暴露
「あのね妹さん。わたしは清人君と"二人"で登校したいの。この気持ちを汲み取ってもらえるかな?」
「貴女に私と兄が登校しようしているのを妨害されるいわれはない」
...完全に俺の考えが甘かった。
朝のギャップ萌え凛華の様子を見ていたら二人を合わせても大丈夫だと思ったのに...
「妹ちゃん。ちょっときつい言い方かもしれないけどもうそろそろ兄離れしたらどうかな」
「…どういう意味だ?」
凛華が訊き返すのはだいぶキレている証拠です。
「きみ、もう高校一年生だよね?その年で二歳年上のお兄ちゃんと一緒に登校するのは少し恥ずかしいと思うよ」
ちょっとどころかだいぶきつい言い方するね桐乃さん。
「周りにどう映ろうが私には関係ない」
「それは強がりだよね?知ってるよ。きみみたいな子って世間体とか気にするタイプでしょ。いつも清人君に”濡髪家として”が口癖で説教ばかりしてるんじゃない?」
大当たりです。
「…これ以上貴女と戯れるのは時間の無駄だ」
「それはこっちのセリフだよ。これ以上恋人との時間を潰さないでもらえるかな」
「恋人、だと…?」
とうとう言ってしまったか…
「うん、そうだよ。わたしたち付き合っているんだ。ね?」
桐乃さんが俺にそう言うように圧力をかける。
「ああ。一応桐乃さんとは付き合わせてもらってる」
まぁいつかはバレることだし、桐乃さんの口から暴露されても何も問題はないと思っていたのだが
「......」
なんか凛華が見たことない顔をしているのは気のせいですか?
表情がなくなるとは真逆で、どんどん感情が露わになっているというか。
「だからね、ここはわたしに譲ってくれないかな...?」
そんな様子を無視し、桐乃さんがさらに追い打ちをかける。
「...っ」
あ、やばい。
これ凛華が切れるパターンだな。
「あ、そろそろ登校しないとまずいな!ほら、桐乃さん、凛華!早く学校に向かうぞ!」
「え!?清人君!?」
「なっ、清人!?」
これ以上口論を長引かせてはいけないと俺の直感が警告したため、二人の手を取り強引に学校へと向かわせる。
最初は少し抵抗していた二人だが、しばらく走るともう観念したのか、俺を追い抜くかのスピードで付いてきた。
それにしてもお二人さん抵抗するときの力強すぎませんかね...?
「おい、あいつ今日は桐乃さんのほかにもう一人女子連れてるぞ」
「なに!?あの野郎二股してやがったのか!?」
「あの女の子めっちゃイケメンじゃね?俺たちよりも女子からモテそうだな」
「たしかあれって一年A組の子だったよな。名前は確か」
そんな将来独身貴族な男たちの陰口を聞きながら、俺が彼女と実の妹に二股かけているという噂が流れませんように、と願うばかりだった。
「はぁー、はぁー、はぁー、」
何とか昇降口まで走りぬくことができた。
汗だくで膝に手をついている俺とは真逆に、お二人は姿勢を崩さず、汗も見える範囲ではかいていない。
「...疲れているところ悪いが、まだ話は終わっていないぞ、清人」
心底からだが冷えるような声でそう告げる凛華。
「その話はあとにしてくれるかな。もうすぐホームルームが始まる時間だし、きみの教室は三号館でしょ?」
一年生と三年生では教室のある号館が違う。
遠回しにさっさと目の前から消えろという桐乃さんに目もくれず、凛華はただただ俺だけを凝視している。
普通にそこら辺のホラー映画よりも迫力があって怖いんですけど...
「...今日は授業が終わったらすぐに正門まで来い」
それだけ伝えると、凛華は三号館に消えて行った。
「あの妹ちゃん怖いね。清人君いつもあんな子の面倒見てるんだ」
「ま、まぁな」
どちらかというと面倒を見られてるのは俺の方なのだが。
「ねぇ、今日はわたしと裏口から帰らない?」
「え?」
「だって妹ちゃんすっごく不機嫌でしょ?そんな妹ちゃんと帰ったら清人君が何されるか分からないし、最初から正門に向かわなければいいだけだと思うんだ」
いや、だとしても家に帰ったら結局会うことになるんだし
「で、もし家に帰って問い詰められたらわたしに無理やり裏口から帰らされたって言っていいよ。そうすれば怒りの矛先はわたしに向くから」
...確かに俺が桐乃さんに無理やり裏口に連れ去られたっていうシチュエーションは現実感があるし、俺のソロ夜の営みに役立つ妄想の素材にできる。
でもさすがに桐乃さんに全て擦り付けるって言うのは気が引けるな。
「いや、いいよ。さすがに凛華の兄として桐乃さんに頼るわけにはいかない。俺が一人で正門まで行って凛華と和解してくるよ」
「...そうなんだ」
...あれ?
てっきり桐乃さんがまた俺に感心すると思ったのに、まったくそんな雰囲気じゃなくね?
なんか笑顔もいつもより不気味だし。
「あ、桐乃さん、早く教室に行かないと」
「......」
怖!?
いつもテレビでやる心霊ドラマの深夜の病院で追いかけてくる笑顔のナースさんみたいになってる!
「ほ、ほら、行こう。行きましょう!」
登校してきたときと同じように桐乃さんの手を握り教室まで向かう。
...それにしても異常に桐乃さんの手が冷たかったのは俺の勘違いですか?
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