第17話 夜伽の真実②
故郷に持って帰ろうと思った魔王様の羽は、一筆添えてコウモリ郵便で送ることにした。
きっとわたしが直接届けに行くよりも、郵便を利用したほうがうんと早く届くだろう。
はじめて魔王様と口づけを交わしたあの日、わたしが熱を出していたせいかもしれないけれど、魔王様の唇はとても冷たかった。
でも今朝、プールで重ねたあの唇は、冷たい水に浸かっていたにもかかわらず熱を帯びていて……。
思い出すたびに体が火照るような感覚に襲われて戸惑ってしまう。
わたしは、昨晩夜伽に呼んでもらえなかった不満を口にして、魔王様は「続きはまた今宵」と言った。
それではまるで、わたしから誘ったみたいじゃないか!
いや、誘ったんだよね……あれは完全にわたしが誘ったのよね!?
ああ、はしたないことをしてしまった。
両手で顔を覆う。
体の火照りがどうにも治まらず、わたしはこの日の日中をずっと水の中で過ごした。
まさか、わたしのために造ってくれたプールだったなんて。
うれしくてうれしくて、泳いでは岩に座って歌い、また泳いでを繰り返した。
「パール様、こちらにおられましたか」
ヒツジさんが、やっと見つけたと言わんばかりのしかめっ面をしてみせた。
「ごめんなさい、水が心地よくて……」
ヒツジさんの横長の瞳孔がくるりと回り、表情が柔らかくなった。
「お元気なご様子で何よりです。パール様、今宵、魔王様の寝室へお越しください」
「はい、かしこまりましたっ!」
思わず元気よく答えると、ヒツジさんがフフッと笑った。
そしてそれをごまかすかのように小さく咳払いし、一礼して退室した。
昨日は、順番でいくと当然自分が呼ばれるだろうと思っていた。
それなのにサッキーが呼ばれて、『当然わたしの順番』という考えがとんだ思い上がりだったと思い知らされた。
夜伽の相手を誰にするのか…その決定権は当然、魔王様が握っていて、彼の一存でそれをどう決めてもいいのだから。
あふれる涙で体の水分が全部なくなってカラカラになってしまうんじゃないかというぐらいに昨晩は泣き続けて、気付いてしまった。
わたしは、魔王様のことが好きなんだって。
夜伽に呼んで欲しかったんだって。
お姉さま、どうしましょう。パールは今夜、ついに魔王様と……!?
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