第47話 木星構造体…

 ナガトの光学観測設備の修理が終わったわ。


これで超望遠による冥王星軌道を含むカイパーベルト近傍まで観測ができる……と、言いたいところだけど、こういったナガトの観測設備って、なぜか古いままなのよね、あまり進化してない。ナガトの装備は超技術的なのもあれば、変にアナログなものもある。どうしてこう技術体系がバラバラなのかしら?


…と言った所で、無い袖は振れないので、とりあえず木星の天体観察をしますか。


 私は木星を超望遠で視界におさめ、観測を始めてすぐに気づいた。


 …うわっ、やっぱり、は、気のせいじゃなかったのね。


 ゲッコウのカメラを通して、木星が何かに覆われているように見えたのは、ゴーストノイズではなかった。


 木星は網目状に何か構造物に覆われているのを確認した。


 観測の結果、その構造物の直径は約450万キロ、木星の4大衛星、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの公転軌道がすっぽりと入ってしまう。


 いやんもう、デカ過ぎなんですけど。


 異星人が構築したのか、地球人が構築したのかは、今のところ不明。

 少なくともナガトと月面アルファ基地のライブラリには、地球人が建造したという記録はなかったわ。


 そうなると、地球外の何者かが建造したという事よね?、有力なのは地球を滅ぼした異星人。


 でもなんだろう、全然そんな気がしない、違和感しかないわ。


 んー、直接観測したいところだけど、ケレスの重力井戸トラップの件もあるからねー、アレを木星規模でやられたら、それこそブラックホールを形成するかもしれない。今の私ではプチられて終わる。


 それにしても、ああやって星を人工物で覆うのをなんて言うんだっけ?、誰か提唱してたわよね。A9と統合されて賢くなったはずなのに、この思い出すって人間っぽい所作、何で残されてんのかしら?。


 だいたいライブラリが整理されてないのがいけないのよ。急いでいたのか知らないけど、適当に詰め込みやがって、別枠の娯楽ライブラリーはジャンルごとに整然と格納されていて、検索しやすいようにタグまでつけられてるのよ?、ここに仕事と趣味の違いが出てる気がする。


 ライブラリ整理はメイに任せよっと。


 それよりもあの構造物のことよ、ほら、アレよ、なんだっけ?、掃除機みたいな名前の…


 そう!、ダイソン殻球スフィア


 でもあれって、恒星をエネルギー核にして包むシステムよね、何で木星??


 と、いうわけで試験航海も兼ねて、ユキカゼに斥候へ行ってもらいます。


 ユキカゼの誘導制御と軌道計算を、メイとシミュレート。


 なぜそんな事するか?


 光子魚雷は目標へ当てるだけなので、諸元だけ入力すれば、後は勝手に目標まで飛んでいく、当たらなくても近接で炸裂する、終末誘導の必要はないもの。


 でもユキカゼはそうはいかない。帰って来てもらわないと困る。


 準亜光速でぶっ飛ばすので、精密な計算が必要なんです。星の位置、重力、大きめの小天体、とくに衛星なども考慮しないといけない。途中で1mズレただけでも、終端では天文単位で狂う可能性がある。


 幾つかのパターンをシミュレートした。その中でちょっと強引だけど、最短ルートを導き出した。


 ユキカゼは、ここを飛び出した後、木星を使って強引に重力ターン、そして一度火星軌道近くまで入り、私の所まで戻るコース。


 シンプルと言えばシンプル。


 でも制御が難しいルートにもなる、そのルートは、木星のダイソン球の中を進んでもらう、そして重力ターン。


 もし失敗して構造物に当たれば、木っ端微塵、大きく軌道をそれてしまえば、外宇宙方向へ行ってしまう。ターン後の戻りもメインベルトを2回通過するので、異星人の真っ只中を進む事になる。


 最早試験航海じゃねーわ。スパルタも良いところ。


 でもそのくらいはこなして欲しいわ、ユキカゼ君、頼んだわよ。


 実は土星方向へのターンも検討したけど、距離的に遅延による長い通信途絶時間が発生するのと、その先にいるかも知れない異星人の動向が分からないので検討から除外しました。


さて木星、何が出るやら。

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