第21話 夜伽の真実⑥
サッキーが言っていた
「魔王様がたくさんためてたから処理するのに明け方までかかった」って、
ミーナが言っていた
「明け方までキャッキャうふふで楽しかった」って、
フローラが言っていた
「月が見えなくなるまでずっと」って、
そういうことだったの!?
そして、水が必要なわたしにはプールを造ってくれたってことなのよね?
勝手にヘンな妄想をしていたわたしは、何てはしたないんだろうか。
いつも、ほかの花嫁候補の話をよく聞かないままその場を離れていたせいよね……。
もう恥ずかしすぎる!
でも? なんで魔王様は、わたしに何度も優しくキスしてくるの?
だから、どうしてわたしにはキスするのかと聞いたら、魔王様はイジワルそうに笑って言ったのだ。
「して欲しそうだったから」と。
どうしよう、やっぱりわたしのほうが魔王様を誘うような態度をとっていたのね。
魔王様は、恥ずかしくてうつむくわたしのあごをすくい上げて、再びちゅっと唇を重ねると、「このあと、どうしたい?」と低い声でささやくように聞いてきた。
わたしが二本足をプールから上げると、それも魔王様が優しく拭いてくれる。
「魔王様は昼間はお仕事で、夜はわたしたちの相手をしてお疲れです」
魔王様をまっすぐ見つめる。
「寝不足だと思いますから、わたしとの夜伽のときは一緒に寝ましょう。とっておきの子守唄を歌って差し上げます」
あなたの心臓をください! なんて、こんな雰囲気ではとても言えないし、かといって男女のそういうことをするのも抵抗がある。
だったらせめて、ぐっすり気持ちよく寝てもらおうと思いついた。
魔王様はちょっと困ったような顔で笑うと、わかったと言ってわたしを横抱きに持ち上げた。
「いえ、あの……わたし歩けますから」
「ほかに何か俺に望むことがあるんだろう? いつも何か言いたそうな顔をしてるのにパールが言わないから、下ろしてやらない」
バレてる。
でも言えません……。
どうしたらいいの?
お姫様抱っこのまま魔王様の寝室へ行き、ベッドに下ろされた。
そして、魔王様はわたしの隣に寝そべると、わたしのことをぎゅっと抱きしめる。
「そんな泣きそうな顔をするな。その気になったら話してくれればいい。パールの望みなら何でもきいてやる」
わたしは小さく頷くことしかできない。
「子守唄を歌ってくれるんじゃなかったのか」
そう言われて、わたしは気持ちを切り替えた。
プールを造ってくれたお礼にぐっすり休んでもらおう。
わたしは魔王様から離れて体を起こすと、魔王様に膝枕をしてそっと歌い始めた。
幼い頃にわたしもお姉さまたちに歌ってもらっていた、とっておきの子守唄を。
「さすがは歌姫セイレーンだな……」
魔王様は気持ちよさそうに目を閉じたままそれだけ言うと、徐々にウトウトし始めたようで呼吸が規則正しくなっていく。
歌い終わるころにはすっかり眠っているようだったから、その頭をそっと下ろした。
起こさないようにベッドから出ようとしたのに、魔王様の目が開いてしまった。
「一緒に寝るのだろう?」
魔王様は手を伸ばしてわたしを引き寄せ、ぎゅーっと抱きしめると、わたしの額にちゅっとキスを落とす。
そして満足げに笑って今度こそ眠りについた。
魔王様に腕を回されたままで、なかなかドキドキがおさまらない。
でも胸のぬくもりが心地よくて、いつの間にかわたしも眠っていた。
お姉さま、パールは頑張ってせっせと魔王様の羽を送ります。それでどうにかならないでしょうか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます