第10話 水棲魔族用プール④
「ねえ半魚人さん、半魚人さんたちが住んでいる海辺の岩場も汚染が進んでいるんじゃないの?」
「そうだなあ。里帰りするたんびにヒドイもんよ」
たくさん泳ぎ回ってリフレッシュした後、ワンピースを着て足を二本足に戻した。
半魚人さんにお願いして花嫁候補の部屋まで送ってもらう。
ところが、わたしの歩みがあまりにも遅いため、たまりかねた半魚人さんが水馬のケルピーさんを呼んできてくれて、わたしはそのケルピーさんの背中に乗せてもらっての移動となった。
なんだか、いろいろすみません……。
自分が情けなくなってくる。
その道中で、半魚人さんたちの棲み処は大丈夫なのかと尋ねたら、ひどいものだという答えが返ってきたのだ。
「それはどうやって浄化しているの? やっぱり魔王様の体の一部?」
「うん。魔王様の羽を使わせてもらうことが多いな。本当はもっと……ツノとか手に入れられればいいんだけどよお、なかなか無理だわなー」
魔王様の羽!?
そうか、とりあえず羽なら簡単に入手できる……かも?
「羽って、拾うんですか?」
「いや、売店に売ってる」
えぇぇぇぇっ! 売ってる!?
まさかの「売店ゲット」に驚いてケルピーさんから落ちそうになった。
「大っぴらに店頭に並んでるわけじゃなくってよう、『例のモノありますか』って聞くと裏から出してくれるんだよ」
半魚人さんが詳しく説明してくれる。
「ただ最近は品切れ中のことが多くて、ツノだけじゃなく羽までレアアイテムになりつつあるところがちょっとなー。まあ、先代の魔王様に比べて坊ちゃんはまだ若くて翼が小さいから仕方ねーかと思ってる」
なるほど、そっか。
みんな同じことを考えているわけだ。
ニンゲンによる環境破壊で浸食されているのは、何も海に限ったことではないのだもの。
「ねえ、それじゃあ、魔王様が売店に自分の羽を提供しているってこと?」
「さあな、そこまでは知らねーが、コッソリ売ってるってことは知らねえんじゃねえかな。誰かが拾って売店に横流ししてるんだろ」
たしかに誰がどう入手しているのかは二の次だ。
半魚人さんが二カッと笑う。
「俺も拾いてーわ。嬢ちゃんは花嫁候補なんだろう? その立場なら、じゃんじゃか拾えるんじゃねえか? たくさん拾えたら俺にも分けてくれよな」
その通りだわ。
花嫁候補の立場を最大限利用しなくては!
「うん、約束する。半魚人さん、いろいろ教えてくれてありがとう!」
関係者以外立ち入り禁止のゾーンまで送ってもらうと、半魚人さんとケルピーさんにお礼を言ってお別れした。
「パールさん、どういうことなのぉ?」
「ズルいですにゃ、魔王様とどこに行って何をしていたんですのにゃ?」
「お姫様抱っこされていましたね、うふふっ」
花嫁候補の応接室に入ると案の定、質問攻めにあってしまい、タジタジになった。
足先が魚に戻ってしまって歩けなくなったから、プールまで運んでもらっただけだと言っても、ジト目で見つめられて困ってしまう。
わたしは魔王様の花嫁になんかなる気はないから安心して!って言えればラクなんだろうけど、それが魔王様にバレたら魔王城から叩き出されてしまうかもしれないし。
そうでなくても、なぜか魔王様を不機嫌にさせてしまったようだし?
はあっ、前途多難だわ。頑張ろう。
お姉さま、魔王様の羽は魔王城の売店で買えるらしいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます