第4話 心の壁を越えて

マインドフルネス瞑想を続けるうちに、紗月は日常の小さな美しさを感じられるようになっていた。しかし、ある日の瞑想中、彼女は突然、心の中に押し込めていた過去の出来事が浮かび上がってくるのを感じた。


明海はその日、深い感情と向き合う瞑想を案内していた。「時には、私たちの心に眠っている感情が顔を出すことがあります。それは怖いことかもしれませんが、それを受け入れて見つめることで、本当の平和を得ることができます。」


紗月は、明海の言葉を胸に、自分の感じた不安や恐れに注意を向けた。彼女の心の中で、以前は考えたくなかった失敗や、辛かった経験が次々と現れた。最初はこれらの感情に圧倒されそうになったが、明海の指示に従い、ただそれらを静かに観察し続けた。


瞑想が進むにつれ、紗月は自分の心が少しずつ解放されていくのを感じた。感情に名前をつけ、それをただの「感じ」として受け入れたとき、彼女は自分の内面に平和を見つけ始めた。


瞑想が終わり、クラブの部屋の静寂の中で、紗月は深くため息をついた。彼女は明海に向かって、少し震える声で話し始めた。「今日、私は初めて、自分の心の中にある壁に向き合いました。怖かったですが、今は少し楽になった気がします。」


明海は優しく紗月の肩を抱き、「よくできたね、紗月。自分の感情と向き合うのは簡単なことではない。でも、それを乗り越えたとき、本当の意味で自由になるんだよ。」と励ました。


その日の帰り道、紗月はいつもとは違う感覚を持っていた。心の中の重たい荷物が少し軽くなったような、解放された感じだった。彼女は自分自身の成長を実感しながら、これからの瞑想にもっと積極的に取り組む決心を固めた。この新たな自己理解が、紗月にとって新しい力となっていた。

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