第60話 巨大宇宙船
私はガニメデ軌道上で待機し、マルチタスクで操作する20機のドローンを、巨大宇宙船調査の為に降下させた。
120キロは流石に大きいわ。
ドローン視点だと、端と端が見渡せない。その表面はどうなっているのか、色褪せもせず真っ白、まるで今さっきウォシュしたかのように白く輝いてる。なんの材質なのかしら?、パッと見その表面は、白磁器にも見える、メイの定性分析では「琥珀」に近いそうです。
琥珀?、琥珀って樹液の化石よね?、まさかね。
この宇宙船がここに墜落したのか、降りたのかわからないけど、この状態になってから、かなり長い年月が経っていると言うことが、周囲の状況から見てわかってる。それは宇宙船を中心にして、様々な設備や建物が広がっていたから。
そして船体が大きく破損し、亀裂となった場所から中へ入ると、そこにはさらに驚きの光景が…
都市だわ
宇宙船の中に更に都市が築いてある。でも、元々内部にあった建造物群ではなく、宇宙船内部をくり抜き、外殻を覆いにして造られた都市だと私は見た。
メイもテイラーも同意見。
でも今は、生き物の反応は全くないわね。期待半分、納得半分。
今は外殻が壊れて大気放出されてしまい、生物が住める環境ではなくなっている。何もかもが凍ってる。異星人が肺呼吸なのかは知らないけどね。
ドローン探索によって見つけたのは、ここに住んでいたと思われる人達の残された生活用品の数々。それを見る限り、地球人に近しい人型の生命体が使用していたと解る、でも生活様式は地球のそれとはだいぶ異なるわ、明らかに地球文明のものではないわね。
放置されてどのくらい経っているのか?、メイが遺留物を分析した結果、放置されたのは100年ほど前と推測。
100年前と言えば、私が生きていた時代、その頃まで彼らはここに居たという事になる。
そしてこの宇宙船自体はどのくらいの代物なのかと言うと、10±5万年ほどだと導いた。
10万年前、驚きを隠せない
地球では、人類の始祖ホモ・サピエンスが登場した頃になる
そんな古代の宇宙船が太陽系へとたどり着いて、つい最近まで異星人が暮らしていた。
では、ここの異星人達はどこへいったのか?
ダイソンスフィアは、彼らが建造したのではないのか?、放置して、別の宇宙船で旅立ったのか?
それとも、メインベルトの異星人は彼らの敵で、滅ぼされた?
またはトンガリに、滅ぼされた?
生き延びたとしてどこへ行った?
もしまだ太陽系にいたとして、どうなのか?、敵なのか?、会話できるのか?、手を取り合えるのか?
……あまり期待はできないわね。
何故なら、何者かが地球の生命を滅ぼし、地表を荒野に変えた事実がある。こんな目立つ場所で、この宇宙船が野晒しな上、原型を留めているのは不自然。火星の遺跡は隠蔽されていたため発見されなかったんだと思う。そもそも火星の都市とは様式が全く違う。
ここの異星人が、メインベルトの異星人船団を操っている者達そのものではないのか?
でもこれだけの高度な文明を持ちながら、地球人と敵対しなければならない理由は何か?
そもそも敵対していた異星人なのか?
……考え出したらグルグルと疑問が無限ループする。
何もかもわからない、ああイライラする。
銀色円盤しかり、ガニメデの巨大宇宙船と慰留品しかり、全てが欺瞞に思えてくる。
この宇宙で今唯一、私が信じられるのは、苦楽を共にしたナガト艦隊のAI達だけだわ。
異星人?、クソ食らえだわね。
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