第55話 幻影…

 銀色円盤、発見


 円盤型宇宙船は、ガニメデの周りを回っていた。でも変だわ、ユキカゼが追跡された円盤よりも小さい気がする、遠すぎてわからないけど、一艇だけってことはないわよね?


 円盤は、ガニメデを横切ったおかげで偶然発見出来た。最大望遠でやっと見える程度、電探は索敵範囲外の距離。


 移動速度を計測すると、毎秒5,000キロ…、ユキカゼを追って来たんだから、もっと早く移動できるはずよね?


 ガニメデの周囲をグルグル回って何してるのかしら?


 グルグル回る……


 私はその様を見てトンガリを思い出す。


 でも…トンガリとはまた違う。


 そう思って観測を続けていた時、円盤がフッと消えた。影に隠れたとかではなく、前触れもなく、突然に、いきなり消えた。


 え?


 ガニメデ周辺を全光学カメラでサーチする、しかし円盤は発見出来ない、一体どこへ…


 私はハッとする。


 防空監視…


 ワタシは、ふと視線を前方に向けた…


 そしてギョッとした。


 銀色円盤が、目の前にいた。


 それもワタシの艦首の鼻先に、距離わずか20m。


 どこから現れたの!?


 電探ログを追うも、何も記録されてない。されないどころか、今目の前にいるのにパッシブに反応がない。


 何よコイツ…


 銀色に輝く円盤の姿は、水切り石の様な薄い船体、完全な円ではなく、ややティアドロップ型だった。その淵にはよく見ないとわからないほど、赤く小さな玉が三角型に配置され、同じパターンで外周に沿ってズラリと並んでる。


 それがまるでこちらを覗き見ている、目の様に見える。


 今、目の前にいるの円盤は、変わらず電探に反応しない。近すぎるからとかではなくて、本当に


 修理したばかりの第一、第二連装砲は、前方を向いてる。そして目の前の銀色円盤はその射線上にある、今なら測的せずとも荷電粒子砲、電磁砲どちらでも確実に当てられる。


 私は今、思考加速中


 どうする?、撃つべきか撃たざるべきか。


 だけどマーキュリーズから、撃つのは止めるよう具申された。


 なんで?


 メイとテイラーはさておき、なんでディーコンまで?


 マーキュリーズ各々が、銀色円盤に興味を示してる。彼らのこんな反応は初めてだわ。


 ディーコンが、”目を見開け”、と言ってる。


 見開く??


 もう一度観察して気がついた、銀色円盤は薄らと透けている。輝いているのかと思ったら、背後の星々が透けて見えていた


 何…これ……


 背景を写しているのか、本当に透けているのか、今ここに私の手があるなら、カメラを擦りたい。


 電探に映らないのはこれのせい?


 そもそもこの銀色円盤は、こちらに気づいているのかしら?、ワタシも今ステルスモードになってる。ただあちら様と違うのは、漆黒、日の光が入らない構造体の影にいる。


 ただ見えて無いのかも知れない、でも感じてはいるのか、探っているのか……


 呼びかける?、いえ、まだ正体がわからない、見た目は異なるけど、メインベルトの異星人と同族の可能性は捨てきれない。呼びかけるのはまだ早い、メイも同じ考え。


 私達はやり過ごす事にきめた。


 すると3時間居座り続けた銀色円盤は、来た時同じように、なんの前触れもなくスウッと姿を消した。


 電探に反応無し、各種センサーにも反応無し


 あんな大きな物体に目の前で出たり消えたりされると、存在してたのかさえ疑わしい。この世のものじゃないんじゃないかしら?


 まさか宇宙の幽霊船…とか?


 ぞっ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る