第88話 ホラー…
忍び寄る未知の生物
神出鬼没な怪物
狂気の殺人者
突然現れ、ターゲットの命を無惨に奪う
隣の誰かに擬態しているかもしれない
疑心暗鬼
誰一人、生き残れない…
って、ホラーのパターンは大体一緒
ホラー映画って、怖いもの見たさでついつい見ちゃうけど、見た後は夜中にトイレへ行けなくなるのよね。
今の私に生理現象はないけど…
「あーもう、ちょー怖ーい」
と、心にもない事を口に出してみた。
怖い怖いと言いながら、実のところそうでもない。機械脳の所為なのか、感情が希薄なのか、死んで魂が宿った存在からすれば、オバケはいてもおかしくないけど、存在が明らかなモノに怖い思いをする必要はない。ただ対処すれば良い。
でも艦内センサーが使えない状況で、何処にいるかわからない敵を探すのって、難易度高し。
監視カメラも砂の嵐、なんでじゃ。
と、いう事で私は現在、メンテロボの身体を借りて艦内を警戒巡回中、艦内は主機が停止しているため、現状は無重力。圧縮空気の噴射による反動移動。
そんな私の目的は、侵入者の誘い出し、自ら囮でございまーす。
囮になることは、メイには反対されたけど、ディーコンには反対されなかった。でも、いつまでもカサカサコソコソと、ゴキブリが如く艦内で好き勝手をされんのは、邪魔者に他ならない。非常にムカつくし、時間も無駄。そもそもこんな事してる場合じゃないのよ。
そしてやっぱりサソリロボは艦内潜んでいた。
時折姿を現しては悪さをする。メンテロボには2体1組で行動させて追い立てようとするも、相手は中々に狡猾、ちょっとの隙を突かれ、更に4体のメンテロボを行動不能にされてしまったわ。向こうも学習してる。
これで、私が復帰してから6体、80日間で計16体を行動不能にされてしまっていた。
下手に破壊すると自爆するし、捕獲しようとしてダメージを与えても自爆する、厄介極まりない。なんとか行動不能にだけしたい所、そう考えるとゴキブリの方がまだ可愛い。
状況から判断するに、サソリロボは艦内に後2体潜んでる。それ以外は、メンテロボ達が隔壁に閉じ込めたり、外に追い出したりと、自爆を誘って排除した。
まったく、精神攻撃といい、自走地雷といい、面倒なことばかりしやがって、ゴキブリめ!
「責任者出てこい!!」
と、スピーカーで叫ぶも、通路を虚しくこだまする。
音が響く…
ここで、虹色領域がもう少しわかって来た。
領域は、広範囲で何でもかんでも物理法則を無効化してるわけではなく、限定的であり、作用している空間にも揺らぎやムラがある。特に閉じられた空間内では作用していない。そう、今この艦内のような場所とかね。
それなのに艦内設備たる補機や主機は、動かそうとするとダウンする。なんとも仕組みがいやらしい。都合がいいのか、不都合なのか、何者かによる意思を感じる。
では何者とは誰なのか?
んー……まぁ今はとにかく、サソリの排除が先だわ。
……
静かな通路をシュッシュと空気の排出音だけをさせて進む、私は暗闇の中にあって自発光するイルミコンの通路番号を見た。
そこは…マテリアルプラント近く。
そう言えば…この辺りで時折りメンテロボがおかしくなる報告が上がっていたわね、ログのタイムスタンプ不具合だとか…まさか、その仕業はサソリロボで、その時から潜んでいたとか?
……いやいや、それはあり得ないわ。
ワタシは、通路の前後を探照灯で照らした。
無線は使えるようだけど、私は今、侵蝕不明のハッキングを恐れ、近くの端末から有線接続をしつつ、切り替えながら移動してる。今までこういうシチュエーションは想定してなかったので、機械脳のスタンドアローン化を考えないとね……
……ん?
接続切替をしていたその時、ワタシの広角光学カメラの視界端で、照明が落とされた暗い通路の先を影の様なモノが一瞬横切った。
私は即座に、位置コードをマーキュリーズに送り、影の横切った通路先へと探照灯を向ける。その先は丁字路。
しかし、動くモノは確認できない。光学機器を幾つか切り替え、暫くそのまま待機する…
いやーちょっと怖くてドキドキするわー…心臓ないけど。
私はマグネットホイールで床に降りて接地し、仰々しいシンデンの30mmバルカンを構えながら、慎重に丁字路へと近づく。地に足をつけてないと、バルカンを撃った瞬間にグルグル回ってしまって、まともに撃てない。通路角まで行き、壁に張り付くと、カメラを伸ばし、曲がり角の先の左右を覗いた。通路先は…ほんのりイルミコンの誘導光が続いてるけど、やはり動くモノは確認できない。
丁字路に30mmを向けたまま一旦下がる、そこで後続のメンテロボが来るのを待つ事にした。
その間私はログを確認する。ワタシは映像ログを見て、自分の思考を疑った。
…は?、何これ?
チラリと画面端から丁字路角への流れる映像、その僅か0.3秒の隙間に、映っていた影、その一瞬の影は、2足歩行しており、人型に見える。
何度も繰り返し再生し、そして停止させた。
丁字路を一瞬横切った影は、人のシルエットに見える。
敵はサソリ型のロボット、サソリロボが有人だとは確認されてないけど、形状から人が乗るような造りにはなっていなし、分離するような構造にもなってなかった。
という事は、サソリロボの他にも艦内に何者かが入り込んでる?
もしくは……霊的なアレ?
いやいやいやいや
ディーコンからピロリっとコードが送られて来て、私は思わずビクッと反応してしまった。何よもう…
…え?、ログエラー??
マーキュリーズ側のログにはエラーがり、該当するタイムスタンプには、何も残っていないという。
む、コレが例のエラーログ?
改めてもう一度、こちらのボディ内のログを確認すると……消えてる
各メンテロボの現在位置を確認する。
私の後方から近づく機体が一機、その後続には一機、そして丁字路の先からも、左右から各一機が向かって来てる。丁字路周辺で稼働中のメンテロボは現状私だけ。
そして私の思考が停止した。
………
……
…いやいやいやいや!、ログか消えたってナニ!?
コレマジ!?
宇宙ホラー????
…ちょっとやめてよー、マジで泣くわよ?
感情が希薄だとは言ったけど、戦慄が走った、怖いモノは怖いと悟った。
いやもう、ここに誰か早く来て欲しい!、…そうヤキモキしていると、後続のメンテロボがやっと来た。
私は振り向き、そしてそこにいたソレを見上げ、一瞬思考が停止した。
どう見てもメンテロボじゃない、ソレは振動する鎌を備えたゴキブリ…もとい、敵サソリロボ。
Oh…
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