ヒモ宣告
あれから俺と凛華はバスケ、サッカー、バトミントン、テニスをした。
もう後半はほとんど動けなかった俺に対して、凛華は全く動きに衰えが見られなかった。
「この程度で根を上げるとは、ホントに情けないな」
「わ、悪い」
凛華は呆れ切った目で俺を見る。
「まぁいいだろう。それよりもずいぶん暗くなってきたな」
時間なんて特に気にしていなかったが、どうやら俺と凛華は十時間ほどスポーツをやり続けていたのだ。
あ、ちなみに途中で凛華が休憩なし的なことを言っていたけど、さすがに昼ご飯は食べた。
だが、それもコンビニ弁当だけだったため、もう空腹状態である。
「実はさっき風珠葉にメッセージを送った」
「どんな?」
「夕食は自分で何か買ってくるように、と」
ん?つまり
「どこか外食するってことか?」
「そ、そういうことになるな」
なんでそこでちょっとツンデレをこじらすねん。
まぁこうなったからには、凛華からどこかのレストランにエスコートしてくれるってことは期待できそうにないな。
「じ、じゃあどっか近くのファミレスに行くとするか」
「そ、そうだな。たまにはお前とも外食をしたいと思っていたんだ」
スポーツセンターを出る。
ちなみに料金は全て凛華負担だ。
料金自体はそこまで高くないが、俺たちの場合は利用時間が長かったため、それなりにとられたのかもしれない。
「それで...そのファミレスはどこにあるんだ?」
「...実は俺も知らなくて、今から探すところです...」
「そ、そうか。なら、やっぱりここはお前を養う者として、私が先頭に立って探さなければ」
や、養う!?
今俺のこと養うって言った!?
そういえばさっき同棲するとか言っていたし...
もう将来の俺の職業はヒモで確定ってこと!?
長年の夢がかなったな。
「おい、あそこなんかよさそうだぞ」
俺が変な妄想している最中に、もう凛華はファミレスを見つけた。
「...なんかちょっと高そうじゃない」
「金額に関してはお前は何も心配しなくていい。私が、何一つ不自由させないからな」
会話が微妙にかみ合っていないのが気になるが、凛華がそう言うのなら仕方がないな。
早速二人でそのファミレスに入店した。
店内は意外と混んでいるが、まだ席には余裕があるらしく、ご自由な席にお座りくださいと言われた。
「俺たち二人だけなんだから、カウンターの方に行かね」
「食事はふつう向かい合ってするものだ。お互いが違う方向を見ながら食べるなんて、そんなの二人できた意味がないだろう」
「す、すみません」
なんかマジレスされた。
結局俺たちは普通の席に座った。
「よし、私はもう決めた。お前も早く決めろ」
はや!?
まさか最初からこのファミレスに来る予定で、全然にメニューを調べたんじゃ。
「俺はこのカルビ丼にしようかな」
ボタンを押して店員さんを呼ぶ。
メニューは凛華が俺のも含めて読み上げた。
「カルビ丼と大盛りの海鮮丼をください」
大盛りの海鮮丼???
あんま女子に向かってこういうことを言うのは失礼かもしれないが...結構大食いだな。
てっきり凛華のことだからサーロインステーキでも頼むかと思った。
「......」
「......」
そしてまたこの沈黙である。
「今日は悪かったな」
「え?」
「お前に目的地も言わず、スポーツセンターに連れてきて」
まぁそれも凛華らしいし、別に怒ってなどはいないが。
ただ、こうして謝罪してきたことで、改めて凛華も変わったのだと認識させられる。
「...おい清人」
「な、なに?」
「...実は夏に剣道の関東大会に出るんだ」
「あ、ああ」
特段、驚きはしない。
凛華ほどの実力があれば関東大会に出場するのも道理であった。
「応援...来てくれないか?」
「お、応援?」
「お前が今年受験生だということは重々承知している。ただ、それでも来てくれないか...?」
「...もちろん行くさ」
「!?ほ、本当か!?」
「俺だって、せっかくの妹の晴れ舞台ぐらいは応援したい」
実際、どうせ俺は推薦で進学するのだから、夏期講習などただ桐乃さんに会いに行くための口実に過ぎない。
「ま、まぁな。家族として、いや、それ以上の関係として、お前が私の応援に来るのは当然だな」
...なんかちょっと最後の方に気になることが聞こえてきたが、まぁ聞かなかったことにしよう。
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