第62話 黄色信号…

 ないものはない。


 ガニメデの巨大宇宙船には、色んな形で異星人の生活跡が残されてる、でも情報という形では、何も残されていなかった。どんな言葉を喋るのか、どんな文字を使うのか、どんな姿をしているのか……さっぱり不明


 Why?


 意図的に消し去られていた。


 まぁ、ないものはないので割り切るけどね。


 文句は言いたい、でも別に私はこだわりません。本音を言えば、もうどうでもいい。もし地球を滅ぼした連中なら即戦闘だろうし、また別の異星人だとしても、情報を意図的に隠す様な連中と会話できるとは思えない。


遭遇したら考える。


 さて、成果は無くともここでの目的は果たしたわ。ガニメデの異星人達は、メインベルトの連中とは、やっぱり毛色が異なるという事が、概ねわかりました。


 後はアルファ基地で入手した星図のイエローマークされてる衛星…


「イオ」


 うーん調べる必要があるのかしら?、マークが黄色ということは、警告か注意と取れる。

 アルファ基地情報でもイオに何かしら不穏なモノがあって、場合によっては害を成す何かがそこに存在する可能性がある、と示していると解釈…


 若しくは、「近づくな」


 という事かしら?


 今ちょうど木星の水平線から、くだんのイオが日の出の様にゆっくりと姿を現した。


 木星の第一衛星「イオ」…

 直径3,600キロ、公転周期は現在少し長くなって、約2日。ガニメデより小さいのに非常に密度が高く、エベレストより高い山々がバリバリ噴火している岩石衛星。公転軌道が変わってしまって地殻が乱れてしまったせいか、その活動が激しくなってる。元々エウロパとガニメデ、そして木星との重力干渉によって取られていたバランスが、無理やり軌道変更させられた所為なのかもしれない、長くは持たないかもね。

 大気は硫黄と、二酸化化合物、過酷な環境は、同じ木星の衛星でありながら、エウロパやガニメデとはまるで違う荒々しさを持つ。


 ん?、何あれ?


 イオの地表面、下半球の中心、黄道当たりに目玉の様な大きな模様?がある。


 んー?


 ファオン!!


 単発の警告音が鳴り響き、私はドキッとした。メイから即座に報告が入る。


 “イオ全体に超高エネルギー反応”

 “エネルギー収束”


 はぁ!?


 イオ全体がオーロラが如く青白く光ってる、そしてその光が地表面を流れ、目玉模様の中心に向かって集まって行くのを観測した。


最大望遠で目玉を確認する。


あー目玉は模様じゃないわね、構造物?


 目玉の中心に電磁ノイズが発生


 はっ!、眺めてる場合じゃなかった!!


 艦首回頭取り舵2-7-0、主機全力運転、最大戦速!、アップトリムいっぱい!!


 私の視界に、剥がれ落ちたダイソンスフィアの大きな破片が回転しながら木星へ向かって行くのが入った。


 間に合うか?


 ハープーン!


 考えるより先に体が動く


 ワタシの艦首左右に備えられたロケットワイヤーが射出され、破片に向かって飛んでいく。


 目玉は明らかにこちらを向いてる。


 どう考えても狙うは私。


 ハープーンが破片を捉え、巻き戻してワイヤーを張る、引き寄せる力と遠心力で、ワタシは破片を投げるような形で、破片と体を入れ替えた。


 急激なG、船体が軋む。


 高エネルギーが目玉へと収束を果たす、次の瞬間、目玉がギラリと輝いた!


 私は、熱と強烈な光に飲み込まれた。

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