最終話
拝啓
沈丁花の蕾が膨らみ、近づく春を感じる嬉しい季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
さて、あの時は『朝顔』を剪定してくださりありがとうございました。
華鋏さんには感謝してもしきれません。
あれから私は両親と共に暮らしています。
華鋏さんが家を去った数日後、両親が泣きながら会いにきてくれました。
2人とも子供みたいに泣きじゃくって、どっちが子供かわからないくらいでした。
でも、華鋏さんが言った通り、両親は、私を愛してくれていました。
ずっと、「ごめんなさい。ごめんなさい」といいながら、泣いて、抱きしめてくれました。
今は実家で暮らしながら、私が使っていた家は、夏でも涼しい場所なので夏場に行く別荘として使うことになりました。
家具は、あのままにしてあります。
右目に残った『朝顔』を見て両親は時々悲しそうな表情をしますが、私は今でも『朝顔』が残ってくれて嬉しいと思っています。
もしあの時、華鋏さんが来てくださらなければ、私は一生、あの場所でひとりぼっちだったでしょう。
かえるさんはいましたが、死ぬまでひとりぼっちというのは、今思っても辛いものです。
本当に、ありがとうございました。
話はかわり、実は、こうやってペンに手を取ったのには華鋏さんにご報告したいことがあったからです。
私はこの春から学校に通うことになりました。
私も出会って驚いたのですが、天泉先生も私と同じ『花』…『ルクリア』に魅入られた方で、華鋏さんに助けていただいたと聞いています。
その天泉先生が、今、『花』に魅入られた人々を中心とした学校を作り、生徒を集めているそうで、私もぜひと言われ、この間体験に行ってきました。
教室には『花』を持った10名の生徒さんがいて、みなさん私のことを快く歓迎してくださいました。
天泉先生の授業もわかりやすかったですし、正式に、春から入学することになりました。
私がこうやって日常に戻れたのは華鋏さんのおかげです。
完全に世間に馴染むのは大変ですが、私も、両親も、頑張っていこうと思います。
また、久しぶりに華鋏さんとお会いしたいです。
あの時の感謝を、またお会いして伝えさせてください。
それでは、まだまだ肌寒い日もありますので、ご自愛ください。
かしこ
2月27日
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