第48話 試験航海…
ユキカゼ、スタート位置へ
航路の最終確認をメイとする。
進路問題なし、クリア
船体異常なし、クリア
反物質供給ユニット、正常
ロケットモーター、正常
全て正常位置
ユキカゼから2回の発光信号
ナガト支援戦闘隊の発案した「敬礼」
ユキカゼがゆっくりと前に進みだす。
加速5秒前、4、3、2、イグニッション
反動推進器に火が灯る
加速開始
爆発的な加速を見せたユキカゼ、一瞬のうちに私達の視界から消え去った。
……
作戦テーブルには秒速3万キロで、木星へと向かうユキカゼのマーカーが移動してる。
ユキカゼの総移動距離は8天文単位、作戦時間は約4万秒、時間にして11時間、11時間後には戻って来る予定。
さて、ユキカゼの出発前、私達は木星の観測結果から,4大衛星の軌道が、本来とは異なっている事に気がついた。
イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト
木星を代表する4っつの衛星は、全て同じ公転軌道上にあり「なにそれ?」と思った。
実際に、4大衛星は、イオの公転軌道で周回してる。それも4っつが、等間隔に、90度づつ測ったかのような位置で木星を周ってる。
異星人が動かした?、星を?、どうやって?
エンジンつけて移動した?、船で押した?
いえ、恐らく重力制御……だわ。
あり得る。
異星人は重力井戸という罠を使い、私を潰そうとした。あの技術を使えば星を移動させることなんて造作もないわ。イオを除いた3衛星を木星に近づけたと言うことは、木星よりも強い重力で引き寄せたと考えられる。その時に星へ与える影響は計り知れない、加減を間違えれば「ロッシュ限界」という事象が起きる。
「ロッシュ限界」とは
天体同士が接近しすぎると、潮汐力で星が歪められ、自己の重力による形が保てなくなり崩壊する現象。当然重力の弱い方が負ける。
重力で引き寄せたとなると、星へのダメージは大きい。
でも、地球をあんな目に合わせた奴らが、そんな事気にするとも思えない。ずらしたからには何か意味があるはず。
いずれにしても、星を動かす力を持つ異星人は脅威以外の何者でもない。こちらはせいぜい宇宙船一隻を慣性制御する程度の力しかないわ。
反転重力炉なんて、奴らの技術からしたらハナクソみたいなモノなのかも。
でも、戦闘では負けるつもりはないけどね。
……
ゲッコウよりタイムラインの報告コードを受信
ユキカゼ、予定の第2通過点へ近づく。
木星への侵入角、軌道修正ズレなし、10秒減速。
ユキカゼが僅かに減速する。木星の重力を捉えるために。遅すぎたら重力に捕まる、速すぎれば弾かれる。重力ターンが出来るギリギリを狙う。
ユキカゼ、ダイソン殻球内へ侵入
木星を覆う、網目状の構造体の内殻へ侵入した。
ここまでは予定通り
ユキカゼが、木星通過の一瞬を使い観測するのは、イオとガニメデ、そしてエウロパ
イオはアルファ基地で手に入れた星図に記されたイエローマーカーのある星、ガニメデとエウロパはオマケ、カリストはユキカゼの針路とは木星挟んだ反対面になるので観測できない。
戦術テーブル上のユキカゼのコースが木星の外周に沿って曲がって行く、そして、木星の影へと入る。
通信途絶、待機66秒
周囲に動きなし
…40秒経過
30秒
20秒
通信回復、10秒前、私は無事に出て来る事を祈る。
5、4、3、2……ユキカゼ確認。
ユキカゼが木星の影から出て来た、私は安堵する、でも…
…Oh、なんか引き連れてる。
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