第5話 殺し合い

「うーん、よく寝た〜」

「お、起きたか」

 俺は、昨日のhell modeの反動で長時間爆睡からようやく目覚めた。

 飛鳥は相変わらず、得体の知れない能力結晶を弄っていた、生粋の研究者と言うべきなのか、変人なのかは誰も分からない。

「今日が北屋とか言う奴と会う日だろ?何時からだ?」

「確か…夜の8時ぐらいに、この乾ドックだったはず」

 俺は、スマホから事前に撮っておいた地図を指差しながら言った。

「ここか…ここら辺は憲兵隊と海軍が極秘に運営しているドックだ」

「間違いなく俺を処分する気だな」

「てか、あんまりゆっくりする時間もないぞ〜」

 飛鳥は、壁掛け時計を指差しながら言った。

 短針5と6の間を指し、長針は10を指している。

「ヤッベさっさと支度しないと」

「行く前にせめてこれ食ってけー、片手で食える栄養食だ」

 そう言うと飛鳥は、トーストからピザパンを取り出した。

 ちょうどいい焼け具合のチーズにピーマンと卵、生ハムまで入っていて間違いなく美味しい。

「ありがとうってアッツ」

「焼き立てだぞ、私が食おうとしてたんだ。

 ちゃんと帰ってこいよー」

 俺は、愛刀の獅子刀ししとうを腰に刺し、改良しトリガー部分に安全装置を纏めた拳銃、名前を付けるなら、ダブルアクション銃の頭文字を取りDAG《ディーエージー》と名付けた。

 DAGを紺の上着の内ポケットに入れて。研究所を飛び出た。

 *拳銃のモデルは、実銃のGLOCK19をモデルにしています。


 -------7時55分-------

「……遅いな」

 狄斗は既に大量にビール缶を置いて、いつでも偽計画をできるようにしていた。

 俺にアルコールは、ほとんど効かないし今回は、対策もしていた為全く酔う事など無かった。

(勘づかれたか?いやあり得ない同情を誘い、真実を混ぜた情報を渡した[鍵]が奪われたのが癪だが、それでも卯月はそれを知らない)

 今にも雨が降り出しそうな空を見ながら、俺は思案した。

 そして、遠くに歩いてくる涼を見た。

「やっと来たか、来ないと自殺する所だったよ」

 俺は、内心安堵した。

(これで、この反乱にも区切りを打てる……後はあの化け物だけだ)

「すみません遅れました……でいつまで演技続けるんですか?」

「へ?」

「いや演技でしょ?本当は俺を殺しに来てるんでしょ?」

 涼は、獅子刀に手を掛け臨戦状態に入った。

「……フフフもうバレていたのか、だがね特殊部隊相手にそれは命取りだよ」

 俺は笑いながら、腰に隠していた双剣で涼に、瞬時に切り掛かった。

(獲った!)

 俺は、切った感覚があった為そう確信した。

 だが現実は、獅子刀で受け止める涼の姿が、そこにあった。

「ック」

 俺はバックジャンプをして距離を置いた。

「どうやって受け止めた?これでもS級の力があるんだが、どんなトリックだ?」

「ただ単純に受け止めただけですよ、それじゃ俺もお返ししますね」

 涼は、踏み込みを入れて閃光剣スピードソードで素早く斬った。

「…その剣筋あいつにそっくりだな」

 俺は、難なく受け流しながら感想を述べた。

「あいつは、お前と同じように戦ったがあいつの方がもっと速く、もっと力強かった!!」

俺は、隙を見て涼の獅子刀を、正面から受け止め力一杯涼の手から離した。

 カランカーン

 獅子刀は、空高く舞い姿を消した

「おや?まさか獲物武器は、1つだけかい?敵を殺すなら2種類は持たないとこうなるよっと」

 俺は、無防備な涼に斬りかかった。

 双剣の本領は全体的に満遍なく攻撃できる能力だ、交互に繰り出される双剣は、目に見えない速さになり涼の体を浅く、全体的に傷つけていく。

「ほらほら〜どうした?最初の威勢は?」

 俺は、もう既に涼の事を相手にしていない。

 子兎を狩る猟犬そのものだった。

 しかし、そうしたなか涼は段々とその状態に適応していき、斬られる事が段々と少なくなり避ける事ができるようになった。

「ッチ仕留めきれんか、じゃ楽しい時間も終わらせようか」

 俺は、一回下り距離を取り再度勢いを、付け涼を狙った。

「終わりだ!!」

 俺は、首狙うように仕向け涼に海老反り状態にし、ガラ空きの両足の腱を斬った。

 そして涼は、立てなくなりその場に倒れ込んだ。

「それじゃ一応能力でも封じとくか」

 次の瞬間、全身が傷ついている涼に、容赦がない鎖が巻きつき、手足を縛った。

「……さっさと殺せよ…俺は負けたんだから」

 涼は既に立つことも武器もない、この状況理解し

「それじゃ遠慮なく〜♩」

 俺が、涼の体の心臓部分に双剣を刺した。

「ガハ」

 涼は吐血し、息は段々と薄くなり消えた。

「……よし終わったな」

 パーンパンザク

「え?」

俺の背中から体を貫通した、刀が伸びてきていた。そして両手からは謎の衝撃と痛みによって双剣は飛んで滑り、乾ドックに落ちていくの見えていた

「敵が最も油断する瞬間は、戦闘に勝利した瞬間と姉に教わりましたから。」

「ガハ」

 一拍子遅れて、俺の口から大量の血が飛び出て、そのまま倒れ込んだ。

 その瞬間を見てたかのように雨が降り出し、あっという間に血を洗い流していた。

「フフフ…ようやくわかったよ、君は最初から本体で戦っていなかったんだね…最初から分身体だったのかもう少し、君の能力について調べる…べきだった」

 涼は、最初から分身体で戦っていたのだ、実際には俺は何度も涼の分身体に致命傷並の傷を負わせていたが、その度に分身体を陰ながら涼の能力によって補充していたのだ。

「おい死ぬな最後に聞きたい、姉の鍵は何処にやった?」

 俺は、急速に弱り始めた死ぬのに数分も掛からないだろう。

「……あの鍵なら西…どうに…うばわれた、奴が…もってる、おし…えたんだから…おしえろ…拳銃それはどうやって…全く反応でき…なか…た」

「冥土の土産に教えてあげるよ……これをもう1つの俺の能力だ」

 俺は満足そうに目を閉じた。

 そして、涼も初めての殺しを体験し膝から崩れ落ちた。

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