第45話 幸運艦…
第二次世界大戦
「奇跡の幸運艦」と呼ばれた一隻の軍艦あり。
十数回にも及ぶ出撃を経験し、あらゆる海戦で、僚艦が次々と没する中、数々の戦果を上げつつ、その艦は致命なる損傷なく見事生還し続けた。
主機の不調で足が遅くなっても、敵の砲弾をくぐり抜ける。たとえ砲弾を食らっても不発、戦艦長門の随伴艦として出撃し、戦況が思わしくない中で、被弾し乗員に数名の死者を出すも自力で帰還。敵潜水艦に追われながら沈没した僚艦乗組員を救助した時も、奇跡的に魚雷を食らわずに、やはりその艦は、ほぼ無傷で母港へと帰還した。
死地を生き抜いた神がかった奇跡を呼ぶ
陽炎型一等駆逐8番艦、その名は…
「雪風」
陽炎型は全部で19隻建造され、同グループとなる甲型駆逐艦になると、総数38隻にも及ぶ、しかし終戦まで生き延びたのは、雪風たった一隻のみ。
終戦後、状態が極めて良かった雪風は、賠償艦として、米国統治下にあった台湾民主共国に引き渡され、名を「丹陽」と改められ、同国で20年近く、水雷戦隊の司令艦を努め上げた。中国との東シナ海事変や、南洋グァム沖作戦でも、その奇跡を見せ「雪風」は戦後も活躍し続けた。
その後、ニッポン国への返還話しがあったものの、台湾共国は「雪風」をアルゼンチンへと譲渡してしまう。
アルゼンチンは当時、軍事クーデター成功後、海軍力に力を入れようと躍起になっていた。そこで目をつけたのが「丹陽」こと「雪風」。その時すでに建造から30年、それでも幸運艦としてのネームバリューは、アルゼンチンにとってもシンボルになり得る軍艦、「丹陽」を出し渋る台湾共国と交渉の末、アルゼンチンは雪風を獲得する。
そして、アルゼンチンにて「雪風」につけられた艦名が…
「アコンカグア」
アコンカグアは南半球で1番高い山の名前で、現地語で「岩の番人」と言う意味だそうです。しかし古代インカ語の流れを組む言葉では「アコン」とは「雪」を指す。
これも奇跡なのかも知れません。
でもその後の雪風は、戦いとは無縁の末路を辿ることに…
アコンカグア(雪風)は、乗員の不始末による火災を起こす、火は鎮火したものの、船へのダメージは深刻。更には国策に失敗し財政難となっていたアルゼンチンは、修復を断念、元々老朽著しかった雪風は、補修されることなく港に放置された。それから幾日かの深夜、雪風は係留されていたアルゼンチンの軍港で、人知れず、誰に見守られることもなく、海中に没したと記録されている。
アルゼンチンはその時を境に、経済が一気に下落の一歩を辿る羽目に…
幸運艦も、愚かな人間の引き起こす人災には勝てなかった。
と言うことかしらねぇ。
さてそんな辛気臭い話は置いといても、雪風は、戦乱を生き抜いたまごう事なき奇跡の戦闘艦、私は願掛けとして、その幸運にあやかりたく存じます。
元国連宇宙軍、南米同盟所属、第5水雷戦隊中型航宙艦「アコンカグア」改め、
突撃型宇宙駆逐戦闘艦「ユキカゼ」
ここに爆誕であります。
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