第2話 呼吸との対話

紗月は再びマインドフルネス瞑想クラブの部屋の前に立っていた。前回の経験が心地よい静けさをもたらしてくれたことを思い出しながら、彼女は少し期待を感じていた。扉を開けると、明海がにこやかに迎えてくれた。


「紗月さん、来てくれたね!今日は少し深く呼吸について学んでみようか。」明海の提案に、紗月は頷いた。


みんなが座る中、紗月は自分の座布団に静かに座った。部屋には穏やかな音楽が流れ、その音に合わせて深呼吸を始める。


「まずは、ゆっくりと息を吸って、お腹を膨らませてみて。そして、息を吐きながら、お腹をへこませるんだ。」明海の声がゆっくりと部屋に響き、紗月はその指示に従った。


最初は呼吸に集中するのが難しく、紗月の心はまた不安にさせる思考に飛びがちだった。しかし、明海が優しく指導を続けるうちに、紗月は自分の呼吸に集中できるようになってきた。


「呼吸に意識を向けていると、時々心が離れてしまうことがあるかもしれない。それはとても普通のことだから、心配しないで。気づいたら、またゆっくりと呼吸に戻してね。」明海の言葉が、紗月を安心させた。


しばらくすると、紗月は自分の呼吸が自然に深くなり、体がリラックスしていくのを感じ始めた。心が落ち着きを取り戻すにつれて、彼女の思考も静かになり、部屋の安らぎが彼女を包み込んだ。


瞑想の終わりに、明海はみんなに優しい声で尋ねた。「今日の瞑想はどうだった?」


紗月は少し照れながらも、心からの感想を話した。「最初は難しかったですが、途中からはすごく落ち着いて、心が軽くなるのを感じました。」


「それは素晴らしいね。呼吸は私たちの不安を和らげ、心を安定させる力を持っているんだ。」明海が微笑みながら言った。


帰り道、紗月は自分の心が少し前向きに変わり始めていることを感じていた。マインドフルネスとの出会いが、彼女に新しい自己発見の道を開いてくれていることに、心から感謝していた。

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