第67話 哲学?…
「ありふれは頂点に達する」
セヤック・F・ダッシーの論文は、哲学的で俗物的な話し。
大きな盛り上がりを見せた物語の結末には、必ず大きな破壊点が生み出される。最後に
と、言うもの。
滅びという点では、その昔、恐怖の大王がやって来て人類は滅ぶかもしれないと、予言をした人がいて、予告された年とされてる1999年は、世の中大騒ぎになったらしいわ。でもどこかお祭り騒ぎ的だったとも記録されてる。
私も元人間だけど、人間は滅びというモノに変な憧れでもあるのかしら?、ひょっとして、地球人類は、ダッシー理論の様な、自虐的な滅びを自ら演出したのかもしれないわね。
さて、中心核を破壊されたイオが崩壊を始めた。赤道に配置された爆縮点火器群が、沈み込み、歪みの圧力に耐えきれず、へし折れ倒れ始める。これでもう爆縮臨界には至らない。
目玉砲は、地殻の亀裂の煽りを喰らって崩壊、機能を停止した。
これで終わりかって?、いえいえ。
私はトドメとばかりに、更に12発の光子魚雷をイオの赤道、点火器付近にお見舞いした。
着弾した光子魚雷が赤道に沿って炸裂すると、ついにイオは星全体にヒビが入り、溶岩を噴き出した。
あっという間に地表面が溶岩で火の海に…
これで終わりでしょ?、いえいえ。
イオの公転速度が著しく落ち、徐々に軌道がズレていく、そしてその軌道の向かう先は…
「木星」
イオは木星へと落ち始めた、私はその結末を見届ける。
普通に考えればここまでする必要はないわ、あちら様の戦闘力だけ奪えばいい、でも多分、その次に来るのは自爆でしょう、だって爆縮点火器はそういうふうにも使える。
だから破壊します。
他の3衛星は、…まぁそうね、もしアレらも戦闘兵器化されていて、襲って来る様なら考える。今のところは放置で。
…そしてイオは限界が訪れる。
自身の重力の支えを失ったイオ、木星に引きちぎられ、一気に崩壊していく。分解した星の残滓が、木星の暴風吹き荒れる水素とヘリウムの大気へ吸い込まれるように落ちていく…
そしてイオはこの宇宙から消滅した。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
生き物が住んでいなかったとは言え、星を1つ潰してしまったわ、地球を滅ぼした異星人と同じね。と、私は自問自答する
心は痛む。
でも「宇宙戦艦ナガト」の座右の銘は
「やられたらやり返す」
です。
カリスト、エウロパ、ガニメデだけど、イオが無くなり重力干渉から解放されたのか、加速している。このまま行くと、今の軌道より木星から離れた位置まで移動する事になりそう。メイが軌道計算を始めたところ、ガニメデとエウロパは、ほぼ元の公転軌道まで戻る移動をしてる。楕円軌道で回っていたイオがいなくなったので、重力相互干渉のバランスは変わるとも…
ただし、カリストだけは弾かれたように大きく移動しているのがわかった。この先軌道が安定するのか、木星の重力を振り切り、ダイソンの内殻に衝突するのか、メイのシミュレーション結果は2万通りにもなり、衝突コースはその内3割、何が言いたいかと言うと、「予測はできませーん」、とのことでした。
まぁ、なるようにしかならないと言うお話しね。
では本題、イオは一体どちら様陣営の異星人兵器だったのかしら?、メインベルト?、トンガリ?、それとも第三勢力?
まさか地球人じゃないわよね?
推測、憶測、考察、ああめんどくさい、どうでもいいわ。
…
私はユキカゼ達と合流した。ゲッコウを艦内に回収すると退避していたメンテロボ達が、慌ただしく補修作業に入ってくれた。
と言っても、溶けた装備類の交換だけどね。
船の躯体には大きな損傷無し、外装修復はマテリアルで、チョチョイのパパんです。
ユキカゼとシンデンは、その間、周囲を警戒してる。ミジンコ達は……ウロウロしてる。
どうも解せない
私を恐れて近づかないならわかる。でも凶悪さから言ったらユキカゼの方がヤバイと思う。
そんな事言ったらユキカゼに「なんでやねん」と突っ込まれそうだけどね。
だって私より劣る兵装で、トンガリを潰して行く戦闘力はもはやチートですよ?、それに危なくて人が乗れない戦闘艦ってどうなのよ?
考案したのは……私だったわ。
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