第10話 蒼穹の列車
「で涼よ能力は何級なんだ?」
俊堂が、6人全員席に着いた時に聞いてきた。
列車は既に動き始めていた。
「私はA級だけどよ、どうもA級じゃ無い雰囲気があるんだよね」
そう言うのは【観察者】を持つ蒼が言った。
「……やっぱり」
【創造者】を持つ宗淵も同意した。
「宗淵とアタシは魔眼を持ってるからね。明らかな格上…それこそ英雄や伝説級の人以外は、ある程度分かるんだ。それでも月乃の能力は分からなすぎるんだよね」
「……まるでS級の能力を2つ持ってるみたい」
「そうそうそんな感じ」
百里兄妹が揃いも揃って同じ感想を言った。
また、
ちなみに魔眼とは、極稀に生まれつきのものとして、発現するものである。
効果は、対象の大まかな能力等級がわかるが、精度はお世辞にも良いものではなく、わざわざ入手するほどでもないもの、と社会一般的な常識であった。
「それに剣も、かなり使い込んでるだろ?」
【剣火動乱者】を持つ火龍が月乃 涼の剣……獅子刀を見て感嘆した。
「俺は…何にも感じないけど只者では無いのはわかるぞ〜」
俊堂が再度口を開いた。
「で、どんな能力だ?」
俊堂は、S級の【決闘人】を持っているため剣系は、ほぼ負けない。
全員の視線が月乃 涼に集まる。
偽装者では、全員嘘や騙そうなどの意思もない。
スパイでも無さそうである。
僕は無言で立ち上がり、ドアを再度確認して鍵を念入りにチェックするの同時に盗聴や盗撮をされていないかを、偽装者を最大出力で確認した。
周りのコンパートメントには、談笑している生徒たちが確認できた。
「……周りは大丈夫そうだな」
「……涼、なんでそんなに過剰に周りを警戒するの?」
宗淵が聞いてきた。
「答えはこうだ。」
僕は、月乃 涼の状態から卯月 涼の顔に戻した。
「うんざりするほど、見慣れた顔だろ?」
「「「「「・・・・・・・・・・え」」」」」
「さっきまであんなに騒いでいたのに、いきなり静かになったな」
「ちょっと待てーい」
宗淵がいつもの寡黙を捨て、盛大に突っ込みを入れている。
宗淵以外は、まだ口を開けていて、現実を認識できていないようだ。
僕は、すでに月乃の姿に戻っており、水を飲もうとしていた。
「色々と聞きたいだろう?僕は君たちを信頼してる、だから本当の姿を見せた。でも能力上君たちに偽装系は通用しなくなっちゃたな。」
「月乃…でいいのか?それとも卯月のほうがいいのか?」
俊堂が聞いてきた、皆もようやく我に返りつつある。
「月乃のほうが嬉しいかな~この人格作るの結構苦労したんだからな」
「でなんで顔を見せたのよ」
蒼が問いてきた
「その理由はいたって簡単、卯月 涼の能力は知ってるか?」
全員が首を横に振った。
「
僕は小声で言った。
「僕の能力は、【偽装者】と【銃撃者】の二つあるんだよ、厳密に言えば3つだが、無いのに等しいからここでは省く」
「僕自身…月之涼を構成するのは、卯月涼の肉体のみで、外見は【偽装者】で恒常的に、発動しているよ。魔眼も雰囲気にも、曇りが掛かったのだろうな」
「なるほどね」
百里兄妹が納得した顔をしていた。
「他に聞きたい事はあるかな?勿論今まで通り、月乃涼として関わってくれよ。こう見えて僕も君たちと同い年なんだから」
「あぁ勿論だ、月乃!お前の正体がなんであろうと俺たちはお前の友人だ」
「……ありがとう」
3年前の友人は、古今東西の手が回ってると見て連絡先を消してしまったため、3年間友人が居なかった僕は、今この瞬間は世界で1番の幸せ者だっただろう。
「……やっぱり政府の言ってる事は真反対?」
寡黙を取り戻した宗淵が聞いてきた。
「ここ最近の事情は分からんから、何を言ってるのかを教えて欲しいな、なんせここ3年はずっと地下生活だったもんだからよ」
「3年前の7・11事件で、特殊部隊員の北屋狄斗って言う人間が死んだんだよ。
行政はこれを、仕留め損なった卯月涼と反逆者 愛山凪の犯行と断定して以来、全国指名手配されてるよ」
火龍が言った。
「そこからは、卯月涼の事を反逆者やら革命家やらなんやら騒ぎ立てて今に至るよ、行政と特殊部隊が直々に殺そうとしてるのは、国民全員が薄々察してるって感じ。
10族と呼ばれる、能力者協会の10役人も静観の構えだから尚更、卯月涼に対する風当たりは強いね」
火龍が説明を続けた。
「で実際はどうなんだ?」
俊堂が聞いてきた。
「半分正解で半分違うな、7月11日に北屋狄斗を殺したのは事実だ。だが反逆者はその特殊部隊の方だな、名称は古今東西。姉は
「なんで殺したんだ?」
奏瀬が聞いてきた。
「……ただの復讐心だよ。姉を殺したんだ、それなりの報いは受けてもらわないと、それに僕を殺そうとするなら、命を賭けたという意味だ、殺しても文句を言われる筋合いは無い」
空は蒼色で、蒼穹の列車はノースを目指しただただ走っていく。
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