第65話 1 on 1…

 これでもかって、ほどに通常弾頭ミサイルをイオに向けて発射。


 イオは、片っ端から私の放ったミサイルを撃ち落として行く。それなのにあちら様のエネルギー量は全然減らない。


 でしょうね


 直径3,600キロの天体に対し、こちらはたかが300m程度、星全体がエネルギー源のオバケに、虫ほどのちっさな心臓ではお話にならない。まあ、密度的にはこっちが上なんだけどね。


 でもこれでいいんです。


 イオの近傍4ヶ所の宙域をキラキラと輝くものが周囲を満たしてる、その地点を、ポイントA、B、C、Dとします。


 私はただデタラメにミサイルを撃ったわけじゃないわ。ポイント4ヶ所に、迎撃されるのを考慮の上で、ミサイルを。実はキラキラの溜まっている箇所はイオの目玉砲の死角になっているポイント


 私が打ち込んだミサイルには、仙術式をプリントしたチャフを大量に内包させてあった。受けたエネルギーを拡散させるという簡易術式を描いた即興チャフ。これで計算上、イオのエネルギー放射をチャフが撹乱、30%まで抑え込んでくれるはず。


 私のリクエストに、即応したテイラーが、分でプリンターを組み上げ、実現させるという離れ技を見せ、そして1分間に5千万枚もの仙術チャフを生産してみせた。


 テイラーも、私の中にあるプラント設備も、何やら異常です。


 そんな事ができたからこそ、この作戦が実現可能になる。


 ナガト行きまーす。


 主機全力運転

 光子魚雷β、1番発射管へ装填

 ……発射


 発射管1番の、光子魚雷が速度を落として走航する。狙うはポイントC。


 そして私は最大戦速!


 主機が吼える、ダイソンの盾を前方に出し、私は加速して行く、先に撃った魚雷とは逆方向へー、そして私が狙うはポイントA


 ポイントB、Dはダミー、Cは囮、そしてAが本命


 イオが接近する光子魚雷βへと対空レーザーを放つ、しかしチャフの影響で射線は歪み、減衰し、拡散する。


 光子魚雷βは特殊弾頭、弾頭のフェアリングがパージされる、弾頭は更に4っつに分かれ、末広がりに飛び出した。弾頭自体は時限信管、通常よりも威力は下がるけど、当たらなくていい、空間を揺さぶるのが目的。


 チャフは防御のためではなく、エネルギー分散を広げるため。


 分裂した4弾頭が炸裂した。宙域を真っ白な眩い光が覆い尽くす。


 要は猫騙し。


射程に入っているにもかかわらず、イオは目玉砲を撃ってこない、こちらを見失ってる、その間20秒、でもそれで十分。


 その間に私はポイントAへと飛び込む。


 イオは再び私を発見し、目玉砲を向けて来た。


 それも計算通り。


 私は減速してわざと速度を落とし、艦首をやや左へ向け、全砲塔をイオに向けた。


 イオの地表面をエネルギーが収束、目玉に高電磁現象。


 イオの目玉が光る、私はハープーンのロケット部を切り離し、ダイソンシールドをイオに向かって投げる。


 目玉砲が直撃、しかし重ねた盾は、僅かに数秒耐え凌ぐ


 Now!


 連装砲、全門斉射!!


 私も盾に向かって、荷電粒子砲を放つ、高熱を帯びた盾を境界にして、目玉砲の高エネルギーと衝突した。


 私の放つ41センチ荷電粒子連装砲全門斉射の総エネルギー量より、目玉砲のエネルギー量が遥かに上、でも予め撒いたチャフと、光子魚雷βの爆発拡散エネルギー、そしてダイソンの盾とで、ほぼ相殺した。


 私はそのまま宙域に発生した超高熱領域へ突入する。


 通り抜けた先に、イオの地表面が近づく。そこはもう目玉砲の射線の内側、即ち死角、対空レーザーは飛んでくるけど、仙術防壁は貫けない。


 相手は星、どうやって壊すか、その赤道には、異星人の遺した巨大な爆縮点火器がある、近づいてわかるその大きさ、天頂部は大気層の上まで出ている。点火器は丸い筒状で、ナガトの船体が入り込めるほどの大きな穴が口開いているのを予め確認していた。


 私はその一本の点火器内部へと降下突入した。

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