第3話 小さな変化
紗月はマインドフルネス瞑想クラブに通うことが日常の一部となり、少しずつではあるが、自分の中で変化を感じ始めていた。クラブの活動に参加することで、彼女の日々の不安が少しずつ軽減しているように思えた。
ある日、紗月はいつものようにクラブの部屋に足を運んだ。今日のテーマは「瞬間の気づき」だった。明海が参加者たちに向けて説明を始める。
「今日は、私たちが日常で経験するさまざまな瞬間に焦点を当ててみましょう。例えば、歩いているときの足の感触や、食べ物を味わうときの感覚など、普段は意識しない小さなことに気づく練習をします。」
紗月はその言葉に興味を持ち、瞑想が始まると、明海の指示に従いながら周りのさまざまな感覚に注意を向けた。最初は集中するのが難しかったが、徐々に周囲の音や空気の流れ、自分の体の感覚が鮮明に感じられるようになってきた。
瞑想が終わった後、紗月はいつもの学校生活に戻ったが、何かが少し違って感じられた。教室での話し声やチョークの音、窓から差し込む日差しの温もりが、以前よりもはっきりと感じられるようになっていた。
放課後、紗月は明海に感じた変化について話した。「今日は、いつもと同じ場所でも新しい発見がいっぱいありました。こんなに小さなことが、こんなに新鮮に感じるなんて不思議です。」
明海は嬉しそうに笑いながら答えた。「それがマインドフルネスの魅力の一つだよ。日常の中に新しい発見があることを知ると、生活がもっと豊かに感じられるよね。」
その日の帰り道、紗月は普段と同じ道を歩きながらも、足元のアスファルトの感触や風の匂いを新鮮に感じた。彼女の心に、日々の小さな瞬間への感謝が生まれていた。この新しい感覚が、彼女の世界を少しずつ、しかし確実に変えていくことを、紗月はじんわりと実感していた。
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