体力づくりデート

「ほら、着いたぞ」


「はぁー、り、凛華、お前ちょっとペースはや」


目的地を見た瞬間、会話は途切れた。


バリバリのスポーツセンターやん!?

誰やラブホとか言ったやつ!


「え、えーっと、目的地ってここであってる?」


「ここ以外にどこがあると言うんだ?」


確かに、冷静に考えてみると凛華が休日に行きそうな場所と言えばここぐらいしかないな。

でも、兄と一緒に来る場所かここ...?


「ここって条棟市で一番大きなスポーツセンターだよな」


「条棟総合スポーツセンターだ。全国的に知名度は大きい」


ぱっと見大きさは大型ショッピングモールと同じぐらいだ。

ただ、確か地下室まであるっていう話を聞いたことがある。


「ち、ちなみに今日はどういったスポーツを...」


「そうだな...とりあえずランニングはもう十分だな」


十分どころではない。


自宅からここまで走ってきたのだから、体感的に五キロぐらいは走った気がする。

しかも凛華のペースが最初から全く落ちていない。


途中自動販売機に寄り、俺への差し入れを買ってきてくれるほどだ。


まぁその差し入れがまさかの野菜ジュースだったため、センスは壊滅的だが。


「まずは卓球でもするか」


卓球?


俺にはあっているかもしれないが、凛華には一位二位を争うほどあっていないスポーツだ。


「ほら、さっさと中に入るぞ」


スポーツセンターの中は、私立高校の体育館の二倍ほどの大きさだ。

それが後三階まで続いている。


一階にはバスケットゴールとバレーボールのコートが設置されている。

何人か使っている人がいるが、ガチ勢ではなさそうだ。


「卓球は二階だ」


凛華に続いて二階に上がる。


二階も一階と全く同じ体育館構造だが、卓球台が数えきれないほど設置されている。

しかも何故か人が多い。

そしてほとんどが真剣な目をしている。


もしかして、卓球部には俺みたいなのが集まりやすいという偏見は本当だったのか?


「あそこの卓球台が空いているな」


ここまでくると開いている卓球台を探す方が大変だ。


凛華が見つけた卓球台はちょうど中央に当たる部分に設置されている。


そのため、自然と視線が集まる。


ラバーと卓球ボールは卓球台の上に置いてあった。


「よし、まずは私から行かせてもらう」


え、普通そこは俺に譲ってくれるんじゃないの?


まぁいいか。

俺は卓球未経験者だが、ゲームの卓球は得意だった。


少し前に流行ったオリンピックゲーム。

その中の卓球では、強さがMAXのNPC相手にボロ勝ちした。

...ちなみにオンラインは暴言厨に出会いそうで怖くてできませんでした。


だから、勝てるとは思わないが、凛華相手にもある程度善戦


………


できませんでした。


「おい、本気でやっていたか?」


完全に戦意喪失した俺にさらに追い打ちをかけてくる凛華。


「一応こっちは初心者なんで少し手加減してくれませんかね...」


「何を言っているんだ。私はこれでも全然本気を出していないぞ」


出たよ決め台詞。


てか試合する前から思っていたけど、なんで俺と凛華にこんなに視線が集まっているんだ?

隣で練習していた奴なんて凛華が最初にスマッシュを決めたときから見惚れていたぞ。


凛華のあまりのかっこよさにやられたか、男が女にコテンパンにされるという逆リョナ的展開に興奮したかの二択だな。


「本当はもう一回戦したかったが、卓球に関してはお前じゃ私に到底かなわないことが分かった。全く情けないぞ。いつかは二人で同棲するのに、そんなに運動神経が悪くてどうするんだ」


ホント、面目な...同棲?


「朝の走りでも感じていたが、まずお前には体力が足りてない。これから本格的に私の相手をすることになるのに。よし、お前の体力を少しでも伸ばすため、休憩はなしだ。

次はバスケでone on oneをするぞ」


ちょっと待って!?いろいろ同棲とか私の相手とか (意味深)いろいろと情報が多すぎて頭がこんがらがっているんですけど!?

まさか今回スポーツセンターに来たのってそういう目的があったの?


だとしたら...

ま、まぁ頑張ってみるのもいいな...//


俺は今この瞬間だけ、完全に心が凛華に寝取られていた。





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