第81話 分解してみる?…

 フガクをバラしてみて、わかった事あり。


 フガクの反転重力炉の主炉体は、やはり得体の知れない代物だったと言うこと。地球の技術体系にそぐわない造りをしてる。


 そして、それは私の心臓部も全く一緒。今まで簡単にはいじれない部位だったので、今回ようやく、はっきりと判明したわ。


 そこでフガクの炉体は2つあるので、片方を分解して中を見てみようとテイラーに提案した。


 ところが…


 残念ながら炉体を分解して調べる事が出来ないと結論。なぜなら、分解した場合、元に戻せない可能性が高いと、テイラーとメイが難色を示した。

 それより1番の問題は、炉体内には未知のエネルギー基点となるモノが封じられている点。そしてそのために格納容器は完全密閉されていて、間接的エネルギー伝導配管以外は、全てハメ殺し構造となっており、解体できないようになっていた。故に分解するには容器その物を壊すしかない。

 使い捨てなのか、壊れない自信があるのか、はたまた、分解すると何か恐ろしい事が起きるのか…

 内部構造については、X線やγ線を全く通さないので不明。まぁ、通さないと言うか、完全に吸収されているようで透過どころか反射さえない、反転重力炉なんて呼び名だけあって、中はマイクロブラックホールの様なエネルギー体が封じられていて、開けたら最後、特異点が剥き出しになってインフレーションが起きるのかも。


怖い怖い


 どちらにしても、とんでもく炉体はヤバイ代物、分解すればリスクしかないと、マーキュリーズと満場一致。それにしても、戦闘で壊れる前提の戦闘艦に、こんなモノ使っていいのかしら? と、改めて思った。


 地球の技術体系にマッチしないということは、とどのつまり、異星人技術の可能性が高いわね。地球はどこかでコレを手に入れ、フガクとナガトで実験した。


そしてフガクは失敗に、ナガトはお蔵入り。


ははは。


 そもそもフガクに反転重力炉を2基も積む必要がないのよね。出力としては1つで十分。では何故2基積んだのか?、この2基、調べてみると制御系が全く異なる作りになっていて、どうやらエネルギー変換効率を地球の技術で模索していたのだと思う。それとどちらか一方が使えなくなっても片方生きていれば帰って来れる、帰還の確率を上げようとしたのかも。…いずれにしても、同時に使えなくなってエンケラドスに不時着する羽目になるとは、当時の技術者も誤算だったのでしょうね。


 こんな貴重なモノを、100年以上回収されず放置していたのは何故なんだろう?、その頃には異星人の脅威は始まっていたのかしら?


 そこまでのフガクのデータはフィードバックされ、今のナガトに繋がってる。最終的にナガトは仙術による制御手法が編み出された。


 と、推測する。


 それでも推進機が稚拙なため、反転重力炉の能力を全然使いこなせていないけどね。


 んむー


 そのヒント探しのためにもレストア屋のバックヤードみたいなβ領域の調査にぜひ行きたい。リスクは超高いけど、やるだけの価値はあると思う。


 あ、シンデン救出が最優先ね。


 …


 そんなことを考察していると、あっという間に10時間経過。テイラーの予告通り仮設基地が完成したわ。


 うーん、相変わらず仕事が早い。


 そんなに仰々しい作りではないけど、フガクとユキカゼが接岸できる架橋バースがしっかりと出来上がってる。


 私ナガトは軌道上で待機、タイタンで採掘された資源をチマチマとピストン輸送してもらってる。


 基地の名前はそうね…「エノシマ」にしよう。サガミノ国第一国防艦隊基地があった場所。親友のミカサとよく弁天仲見世通りに行ったわ。エノシマの展望台からはフガクこと「フジヤマ」も見えた事だしね。


 …ミカサか

 彼女と私は両親がいない。お互い養護施設で育った幼馴染。私がいなくなって悲しむのはミカサぐらい、彼女は天寿を全うできたのかしら?。結婚はせずキャリアーウーマンになるんだと豪語してたけど、子孫とかいたのかな?。


 もし彼女の血筋がこの宇宙のどこかで、生き延びていたら嬉しいわ。

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