各章のテンポがとても良くて、文章もすっきりして読みやすかったです。不安定で脆い感じのキャラクターに強く惹かれました。特に主人公が真相を追い求めるなか、もう一組の先生と生徒を軸にした賛否の対立や「洗脳」という要素が巧みに絡められていて、すごく面白かったです。関係性自体は道徳的にアウトだけど、そのおかげでかえって魅力が増していた気がします。また、サスペンスや緊張感のある雰囲気作りも上手くて、ずっと惹きつけられっぱなしでした。
ただ、最後の真相が明かされるところは、ちょっと駆け足だったのが惜しいなぁと。でも、全体的にはすごく楽しめました。
特に良かったのは、作者が主観的で制限された視点をうまく使って、情報を意図的に曖昧にしたところです。そのせいで主人公の印象に引っ張られて、まるで作者に「洗脳」されちゃった気分になりました(笑)。ラストの余韻を残した終わり方も、とても味わい深かったです。