第56話 宇宙精霊…
ワタシは帆船モードにて、今度は中間層まで移動した。
そして再びダイソン構造体の影に隠れる。
そこでメイとテイラーと協議した。
銀色円盤は電探では探知できない。ただ光学視認はできる。
そこで、目視でも見えない微弱な光を撮影できる極超高感度センサーを用いたピコ秒オーダーの超高速度カメラを組み合わせ、視認できる宙域を撮影する事にした。
天体運動の撮影に用いるタイムラプスとは真逆の手法。最初からそうすれば良かったんだけど、数秒撮影するだけで、ものすごいデーター量になるから、後の検証が大変なのよね。
そして撮影すると、分析もへったくれもなかった、居るわ居るわ、銀色円盤がウヨウヨと!
移動速度が速い上、色の濃淡がカメレオンの様に絶えず変化しているため、視界に捉えられていなかったと判明した。大きさは大小様々、数はキロ平方メートルあたり5〜10、宇宙というシャーレに散らばった蠢く微生物の様だわ。
どうやら活動範囲はダイソン球内だけで、外側にはいないみたい。
こうやって見てると、ちょっと幻想的に思えてきたわ、森に住む精霊とか、ウィルオーウィスプとか…ファンタジーって感じ?…
そうね、じゃあ銀色円盤は…
「ミジンコ」
と呼びましょう。
宇宙ミジンコ、透けてるしね。
……
…
ワタシはミジンコ達がどう動くの見るため、斥候として、フル爆装させたストライクシンデン8機を、発艦させた。
とりあえず向かう先は、目的のガニメデ
すると一部のミジンコ達が、シンデン達についていく。
…なんか犬みたい、可愛くはないけど。
うーん、やっぱり攻撃する姿勢は見せないわね、ただついて行くだけ。
なんだろなー
そう考えると、ヒルダ領域で襲って来たトンガリはなんだったのかと思う。アレも突然現れたので、ミジンコ達と同類だと思ってた。
では別モノなのか?と言うと、そうだとも言い切れない。
この判断つかないモヤモヤをどうにかしてほしい。
とりあえず私がシンデン達に与えた指示は、ミジンコ達が手を出して来るまで反撃しない事、そして存在に気づかない振りをする事。
コレ、もし人に操縦桿を握らせてたら、怖くて撃っちゃうかも知れないわね。それだけの無茶振りな指示だと思うわ。
飛行するシンデンの周りには、今沢山ミジンコ達が集まってきてる。でも邪魔をしようとはしていないし、進路を妨げることもしない。
ただついて行く。
何がしたいんだろう?、でも眺めていて気分は悪くない。「じゃあそれはナニ?」、と問われると……んー癒し?
宇宙に出てから「殺るか殺られるか」と心が殺伐としていた。だから帆船モードでここまで辿り着く間、娯楽メディアに所蔵された本を読んだり、漫画見たり、映画鑑賞したりした。けど…
見てしまうのが、なぜかミステリーに、戦争ものに、ホラー。
なんでやねん、全く癒されてないわー
その点ミジンコ達は見てるだけでなぜか癒しを感じる。水族館やアクアリウム見たいな感じ?、しつこいようだけど可愛くはない。
…そう思わせといて、実はガブリ!、なんて狡猾な奴らかもしれない。
癒されつつも、不信感しかないわー。
ファぉんっ!
突然、単発の警報が鳴った。
ディーコンが、電探連動の戦況テーブルを即座に開いた。そこにマークされたのは…
トンガリ
哨戒のためにダイソンスフィア外側へ出ていたSS2が、トンガリを探知した。前回同様いきなり現れた。トンガリはミジンコと違い電探に捉えることができる、それでもいきなりの出現。
数は…25、前回より多い、出現位置は探知したダイソンスフィアの外側、例の密集しての高速回転による加速をしている。
スフィアの外側ねぇ…目の前に現れ、通り魔的にズブリとやれないのは、やっぱりあの加速動作が必要なのかしらね?
いずれにしても、またアレをやる気ね。
狙いは?
目標がシンデンはあり得ないわね、シンデンの様な機動力の高い小型の戦闘機に、トンガリが当たるとは思えない…
違う違う!、そうじゃない。
固定概念は切り捨てる!、私はあらゆる可能性を想定する。
D1から了解のコード
シンデン全機発艦!
残りのシンデン達が次々とリボルバーカタパルトから飛び出して行く。
そしてユキカゼも発進!
私の船体下部にドッキングしていたユキカゼが即座に分離して滑る様に発進した。
そして私もステルスを解除する。
主機、補機、出力最大
砲雷撃戦用意
荷電量粒子連装砲、チャンバーチャージ
最大戦速へ!
主機が唸りを上げ、私も構造体の影から飛び出した。
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