エピソード2 ほっこり

時々、カウンターだけの駅前にある簡単に食べられる食事屋さんに入る。


そこは一人体制で店員さんが全てを行う。


年の頃は、ほとんどの方が自分の親世代、70~80代の方達だ。


とても優しい挨拶が心地良いからたまに行く。


そこに行く度に、自分の母親を思い出す。


母親も80位までずっと立ち仕事で働いていたから、どこかで(こんな感じに働いているのかな?)と思い出してしまう。


笑顔で、一生懸命座らずに働いている姿にいつも感動すら覚える。


今日もカウンターには私一人。


私の注文したものを一生懸命に作ってくれる。


出来上がるといつも笑顔で提供してくれる。


とにかく愛のこもった一品だ。


ある日、私が食べているとその狭い店内にも関わらず、年配のおばさんの


姿が見えなくなった。


(あれ?どこ行ったのかな?)


と、思い、耳を澄ましていると、小さな音が聞こえた。


(ずずー、ずー)


そばを啜る音だった。


そう、おばさんは、私が食べている目の前でお昼を食べてはいけないと思ったようで、洗い物などで濡れている床にしゃがんでカウンターからは見えないようにそばを啜っていたのだ。


その、仕草に思わず涙が出てきそうになった。


普通に食べてくださればいいのに。


と、思いながらも声が出なかった。


おばさんの気持ちを不意にするかもしれないと思い。


すぐに食べ終えると私は「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」


と伝え、扉から出ようとした。


すぐさまおばさんは立ち上がり、「いつも、有難うございます。行ってらっしゃいませ。」


と、笑顔で挨拶してくれた。


ただの食事ではなく、なんだかとてもほっこりする朝の出来事になった。


今日も頑張ろう。


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