第75話 作戦会議…

 私達は、現状把握と今後の対応について、協議を開く。


 まず虹色リング内の宇宙船群は、現在どの様な状況にあるのか?


 観測の結果、全ての船やオブジェクトから、エネルギー放射は検知されない、完全に機関停止している状態だと推測される。更には動生体反応も検知されない。ただし、SS1からは、識別ビーコンだけが発信されて来ているわ、周囲の物体からは、人工的な電波類の信号は観測されていない。SS2からも出ておらず、SS1のみ信号を発している。


 SS1のビーコンは、内部バッテリーで発信されており、主機関とは独立している、では、同じシステムのSS2はなぜ沈黙しているのか?、ビーコン出力の微弱性から、SS2は発信を抑えているか、SS1にバッテリーを繋いでいるのではないかと、テイラーが推測した。


 SS1のビーコンのおかげで、今どの辺りにいるのか観測はできている。


 拘束された位置から、どんどん移動しており、現在2万キロ土星方向に流されており、徐々に減速している。この減速度合いから、あと3万キロは進むと予測してる。ほぼ輪の内側付近へ到達する。


 では、虹色領域の拘束効果作用を引き起こす距離は?、すなわち虹色領域に接近出来る限界点はどのくらいなのか?


 SS1と2が制御不能に陥り、捕らわれたとされる位置座標からディーコンが割り出した。その距離は土星の輪=虹色発光外周から、約5,000キロの領域だと算出。この範囲が狭いのか広いとかと問われると。感覚的には広い、でも宇宙感覚では、かなり狭い。狭いと行っても、私の新装備の「ハープーン」や、ワイヤーアンカーでは到底届く距離ではないわ。


 打つ手のない中、メイとテイラーはSS達の放棄を進言して来た。サルベージするリスクが高いとの判断。しかしディーコンは主張する。


「SSは戦略上必要不可欠である」


と、放棄を拒否。それに対しメイとテイラーは、SSのAIバックアップを使用し、新たな「戦略支援早期情報警戒機の構築」を提案をして来た。

 確かに、バックアップを使用すれば、同じSSは構築出来る。しかし、今までの「経験値」は全て失う。そう表現するとまるでゲームの様だけど、ここでいう「経験値」とは、AIの自己判断能力的なモノ、すなわち「個性」を指します。そして蓄積された「情報」を司るアーキテクチャはコピー出来ても、AIの「個性」を司るアドミニはコピー出来ない、これは仕様ではなく、私を含め、アドミニ領域は皆が一つに複雑に繋がっており。分割は出来ない、故に個性をコピーなんて出来ない仕組みになってる。言ってしまえば、私を含め、AI群は一心同体という話し。


 そのため新しく造るSSのAIは、経験値がリセットされ、初期状態となる。育てて来たディーコンは、それは嫌がる。


 私も嫌だわ。


 「自分の一部」を失いたくないと言う気持ちはディーコンと一緒、私はメイとテイラーの提案を却下した。するとメイとテイラーはそれ以上反論することなく、私の判断に同意した。


 む、コイツら私を試した?


 SS救助は第一優先だけど、土星のリング内には、未知の物体がわんさか存在してる、それも原型を留めて動けない状態でね、これを見逃すのは愚の骨頂、テイラーだって、宇宙船群を解析したくて内心は鼻息を荒くしてることでしょう。鼻はないけど。


 と、いう事で、我々の意見は、今回ほぼ一致したわ。SSの救出、並びに船団の調査、その技術のサルベージを敢行します。


 さーて、あのサルガッソー領域をどうやって攻略するか?


 ふふふ、楽しくなって来たわね。

……


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