第49話 宇宙の摂理

重力ターンで、木星の影から無事出てきたユキカゼ。


しかし、その背後には、何者かが追尾している。


ゲッコウ経由でユキカゼからその様にコードが送られて来た。


こちらの戦術テーブルに、アンノンウンとしてマークされた。


数は1


画像データなし


再びユキカゼからのコード受信。


“追尾されている、対処は如何に?”


ユキカゼが即座に攻撃しなのいのは、無闇に発砲するなと事前に申し伝えてあったから。現に、アンノンウンはついて来ているだけで、攻撃姿勢をとっていない。ユキカゼの針路の先、帰り着く点を見極めたいのかも。


そうなると、狙うは私?


D1が私の考えを読んだのか、攻撃を具申して来た。


でも違和感を感じる。


勘とかではなくて、まず追跡者がどんな相手なのかわからない。ユキカゼは超高速で移動中の為、データコードはあらかじめ用意されたテンプレート選択式で送って来てる、画像などの詳細な大量データ受信は出来ていない。


この距離で攻撃してこないのも気になる。


戦闘許可しません、とD1に返した。


D1から了解のコード、即座にユキカゼに返される。


すると…再びユキカゼから通信


“追跡者、距離、離れる”


戦術テーブル上のユキカゼ追跡者のマーカーが徐々に離れ始めた。ユキカゼは加速してない。……諦めたのかしら?


追跡者は、ターンを始め、木星の裏へと消えていった。


なんだったんだろ?、戻って来たら分析が必要ね。


私達は念のため、移動を開始する。木星軌道のトロヤ群へと向かった。ユキカゼにはコース修正のデータを送る。


色々わからなくなって来た。


太陽系に居座る異星人達はいったいなにをしたいのか


……メイが示唆した「縄張り行動」、あながち間違いじゃないのかも。


メインベルトで異星人が行った重力井戸の罠、もし彼らが縄張りを守るために行ったのだとしたら?

最初の戦闘で私が脅威だと悟った。

だから、次は総出で潰してやろうと考えた。


自分達の仲間が死のうとも、総攻撃を敢行した。


メインベルトには今も異星人の船団が居座ってる。でもこちらに追撃もしてこないし、動きだす気配もない。


…ミツバチ

 ミツバチは、天敵スズメバチの襲撃に対し、自分達の体を使って、集団でスズメバチを包み込み、そして体温で殺す。ミツバチの「熱殺蜂球」と呼ばれる必殺技。

 しかしこれは巣を守りきれないと判断した時の最終手段、なぜなら大量のミツバチが犠牲となるから。


異星人はケレスを使って同じ事をしたのでは?


と思った。


知性があるからと、話しが出来るからと、仲良くなれるとは限らない。

なまじ知性があるばかりに、一度争いが起きれば、過激になる。

生い立ちが違えば、思考が違う、理念も異なる。自分達が生き残るためなら手段は選ばない。私もそう、星の数だけ理がある。


異星人は、やって来た太陽系に別の者達が既にいたから、地球には自分達とは別の生物が住んでいたから、自分達を脅かす者と判断したのかもしれない。


宇宙も地球上となんら変わらない、とどのつまり、食うか喰われるか、地球人は、己の縄張りを守れなかった。ただそういう事。


宇宙とはそういう摂理の世界ではないかと私は思う。


極論かしら?


そうは思わない。


 現に地球人だって歴史を紐解けば、常に縄張り争いで殺し合って来た。ただ異星人と異なるのは、お互いが滅ぶまではしない点、それは同族だから。


そういう事かも知れない。


そして、木星を縄張りにする勢力と、メインベルトを住処にする勢力、実は別なんじゃないかと思った。


これらは異なる異星人の可能性もある。メイも私の考えを支持してる。


何かが違う


トンガリは木星連中側の匂いが強い。どちらにしても、私を攻撃して来た事には変わりないけどね。

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