第66話 崩壊…

 私は爆縮点火器の中を急速降下していく。


 この点火器装置も考えてみたらとんでもない大きさだわ、これが赤道に何百と刺さってる。ダイソン殻球と同じ様なテクノロジー、でも似てる様で似ていない。どちらかと言えば、月面のアルファ基地の竪穴に似てる。


 ただし分析している余裕もないので、この件はスルー。


 攻撃はされてこない、流石に内部への侵入は想定していなかったようね。


 どんどん降下、今イオの地表面あたり、海抜0mを抜けた。更に降下、外気温が上がって来た。地熱が上がってる、恐らく外側は溶岩対流層、星の活動が活発な証拠。


 今ここで上空からトンガリが飛来したら……って考えるのはやめよう、フラグが立ちそうで怖いわ。外の事はユキカゼ達に任してあるし、彼らを信じてる。


 かなり降りて来たわ、深度計がそろそろ目標を指し示す所まで来てる。すると、アクティブソナーに感、この先は行き止まり、急制動!、普段使わないスラスターも使用して、更にロケットアンカーを外壁に打ち込んでの急ブレーキ!


 ドガガゴゴカガガガガっ!!……


 行き止まりに到着したわ、超音波を当ててもその先の厚みがわからない、進んで来た距離の計算から、恐らくここが爆縮点火器の先端部、いわゆる薬室だと推測。ということは、その更に先にイオの中心部、星の核がある。


 さてやりますか。


 主機、補機全力運転。

 仮設コンデンサーへの充電を開始


 シンデンのリボルバーカタパルト内に、荷電粒子砲用のコンデンサーを、テイラーに仮設してもらった。目的は「フルバーストモード」、この時のためだけの運用。


 荷電粒子加速を開始

 チャンバー内、満充電へ、以降チャンバー内の充電状態を絶えず維持する


 取り舵2-7-0、船体傾斜90度


 船体右舷側を隔壁に向け、そして41センチ荷電粒子連装砲の全砲身を隔壁へと向ける。


 目標諸元、隔壁一点集中、照準機にターゲットがマークされる。砲身が微調、ロックオン。


 ウチーカタ、始め!!


 荷電粒子砲が閃光を放ち、隔壁を一瞬で溶解させた。


 続けて、発射!


 連続で荷電粒子砲を叩き込む、隔壁を掘るかの様に、溶融した隔壁が周辺へ飛び散る。トンネル内はみるみる高温になっていく、何せ煙突構造だから蒸し焼きです。冷却しきれない砲身も熱で赤く染まって行く。


 そして何十発目かの砲撃で、何かが弾けた。地震が発生する、震度はマグニチュード12、超巨大地震、トンネル内壁に大きな亀裂が入り始めた。


 D1が宣告、”中心部の破壊を確認”


 加熱した仮設コンデンサーをカタパルトから打ち出し全て廃棄する。そして艦首回頭、点火器からの脱出を図る。


 最大戦速


 更に置き土産に、反動推進器を外した光子魚雷を艦尾発射管から爆雷のように何発も投下する。


 ドロドロに溶融した隔壁内に落ち沈んで行く光子爆雷…


 途端にもの凄い閃光と爆発が下方で膨れ上がった、トンネル内なので、下から圧が掛かる、更に上昇力が上乗せされる、人が乗っていたら急激なGで圧死する程に加速する。


 点火器が後ろから崩壊していく、海抜を超えたところで、前方内壁面へ向かって荷電粒子砲を放つ、点火器の外壁まで射抜き、私はそこから点火器の外へと飛び出した。


 離れゆく後方で、脱出した点火器が溶岩を噴き出し崩壊するのが見える。その刺さった地面から放射状に地表面にヒビが入り、広がって行く。


 星全体が震えてる、超巨大地震が発生。地面のひび割れが連鎖的にあちこちで始まった。

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