第23話 隠し子騒動②
目を覚ますと、まだ魔王様の両腕にしっかりと抱きしめられていた。
首を回して時刻を確認すると、驚いたことにもうお昼前ではないか。
「魔王様、そろそろ起きてください」
慌てて魔王様の頬に触れると、長いまつ毛が揺れ、すうっと目を開けた魔王様が「おはよう、パール」と言って美しい顔で笑った。
思わず見惚れているところへ、ドアがガチャ、バン!と大きな音を立てて開き、メフィスト様が入ってきたかと思うと、
「おはようございますパール様。ご無礼をお許しください」
と言いながら魔王様をベッドから引きずり下ろし、パジャマを引っぺがして着替えさせて、連れて行ってしまった。
魔王様は去り際に「パールはゆっくりしてから帰るといいぞ」と言いながらメフィスト様に引きずられていった。
どうしよう、こんな時間までぐっすりだったなんて、魔王様のお仕事に支障が出ないようにもっと早く起きないといけなかったのに、わたしったら……。
ついさきほどまで傍らにあったぬくもりが消えて、途端に寂しくなった。
起き上がって魔王様の寝室をよく見回すと、先代の魔王様・王妃様と共に親子で並んでいる肖像画があった。
魔王様は、王妃様にそっくりなのね。
その隣にある小さな肖像画は、メフィスト様に小さな男の子が手を引かれている絵だった。
メフィスト様の容姿は今とまったくかわらない。
この男の子はもしかすると、幼い頃の魔王様だろうか?
「ひゃ~っ、かわいいっ!」
思わず声が出る。
しかし、ひとりで勝手に魔王様の寝室をあちこち見て回るのは不躾だと気づいて慌てて退室した。
そのままプールに直行する。
昨晩、魔王様が翼を広げたときに舞い散った羽が1か所にまとめて置かれていた。
誰がしてくれたんだろう。メフィスト様? それともこのプールにも掃除係の下女がいるのかしら。
せめてここは、わたしが毎朝掃除しよう。
これからはそうすると、後で魔王様に伝えようと思った。
大量の羽を花嫁候補の応接室に持ち帰ると、即座にそれに気づいたミーナが「にゃ~~っ!」と叫んで飛びついてきた。
「昨日の朝からずっと戻ってこにゃいと思ったらパールちゃん! 魔王様の羽集めにいそしんでいたのにゃ?」
ミーナは大きな目を爛々と光らせながらわたしが胸に抱えている黒い羽をっじ~っと見つめている。
「あ、何本かいる?」
「にゃ~っ! パールちゃん、ありがとにゃ~っ! 遠慮なくいただきますにゃ」
飛びついてくるミーナに羽を5本渡した。
部屋に戻るとさらに羽を5本取り分けて、残りは封筒に詰めた。
封筒はさっそくまたお姉さま宛にコウモリ郵便で送ろう。
取り分けた5本は半魚人さんにと思って、部屋を出て廊下を歩き始めたところだった。
執務室から出てくる魔王様とメフィスト様が見えて……えぇぇぇっ!
魔王様が手慣れたご様子で赤ちゃんを抱っこしている。
赤ちゃんのほうも慣れた様子で魔王様におとなしく抱かれていた。
その赤ちゃんの顔は、髪の色こそ銀髪であるものの、魔王様に瓜二つだったのだ。
お姉さま、魔王様は独身ではなかったのでしょうか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます