第4話 はじめまして
朝から嬉しいことに手を引かれながらモカちゃんに連れられて教室までやってきた。
「おはよ!」
「おはようモカちゃん!…あれ?その人誰?」
「リリィねぇね!」
「お姉ちゃんいたの?」
「うん!」
平然とお姉ちゃんにさせられている…。
「あ、えっと…リリィです」
「よろしくね!」
やはり周りの天使たちは新入生が珍しいのか私の周りに集まってくる。
「ね、どこからきたの?」
「得意な魔法は?」
「好きなことは?」
「あ、ちょっとあんまり質問しないであげて!まだ慣れてないの」
「お姉ちゃんなのに?」
「なんか複雑」
「モカちゃん…ややこしくなってるよ…」
「まあいいんじゃない?」
「はい、じゃあ出席とるよ」
がらりと扉を開けて教室に先生が入ってきた。
「あ、君リリィくんだね。クラスに紛れ込んでたら自己紹介とかさせられないじゃん。はい、じゃあ前に出てきてもらいます」
私は教壇の前に呼び出された。
「あ、私の自己紹介もしておこう。君の担任のジューシィ・レインだ」
「レイン先生」
「はい、次は君の番。みんなに自己紹介だ」
「キューティ・リリィです。よろしくお願いします」
「あれ?ストロベリー・リリィじゃないの?」
「モカちゃんのお姉ちゃんってきいてたけど」
「ん?ただのルームメイトのはずだが?」
ソッコーでバレた…。
「モカちゃん…」
「私にとってはねぇねなの!」
モカちゃんは椅子から飛び上がりながら叫ぶも先生に睨まれて黙った。
「それで?リリィちゃんはどこに座る?」
「俺の隣!」
「いいや僕だ!」
「ちょっと男子!うるさいから!」
「じゃあ空いてるならあそこ。あそこな」
私は窓際の1番後ろの席に座った。
「隣は…あれ?」
「…どうかしたか?」
隣に座っていたのはなんとグレープ・ニール!ということは…この世界もう2部に突入してるんだ!
グレープ・ニールはもともとこの天使たちが戦っている敵側の存在だったんだけどあの4人と戦った後にこの学校に通うことになったんだ。
「あの…はじめまして。リリィです」
「…ニールだ」
「……」
ニールは寡黙だからなかなか話が難しい…。でもニールとは仲良くなっておきたい。なぜなら後にニールはハートと結ばれるから!ハートの近くにいるためにもその彼氏になる男とはちゃんと接点を作っておかないと!
「ニールくんは…」
「ニールでいい…」
「えっと…ニールはなんか周りと雰囲気が違うね」
「…そうか」
「うん。カッコいい感じがする」
「……ふん」
「あの…私まだ魔法とか使えなくて」
「魔法が使えない…?天使なのにか?」
「うん…」
「…そうか。お前と俺は、少し似ているのかもしれないな」
「え…?」
「話は終わりだ。静かにしていないと注意されるぞ」
ニールは含みのある言い方をして話を切った。…その秘密もきっと、あのことだろうけど…。
私が入学して最初の授業が始まる。
みんなで体育館のような広い場所に移動した。
「はい、では今日は魔力テストをしますよ」
「え~またテスト~?」
「もういいじゃんテストはー!」
「どんな時でも魔力を調整できるようにしないといけませんから」
「そうですよみなさん!敵はいつ来るかわかんないんですからっ!」
「ハートがそういうなら…」
「先生の言うこともきいてくださいな」
「あの…私、魔法使えないんですけど…」
「大丈夫。みんながテストしてる間に指導しますから」
「ありがとうございます!」
「じゃあ各々グループを組んで計測して報告してくださいね」
「はーい」
「さて、それではリリィくんにはこちらに来てもらいます」
「はい!」
「魔法の使い方だね。本当に何もわからないのよね」
「はい」
「でも魔力はあるからあとは使い方だけね」
「どうやればいいんですか?」
「まずは属性のイメージ。元素をイメージしてそれを増幅させるの」
「えっと…」
「例えば火が出したいとします。そうした場合は頭の中で燃える火をイメージするんです」
「燃える火…」
「そのイメージを保ったまま魔力を放出したい部分にこめます」
「その魔力の使い方がちょっと…」
「心臓から湧き上がってくるチカラを右手に集めるよう意識をしてみて」
「うーーん…あっ!」
何かじんわりと温かいものが胸から溢れてくる。その何かは確かに自分の意思で動かすことが出来る。
「これを…右手に…!」
「うんうん!なかなかいいよ!火を出すイメージで!放出して!」
「はぁっ!」
ぼっ!と音がして私の手から炎が出た。
「うわー!すごいすごい!」
「おめでとう!そのイメージを大事にね!」
「じゃあもう大丈夫ですね!」
「いやいや、今日はとりあえず色んなイメージを具現化して特訓してみましょう」
「はい!」
私は一通りの魔術の基礎を教わった。
「はい、みなさん測定終わりましたか?」
「はーい!」
「それでは報告してお昼にしましょうか」
「ねえねえリリィちゃん!お昼一緒にどう?」
「あ、スパーダちゃん!うん!」
「リリィねぇね、私もいい?」
「うん!」
みんなで食堂に行った。
「どう?リリィちゃん。魔術の方は」
「ほんとに使えた!びっくりしたよ!」
「じゃあ授業にも参加できそうね!」
「うん!」
「これから、一緒に頑張りましょうね!」
「よろしくねハート!」
「はい!」
「私たちもいるっての!」
「あはは、ごめんごめん。」
私たちが食べている近くにニールが1人でやってきた。
「あ、ニールさん…」
「…邪魔だったか?」
「どうだよ?学校は」
「…悪くない」
「あ、リリィは知らないと思うけどニールも最近入ったんだよ」
「魔法は使えるけどね」
「使えるなんてもんじゃないっての…」
「んー?どういうことー?」
私はわざとらしくきいてみる。
「……たまたまだ」
「ふぅん」
「…あんた、飛翔訓練の時にバレるわよ?」
「…ほっといてくれ」
「…なになに、別にいいじゃん。あ!もしかして~!」
「…斬るぞ」
「…こわ~い!」
ニールとスパーダが何かこそこそと話していた。
「どうです?ニールさんっ!私たちと一緒に食べませんか?」
「お前らと…?…いいのか?」
「もちろんです!ニールさんは仲間ですから!」
「……感謝する」
ニールは少し嬉しそうに食事を持ってきた。
「ニール、おつかれ」
「リリィ。魔術は覚えたのか?」
「うん!ばっちり!」
「…そうか」
「もしかして気にしてくれてた?」
「…ふん」
「素直じゃないねぇ~」
意外にもニールは私に目をつけてくれたようだ。
「リリィさん、ニールさんともう仲良しなんですね!」
「うん!ニールってカッコいいんだもん!」
「…な、なにを…」
「あははっ。ニール動揺してんじゃん」
「女の子慣れしてないのよ…」
「かわいいねぇ~」
「リリィねぇねも意外と満更でもない感じじゃない?」
「ひゅーひゅー!」
「…騒がしい…っ!」
「あははは!」
「ご、ごめんなさいニールさん。みんな悪気はないんです。」
「…それは…わかっている」
「よかったです…。あの!ニールさん!その…やっぱり…なんでもないです」
「…そうか」
あ…!フラグが立ち始めている…?がんばれハート!
「ねぇハート!私ニールのこともっと知りたいな!ハートたちとはいつから知り合いなの?」
「いつから…ですか…。うぅ…えっと…」
「……俺が編入して間もなくだ。あまり長い付き合いではない」
「そっかぁ」
「リリィ…お前はどうしてそんなに俺の事をきくんだ?」
「えっと…」
ハートと結ばれた時にナチュラルに関係に組み込めるように…とはいえないしなぁ…。
「仲良くなりたいから…?」
「……そんなことを言う天使がいるとはな」
「…みんなあんたのこと知らないわよ。あんたが変に周りと距離を置く必要ないってこと…」
「…ふん」
「じゃあ納得してくれた?」
「…あぁ。仲良く…という点に関しては、努力はしよう」
「ありがとう!」
どうやらニールとは仲良くなれそうだ。
その後はみんな報告結果からランクを出して解散という流れになった。私は習ったことをノートにまとめていた。
「うん!私たちはBランクになったね!」
「ごめんなさい…私はまだCランクでした…。」
「気にしないでよハート~!ハートはいざとなった時に強いんだから!」
「ありがとうございます!」
「まぁ…1番努力してるしね…」
「ダイヤさん…!」
「あ、リリィ。えっとね、魔力測定の結果はランクをつけるんだけどね。Bになれば1人前って言えるんだよ!」
「より激しい戦場に行けるようになるから昇進しないとね」
「みんなは、怖くないの?」
「あいつらが私たちの国を脅かす方が怖いよ!」
「そうそう!だからがんばるんだよ!」
「みんなすごいなぁ。私も頑張って追いついてみせるよ!」
「リリィさんと一緒に戦うの、楽しみにしてます!」
「ハートにそう言ってもらえるとがんばれるよー!」
「リリィねぇね!がんばれ!」
「モカちゃんもありがと」
「あんたはいいの…?」
スパーダが少し離れていたニールに声をかける。
「…なんで俺が…」
「あ、ニールも応援してくれるの?」
「…先に行く」
「あ、待ってよー」
ニールは去っていった。
「あいつも素直になったもんよね」
「ね、あれでも素直って言えるレベルなんだもん」
「そんなだったの?」
「あー…でも本人から聞いてよ。私たちもあんまり本人のいない所で言うべきじゃないもんね」
「偉いよスパーダ…」
「じゃあ私たちも帰ろうか」
「みんなでかーえろ!」
「おー!」
事情は知ってはいるけれど…なんとなく歯がゆい。早くみんなと打ち解けたいな。
でも今日は魔法の使い方を学んでニールとも仲良くなれた!これでハートと仲良くなりつつ天使として戦っていく計画は順調に進むぞ!
私はウキウキと胸を弾ませながら一日を終えたのだった。
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