第61話 痕跡?…
巨大宇宙船を調べて見てわかったこと
エンジンがない。
これだけの都市と設備を維持するのに、かなりのエネルギーが必要だと見積もっていた。それなのに、そのエネルギー源が見つけられない。
地熱?、太陽光?、それだけでまかなえるような規模ではないと思う。メイの試算でもどんなに変換効率が高くても賄えないと、そう出てる。
設備を調べる限りは、エネルギー供給ラインは確かにあって、変電設備的なものも確認できた。
…でもその先が見つからない。
この宇宙船は恒星間を渡って来たはず、その動力炉には大いに期待していたわ。都市を見た時に、そのエンジンを使用してエネルギーをまかなっていると考えてた。これだけ巨大な宇宙船を動かすからには、さぞや大きな心臓だと思ってた。あまつさえその技術を取り込み、私達の恒星間航行に転用できないかと、淡い期待をしていた。
…だけど、残念ながら持ち去られたのか、解体されたのか、存在を確認できなかった。
ちっ、世の中そんなに甘くはないわね…
主機があったと思われる怪しい場所は見つけたわ、でもそこは半球ドーム状の開けた場所で、公園のようになっていた。そしてその中心部には、大小様々な夥しい数のモニュメントが乱立していた、数はざっと8000本。宇宙船の船体と同じ白磁器のような材質のモニュメント。最初はそれが動力炉の様なモノだと思ったけど……違った、そこは墓地、「公園墓地」。メイもそうであると推測した。
モニュメントは「墓標」、なぜそう思うのか?
銘などは刻まれておらず、その代わり、墓標のトップに小さなオブジェクトが取り付けられてる。1つとして同じ形はなく、何かを形取った意匠をしてる。なんだかわからないモノばかりだけど、中には木星だったり、土星だったり、太陽だったり、星を形にしたモノはよくわかる。
異星人は、命を慈しむ事が出来る者達、そして墓地の周りに広がる凍ってしまった公園、死に寄り添う空間施設を造る者達が、本当に地球を滅ぼしたのだろうか?
私は宇宙を見上げた。
色々と調べて行くうちに、ここに住んで居た異星人達は、文化的で平和的な者達だった事を伺わせる。
クソ食らえなんて言った事は、一旦撤回します。
出会えるなら、ちょっと話をしてみたいわね。メインベルトの奴らと違って、今度は会話が成立するかもしれない。
まだ太陽系に居るかしら?
私はまだ木星までしかたどり着けていない。
太陽系もまだまだ広い、この先にいるのかもしれない。
その為には、彼らの文化、言葉を知るためにデータを蒐集せねば。ドローンを都市の各設備に送り込み、彼らの使う文字、文章、技術情報、できれば音声、その全てを……って、何もない。
なーんにもない。
はぁ?
文字使う文化じゃないの?、電子データは?、そんなものありゃしない、こんな未来的設備で、情報伝達はどうやってたの???
消されてる?
マジですか?
こうキレイさっぱりと消去できるものなの?、と言うかなぜ消す??、どうして残そうと思わない??
アルファ基地の時もそうだったわ、なんでみんな消すのよ?
そんなに自分達の存在を消したいわけ?
だったら、勿体ぶった痕跡なんか残すな、全部消しとけって言うのよ、キレイさっぱり、跡形もなくね。
イライラする。
ムカつくわ。
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