序章 第四話 伽藍堂に衝撃を
「いかがですか、司教総代理殿。今年の生徒の様子は」
競技場の観客席とは別に、2階部分には許可を許された者しか入れない特別な部屋が一室設けられている。
そこからは競技場の舞台が一望でき、今このときも行われている実技試験を優雅に見守る者が数名いた。
「いやはや、若者の成長は本当に早いものですね。前回の実技試験から一年、皆さん見違えるような成長を遂げられている。
中でも、オランジェ君は抜きん出ている。秘めたる才能をここまで物にするとは。流石、聖国一の魔術学院とも呼ばれる橄欖礼院ですな、ラーデン殿」
聖炬火教会司教総代理。表面上で言えば、聖国に三つある聖都の本教会の管理者という聖職であり、修道教会の実質のNo.3である。
「魔術学院ですか、近年は騎士団さんからの勧誘も頻繁で魔術より剣術を学ばれる生徒もいますよ。私としては、若者の歩む道が広がればそれはそれで嬉しいですからね」
端の方を見やると、黒髪の中年の男が苦笑している。
「それはそうと、聖火騎士のお二人にはこのような
「とんでもない。恥ずかしながら私は
聖国が誇る厳格な騎士団の部隊長とは思えないほど物腰が軽い。
二十年以上もの間、騎士団で活躍する『最善の騎士』。主力部隊の一つを任され、その指導力と他人の才能を見出す慧眼から、多くの優秀な騎士を育てている。異なる部隊である団員になっても彼を慕っている者は多く、まさに組織の精神的支柱となる人物である。
「それはまぁ、今度よければ授業を見学や剣術講師ににいらしてくださいな。生徒達や教師にも良い刺激になりますから」
「ハハハ!機会があれば是非に」
「ほぅ、騎士部隊長殿が見学されるとは、まさに学院の誉れとなりましょう。
どうですか、そちらの御仁もよければお座りになって、舞台を見学されては?」
司教総代理の呼びかけに、客室の奥に佇んでいた男は競技場の方を一瞥したが、すぐに興味が無さそうにそっぽを向いてしまった。
「…うちのがとんだご無礼を。口を効かないのは私が命じた事で、奴の態度の責任は全て自分が取りますので、何卒ご容赦を」
「ほっほっほ、構いませんよ。ルチル卿の功績は私をはじめ修道教会にも届いておりますから」
「ハハハ、そんな恐れ多」
そんなやり取りを他所に、後ろの男が遮るようにため息をした。
「そもそも、俺は用はなかったんですけどね。
開口一番に聞いたその毒舌に、老練の指導者二人は呆気に取られてしまった。
その様子を見て、アルマンディンは目眩のするような気さえした。
「口が過ぎるぞ、ルチル。少しは立場を弁えろ」
「はいはい」
まるで、悪びれる様子がない。
「これは、なんといいますか…強烈ですな」
「大変失礼致しました。黙っていたら、まともなんですがね…どうも前職の影響が大きいようで。
私の後任として資質はあるんですが、
三人で何とも言えない雰囲気になってしまった。
とりあえず、話題を戻すようにして舞台の方を見る。
先ほどの魔術で壊れた舞台が直ったようで、ようやく試験が再開する。
すると、早速一人の生徒が階段から上がってきた。他の生徒とは違って、黒を基調とした制服を着ており、眼帯と右手に手袋をつけた怪しい雰囲気のする少年だ。
「おや、彼も学院の生徒ですか?見たところ修道教会の制服を着ているようですが」
「彼も歴とした我が校の生徒ですよ。一から説明すると長いですが、"あの"アレキサンドラ修道士の推薦で特例編入した生徒なんですよ」
その名前を聞いた瞬間、先ほどまで穏やかな表情をしていたアルマンディンは明らかな難色を示した。
「部隊長殿には、多少の縁ある方でしたか」
「まぁ、昔の話ですよ。しかし、
いつかの日を思い出すように、その人が送り出した少年を見る。その出立ちはどうにも普通の学院の生徒には思えなかった。
そして、それに興味を示したのはアルマルディンを含めてもう一人いた。先ほどまで微塵も興味を示さなかった優男が、舞台に立つ少年にその目が向けられた。
「おや、ルチル卿もアレキサンドラ修道士をご存知ですか?」
「いや、そちらについては知りませんが、あの小僧は本当にここの生徒で間違いないんですかね」
妙な言い回しに疑問を持つが、彼の表情が先ほどと明らかに異なっていることを察した。
「ええ、間違いありませんよ」
「…そうですか。それならいいんですがね」
その目は、まるで家の敷地に入った害獣をみるような、殺意の籠った鋭い視線であった。
◇
観客席からか、刺すような視線を感じたが、気のせいだったか。
それとも、この空気感に当てられて過敏になっているだけか。
オランジェが使った魔術によって粉々になった舞台の一部が、元の綺麗な状態に戻っていた。あの魔術はとてもじゃないが、自分も含めてそこら辺の魔術師では決して真似することが出来ないと、改めて彼女の実力と才能に感服した。今まで"色々な場面"で魔術師は見てきたが、彼女ほど才能に富んだ人物はいなかった。
橄欖礼院は騎士団にも人材を排出しているが、魔術に傾倒している節がある。これは学院長が至高の魔術師というのもあるが、魔術は教会やそれに属する貴族派閥にとって、権威の象徴とも言えるからだ。
自分が思うに、今回の試験については不合格にならない限りはそこまで評価は変わらない。
どれだけ工夫した魔術を扱おうとも、件の許可証がない限り下級魔術以上を扱うことができない。そのため、習得した魔術に追加の評価点が入ることはない思われる。
(そんな、自分に出来ることは一つだけだ)
担当する試験官に魔術許可証の件が伝えられる。
「それではこれより、セロシアの魔術試験を開始する。また、彼は事前に提出する必要のある特別許可証がない為、下級魔術以上の魔術の行使を認めないものとする」
観客席から嘲笑や心無い言葉が飛んでくるが、この集中状態の耳には、全く入ってこない。
「はじめ!」
掛け声とともに、土塊造兵に猛疾走する。
目にも止まらぬ速さでその懐に接近するが、造兵に付与された防御機能で近づいた生体を迎撃する。
瞬間、棒立ちだった巨体が大きく腕を引き、拳を前へと突き出す。突き出された正拳を身を翻して躱す、凄まじい轟音と強風が襲う。
当たったらタダでは済まない。
この速度とパワーは試験対象者の動きに比例して出力が変化する仕組みになっており、これだけ素早く近づけばその迎撃速度も早くなる。
懐に潜り込み、杖を構える。
狙うは核が埋め込まれている胴体、手始めに一発魔術を撃ち込む。
『疾風よ、立ち塞がる障壁を吹き飛ばせ!
【
衝撃波によって胴体の外装が軋むが、破壊には至らない様だが、魔術が霧散しないところを考えると、懸念点の一つであった魔除石が無いことが確認できた。
(魔術が通る、それなら!)
さらに魔術を撃ち込む、ただし今度は一度ではなく一気に削り取るために重ねて魔術式を発動する。
『【
直後、三重の衝撃波が放たれる。狙った先の胴体は連続した衝撃によって、徐々に亀裂が入り始めた。
魔術式の詠唱破棄により威力は弱まるが、三重にすることでそれを補填する。
また、魔術を撃ち出そうとしていたところを大きな剛腕がそれを阻む。
薙ぎ払いを風衝撃の反動も使って、後ろへ飛ぶ。
そして、再度懐に飛び込み、風衝撃を連続して撃ち込む。
有難いことにこの個体は主に岩石部分が多く、連続した技であれば壊せる。そして、一振りの重みは凄まじいが、単純な動きで避けることは容易いだ。
(なら…これでどうだ!)
造兵の周りを縦横無尽に駆け回る。
頭上を飛び越えて、隙を見て懐に魔術を撃ち、また下がっては、加速して距離を詰める。
縦に勢いよく振り下ろされた拳が地面へと激突した。
すると、土埃からガツンッと何かが砕ける音がした。対象を追って振り回された左手が、その加速と急制動に対応できず、勢い余って地面に衝突し手の部分が折れた。
(この瞬間を、待っていた)
『吹き荒ぶ風よ、塵芥を纏て巻き起これ!【
砕けた岩の手を風を纏わせて浮かす。
長時間浮かすことはできないが、多重に掛ける魔術によってこの岩は弾丸にする。
『荒ぶる旋風よ、砂塵を纏て吹き荒れろ!【
風纏は物を浮かすだけの魔術、となれば次に撃ち出すための魔術を行使する。
前方に竜巻を発生させて、間にある岩の弾丸を回転を加えて勢いよく飛ばす。
ガガガンッ!と鈍く金属音がなる。
造兵の防御機能は実体のある物に作用するが、それが自らの一部であったなら対象にならないようだ。
岩の弾丸は胴体に見事に着弾し、明らかな損傷を与えた。
ぶつかった岩が崩れ落ちると、亀裂から外装とは異なる材質の塊が見えた。
(…核だ!)
この気を逃すまいと、造兵に飛び込む。露出した核に狙いを定め、その一点に向かって魔術を連発する。
外装にぶつかった時とは明らかに違う手応えを感じる。
胴体へ衝撃が広がり、段々と外装が剥がれていくが、肝心の核には微かなヒビが入っても砕くことができない。やはりこの素材は岩よりも硬い鉄のような強度、今の魔術の威力では核を時間内に壊すことができない。
(もう少し接近するか、しかし)
いまだ造兵の防御機能は稼働している。避けながら撃っている状態では、時間も足りなければ威力も足りない。
しかし、これ以上の距離を詰めれば、反撃される確率も上がる。そして何より、連発する風衝撃の反動で杖が限界を迎え始めていた。
元々、杖で魔術を扱うのは中遠距離が基本で、こんな至近距離で魔術を使えば、杖にも負担がかかってくる。
(どうする…、ッ!?)
その一瞬の思考の乱れが、わずかに再生していた左腕の存在、その振り払いへの反応を遅らせた。
咄嗟に後ろへと回避するが、剛腕に激突する。
両腕で防御するが、宙に浮いた状態では踏ん張りが効かないため、舞台の端まで吹き飛ばされる。
「…っくそ!」
体勢を立て直し、受け身を取る。
観客席から驚きや悲鳴にも似た声がする。
側から見れば、身体が木っ端微塵になっても可笑しくないだろう。
試験官も唖然といった様子だった。
「セ、セロシア君、大丈夫なのか!?」
1人の試験官が顔面を蒼白にしていた。
色々と大丈夫ではないが、体は問題なかった。
「心配いりません、試験を続けさせてください」
その言葉を聞いた試験官は呆然としていたが、何も言わなそうだったので了承と受け取った。
残り時間が差し掛かる。
焦りが思考を鈍らせていた。また、接近して同じように魔術を連発しても核は壊さない。
これ以上の威力を求めるのであれば、核に直接魔力を撃ち込むしかない。
(出来なくはないが、それをすれば"これ"が…)
手に握った杖を見る、先ほどのやり合いでも十分に損傷してしまった。このボロボロになったものを返したところであの人はどう思うだろうか。
その僅かな善意が、今の自分に必要な目的意識を灰色に濁らせる。
「セロさん!やってください!!」
しかし、その一瞬の間を、誰が察知したのか。
聞き覚えのあるその声で、我に帰った。
瞬間、駆け出したその脚は、音を置き去りにし、造兵の懐へと一瞬にして詰め寄った。防衛機能が発動するまでの時間およそ2、3秒、その刹那で決まる。
杖を僅かにヒビの入った核へと突き刺す。超至近距離から風衝撃を叩き込むが、そのままではただヒビを大きくするだけで破壊には至らない。
(だから…!)
両脚で体全体を支え、上半身をどっしりと構える。
右腕は引き鉄に指をかけるように、そして、その拳を固める。
今まで静かに抑えていた魔力の流れを、構えた拳に集中させる。
拳に纏った魔力は、杖を伝って核へと魔力を届かせる。そして、この土塊の核を砕く渾身の一撃を放つ。
これぞ、【
精密な魔力操作で、拳に魔力を込めて瞬発的な強化を施す技術。詠唱魔術などが現代の魔術というのであれば、これは原始的で感覚的な魔術だろう。
「いい加減に砕けろ!」
『【
拳が核に衝突した瞬間、音が拳に収束したような静けさから、轟音と共に土塊造兵はその巨体を勢いのまま吹き飛ばされた。舞台の端側にある壁に激突し、その胴体は完全に粉々になった。
その光景を目の当たりにした会場は静寂に包まれ、誰の許しも得ずにどよめき出した。
「何が起きたの?!」「本当にあいつがやったのか…?」
何が起きたのか、生徒たちや恐らく試験官にすら理解ができていないだろう。
「せ、静粛に!
試験官は至急こちらに集まってください!」
試験官らが舞台上に集まる。
魔術の痕跡と、土塊造兵の状態を確認しているようだ。吹き飛ばされた造兵の胴体は見事に粉々になってその体を支えることができていない。
そして、肝心の核も跡形もなく粉々になっている。
「インチキに決まってる!何か卑怯な手を使ったんだ!」
観客席から心の無い野次が飛びかう。
見慣れない人間にとっては、拳で殴って壊したように見えるのか。それにしては、吹き飛び過ぎだとも思う。
試験官も今し方見たものに対して、どう評価していいか分からないようだった。
(まずいな。この空気に飲まれてしまうと失格も有りえる)
試験官たちは舞台を確認した後、しきりにこちらを見てきた。何かしらの理由をつけて、不合格にしそうな空気を感じた。
「皆、静粛に!」
すると、試験官の下に一際目立つローブを羽織った小太りの男がやってきた。
この男には、それは見覚えがあった。
魔術教師の一人、そして魔術試験統括試験官ダグラス・フォン・アジュール。聖炬火教会の貴族派閥の一つアジュール家の人間だ。
見るからに偉そうな人物だが、実際の腕は確からしい。以前あった学術試験の内容や今回の魔術試験の土塊造兵を作成したのもこの人という話だ。
そんな人がわざわざ直接きた理由に、試験前のあの件がチラついた。
(まさか、この人が…)
そんな疑惑の目など意に返さず、試験官らは話を進めていた。
「ダグラス統括試験官、今回のセロシア君の件ですが流石に合格という訳にはいかないのでは。
許可証も忘れ、試験中に杖も破壊するなど前代未聞ではありませんか」
改めてダグラスは舞台上を見まわした。
そして、呆れた様子でいた。
「最初の許可証の件も聞いておりますが、彼は下級魔術で十分という余裕から提出していないだけではないですかな。
現に、先ほどの試験を見た限り下級魔術以上を使っていた様子もないようだ。
なんの間違いが?」
まさか、擁護してくれるとは意外だった。
その堂々とした姿勢に感服する。
「それに、杖に関しても特に問題はないでしょう。今まで試験中に魔力枯渇など体調不良になる生徒がいるように、彼の杖も時間限界まで酷使した為、あの様な結果になった。詠唱破棄の連続の魔術行使に関しても実に無駄がなく良い判断だった」
「つ、杖が壊れたのは彼が核を殴ったからでは…」
「…君は私の土塊造兵が素手で破壊されたと言いたいのかね?」
なるほど。
彼の言い分がなんとなく分かった。つまり、自分の作った魔術が素手で負かされたと思われるのが嫌で魔術の評価をしにきたのか。
確かに、あの様子では状況を的確に説明するのは難しい。
試験官達はバツの悪そうな顔でまた協議し始めた。そして、
「えー、ただいまの試験。セロシア君の魔術によって核の破壊を確認!結果、合格です!」
どこからか歓声が聞こえた。
試験結果に安堵する、一時はどうなるものかと焦ったが何とか合格できた。
舞台を降りる前に、ダグラス統括試験官にお礼だけ伝えておこうと挨拶しに近づく。
「ダグラス先生、先程はありが」
「勘違いしないでくれたまえ。私は統括試験官として公平な判定を下したまでだ。
そして、何より"私の土塊造兵は素手でなど倒されていない"のだ。君がいくら筋肉を鍛えようが、これは魔術試験だ。あれは魔術の結果だ」
遮られてしまった。
何より、他の試験管より不合格にしたかったであろうそのくらいの私怨が言葉の節々に込められていた。
とりあえず、一礼して退散した。
観客席に戻る直前、一人の生徒とすれ違う。
その黒い髪の男子生徒はこちらを鋭い眼光で一瞥するやいなや舞台へと向かっていった。
席に戻ると、見知った顔がいた。
とても嬉しそうにして迎えてくれたが、若干後ろめたさを感じてしまう。
「セロさん、お疲れ様です!
先ほどの試験お見事でした!あの造兵を一撃で壊すだなんて凄いです!」
「一撃なんて大袈裟な…、それにオランジェさんに比べたら自分なんて大したものではないですよ。それに借りていた杖を壊してしまい申し訳ありません」
「いいんですよ、杖も本望ですよ」
とても嬉しそうだ。
何故なのか、ちょっと理解が追いつかない。
「それに、試験とはいえ杖があると面倒でなかったですか?」
少し引っかかる言い方をしてきた。
「…どういう意味ですか?」
「え?だって、セロさんであれば杖が無ければ"一瞬で壊せる"じゃないですか」
その言葉に、驚いてしまった。
この人はそこまで見えていたのかと感心した。
試験官の目を誤魔化すために、拳打の瞬間を分かりにくくしたつもりだったのだが。
「実は…以前、セロさんが同じようなことをするのを見たことがありまして、その時の様子から本気でやったらどれだけ凄いのだろうと想像していたんです」
「なるほど…それで」
どこで見られたか、おそらく旧校舎裏だと思うが迂闊だった。視線を感じた時はあったが、頻繁でなかったし特に生活に支障がなかったから杞憂だと思っていたのだが。
「も、もちろん他言していませんよ!
私だけの秘密なんですから!!」
「オランジェさん、声が大きいです…」
この人は意外にズレているのかもしれない。
この様子であれば、"猫"との話は聞かれていなさそうだと安心した。
「そういえば、次は…」
その言葉を遮るように会場が沸き立った。
舞台上に上がる一人の生徒、黒い髪に鋭い眼をしたおよそ生徒には感じない風格をしている。
「レナード・フォン・セーブル、お願いします」
その声がけを合図に、土塊造兵が召喚される。
見たところ、自分が破壊したものより頑丈そうで胴体や上半身に黒鉄が使用されているようだ。
レナードが杖を構える。
そして、ただ一言。
『【
見えない波動が放たれる。
起動した造兵はその図体を動かしていたが、突如その動きが止まってしまった。
観客席がまたしても騒つく。
舞台上では動かなくなった造兵を試験官が確認しに動いている。
「あれは、分解魔術…?でも造兵には何の影響もないように見えますが」
「いや、あれは直接的な魔術ではない気がします。恐らく、核に刻まれた魔術式そのものを分解したんだと思いま…す…」
そのやり取りをした途端、二人で顔を見合わせる。この学院で分解魔術を会得することはそこまで難しくはないが、それを試験で使った。
試験の内容的には合格ではあるが、オランジェほどの追加の評価点は入らないだろう。それなのに使った理由、それは。
「魔力核の停止を確認!合格とする!」
観客席が盛り上がる。
まるで、何事もなかったかのようにレナードは舞台から去ろうとした。
そして、舞台を降りる前でこちらを一瞥した。
「まさか…」
「…」
その視線は、すれ違った時のとは全く異なり、とても生き生きとした殺意を含んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます