだ。

恐らく、歩歌は本心で言っているのだろう。


「確かに友達がいらないというのは分かる。俺だって本当は友と呼べる存在なんて一人もいなくていいと思っている」


嘘です。めっちゃ寂しいです。


「だが、家族はどうだ?今のお前は言うなれば完全に凛華から他人と思われているだろう?それも別に寂しくないと割り切れるのか?」


「...あの女の話、しないでくれる?」


歩歌の瞳が睨みながら、俺を呪い殺すかのようなものに変化する。

あかん、これはマジなやつや。


「わ、分かった。お前が別に凛華に無視されることに寂しいという感情を覚えていないことは分かった。分かったからその目をやめてくださいお願いします」


「...次あの女の話したら容赦しないから」


そう言って、なんとか歩佳の瞳がただの睨みに戻った。


「でも、だったらなぜ風珠葉に友人と食事してくるなんて嘘をつくんだ?正直にボッチで食事してくるって言えばいいいだろ」


「あたしは兄さんみたいにプライドも何もかも捨ててるわけじゃない」


おい、俺にもプライドはあるぞ!

俺は自分のM心に誇りを持っている。


「もし、風珠葉に一人で外食してくるなんて言ったら、そのことは兄さんにも伝わってしまうでしょ?それは...なんかいや」


...変なところプライド高いなこの娘。

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